ハムストリングスは大臀筋、大腿四頭筋と同様に下半身を動かす大きなエネルギー源となる筋肉です。大臀筋、大腿四頭筋の記事でも解説しましたが、イスのポーズ、英雄のポーズのような力強く踏み込むアーサナを行う際、下半身を安定化させるために働きます。
このように力強さを要する部位ですが、同時に柔軟性も必要になってきます。例えば、長座で座る時にハムストリングスの柔軟性がないと膝を伸ばし、なおかつ骨盤を起こす事が不可能になります。
アーサナの難易度が上がるにしたがい、ハムストリングの高い柔軟性が必要になると言っても過言ではありません。
今回は、このハムストリングスについて解説したいと思います。
ハムストリングスの基礎知識
太もも裏側の筋肉で、股関節から膝関節をまたぐ二関節筋。太もも前側の大腿四頭筋とは真逆の働きをします。ハムストリングスと大腿四頭筋はそれぞれ拮抗しながら働いているのです。
大腿四頭筋は膝関節伸展、股関節屈曲という作用があるのに対して、ハムストリングスは膝関節屈曲、股関節伸展を司っています。
膝を伸ばす時は大腿四頭筋が「主動筋」となり、ハムストリングスは「拮抗筋」になります。逆に膝を曲げる時はハムストリングスが「主動筋」となり、大腿四頭筋が「拮抗筋」となります。これらの筋肉は互いにアクセルやブレーキをかけながら股関節や膝関節の動きをコントロールしています。しかし、どちらか一方の筋肉が筋力低下や柔軟性低下を起こすとそのバランスが崩れてしまい、下半身が不安定になります。
トップアスリートによく見られる、ハムストリングスの肉離れは、大腿四頭筋とハムストリングスのアクセルとブレーキのバランスが崩れた時に起きやすいのです。
柔軟性をしっかり確保しよう
ハムストリングスは、柔軟性低下が見られやすい筋肉で、とくに思春期の子どもは顕著です。柔軟性の簡単なチェック方法としてポピュラーなのがSLR(straight leg raise test)。臨床の現場では坐骨神経の症状誘発テストでも使われる一般的な整形外科テストです。
SLRの方法

- 仰向けに寝てもらい両膝を伸ばします。
- 片脚を、膝を伸ばしたままでどこまで上がるか確認します。
脚が上がる角度の理想は90°以上ですが70°くらいまでなら問題ないでしょう。それ以下の場合、ハムストリングスの柔軟性が低下しています。
このような人は、長座で座る時に骨盤が後傾しやすく、そのため身体全体が丸まった姿勢になります。放置しておくと、腰を痛める可能性が出てきます。まずはSLRで足が70°まで上がるようにハムストリングスの柔軟性を高めましょう。
ハムストリングスの筋力が必要なアーサナ
- イスのポーズ
- 英雄のポーズ
- 橋のポーズ
以上のような、下半身を強く踏み込むアーサナで働きます。同じく股関節伸展の作用がある大臀筋もこれらのアーサナで働くことは別記事で解説しました。
英雄のポーズⅢでもハムストリングスが働きますが、左右で働き方が少し違います。支持脚側のハムストリングスは倒した上体を支える為に機能するのですが、逆脚のハムストリングスは大臀筋と共同して働いて脚を持ち上げます。この時、膝が曲がってしまうとハムストリングスが過剰に働き、つる可能性がありますので気をつけましょう。
なお、橋のポーズは、足のポジションを変えることで大臀筋をメインにするかハムストリングスをメインにするかを調節できます。実際にやってみるとわかると思うのですが、仰向けに寝て膝を立てた時に踵の位置をお尻に近づけて橋のポーズを行うと、大臀筋に力が入ります。反対に、踵の位置をお尻から遠ざけたところに置くとハムストリングスに力が入ることがわかります。予備知識として覚えておきましょう。
ハムストリングスの柔軟性が必要なアーサナ

- 杖のポーズ
- 開脚前屈のポーズ
- 舟のポーズ
1の杖のポーズは長座で座るアーサナですが、ハムストリングスの柔軟性が低下していると骨盤が後傾してしまい脊柱の正しいアライメントを保つのが難しくなります。先程も述べましたがもし骨盤後傾位のままで長座前屈のポーズに展開してしまうと腰椎が過剰に屈曲してしまい結果的に腰を痛める可能性が出てきますので注意しましょう。
2、3のように難易度が高いポーズなども、ハムストリングスの柔軟性が必須です。
大腿四頭筋と同様にハムストリングスは「強さ」と「柔軟性」が必要な下半身の筋肉です。アーサナの難易度が上がるほどこの2つの筋肉の重要性を感じるはずです。基本のアーサナから丁寧に行い、強く柔軟性のあるハムストリングスにしましょう。
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