身体の機能を高めるうえで、ヨガは万能ではない!?

身体の機能を高めるうえで、ヨガは万能ではない!?

ウェルビーイングへの意識が高まる昨今、健康目的でヨガを始める人は多いと思います。こうしたムーブメントを皮切りにヨガの呼吸法、アーサナが注目され、スポーツ界やリハビリ業界でもヨガを指導するトレーナー、理学療法士などが多くてなっています。

ただ、ヨガは万能ではありません。“ヨガをすれば全て良し”とはいかないのです。普段整形外科でメディカルトレーナーとして勤め、なおかつヨガレッスンを指導している私だからこそわかるその理由を解説したいと思います。

「筋力」「柔軟性」「身体の使い方」の3つについて、自動車に例えて解説
「筋力」「柔軟性」「身体の使い方」の3つについて、自動車に例えて解説

まずは、アスリートや高齢者の方、社会人、学生、主婦など、誰にとっても運動機能を高めていくうえで重要になる、「筋力」「柔軟性」「身体の使い方」の3つについて、自動車に例えて解説します。

筋力=エンジンの馬力

たとえばアスリートにとって筋力があることは、重たい物を持ち上げたり、遠くに投げる。あるいは速く走る…などパフォーマンスの向上につながります。一方、高齢者の場合、階段昇降やイスから立ち上がる際、自分の身体を支える下半身のパワーに直結。

この筋力を自動車でたとえるなら「エンジンの馬力」です。つまり、いかにスピードを出せるか、重たい物を運べるかという性能(能力)を左右する機能といえます。

たとえば、軽自動車とミニバンそれぞれに7人乗車して、高速道路を走るとしましょう。ミニバンは難なく進めるのに対し、軽自動車は許容範囲を超えた人数を乗せていますのでスピードも出ないし、走行中に自動車のどこかを故障するリスクも高くなります。

人間も同じで、軽自動車が7人の乗車に対応できないように、筋力が低下していると、どうしても運動許容量が低くなってしまいます。その状態で重たい物を持ったり、長時間の活動をすれば、当然身体に負担がかかり、故障リスクが高まります。

そうならないために筋力トレーニングをして筋肉を鍛えるのです。つまり筋力トレーニングは、エンジンの馬力を高めることだと思ってください。

柔軟性=サスペンション&ハンドル可動域

柔軟性とは、身体の可動範囲のことです。柔軟性があることで、関節がきちんと動き、筋肉がしっかり伸びます。それにより、あらゆる動きにしなやかさが生まれ、怪我や故障をしにくくなるのです。反対に、柔軟性が低いと身体の可動域が制限されるので、関節や筋肉などに障害が発生しやすくなります。

たとえば、バンザイをして両手が頭の真上まで上げられないような人が、頭の高さにあるものを取ろうとする動作を繰り返すと、肩を痛めてしまいますよね。このことは、容易に想像がつくでしょう。

この柔軟性は、自動車でいうところのサスペンション機能、ハンドル可動域でしょうか。サスペンションが機能しないと、衝撃が吸収されず自動車は壊れてしまいますし、ハンドル可動域がないと小回りが利かず、危険な運転になります。

身体の使い方=運転テクニック

筋力、柔軟性に次いで身体の使い方を正しくマスターすることも、運動機能を高める上で欠かせません。なぜなら、たとえ筋力や柔軟性が向上したとしても、その機能を動作の中でうまく活かせなければ意味がないからです。

そこで、アスリートならスポーツ動作で、一般の方なら日常生活動作で正しく身体を使えるように、エクササイズを行うことがポイントになります。

自動車で例えるなら、エンジンの馬力やサスペンションの性能が向上し、小回りが利く精密なハンドルを搭載した自動車を手に入れたとしても、運転を上手にできなければ、快適に走れないのと同じです。

加速減速をスムーズに行うべくギアチェンジを練習し、ハンドル操作をマスターして縦列駐車をできるようにする…といった運転テクニックを習得しなければ、どんなに高性能の自動車に乗ったとしても、その価値を存分に体感することはできません。

同様に、身体に備わっている本来の機能を充分に引き出す上でも、上手に身体を使えるようなる必要があります。そのために必須なのが、「各関節との協調性」「瞬発力」「敏捷性(びんしょうせい)」「バランス能力」を、エクササイズで磨いていくこと。

それにより、運動機能が総合的に高まります。結果、アスリートならパフォーマンスが発揮できるようになり、一般の方なら日常動作が格段とラクになるのです。

ヨガで期待できるのは、心身のメンテナンス

上記、3つのポイントのうちヨガが最も得意とするのが、「柔軟性の向上」です。もちろん、「筋力」も、ある程度磨かれますが、もし筋力を上げたいというアスリートや一般の方がいたらヨガではなくウエートトレーニングを薦めるべきです。

なぜならウエートトレーニングは、鍛えたい箇所を適切に効果的に鍛えることができるからです。高齢者の方で大腿四頭筋の弱化が原因で膝痛がある人にはウエートマシーンを使用して大腿四頭筋を鍛えるのが適切です。

ヨガの本質は、やはり「心身のメンテナンス」にあります。普段の生活で疲弊した身体や心をヨガで調律するイメージです。硬くなった筋肉に柔軟性を与え、自律神経系を整え、気持ちの整理をするのがヨガの役割です。

自動車でも、長距離運転の後にはオーバーヒートしたエンジンを冷やす。あるいはタイヤの空気圧を調整する。また、オイル交換など、定期的にメンテナンスをしますよね?メンテナンスをしないまま使い続けたら性能は落ち、必ずどこかで故障をします。

人間も車と同じで、定期的に心身のメンテナンスをしないとその人が持っている本来の力を発揮できなくなり、いつか心身のどこかにトラブルが出てくるでしょう。

ヨガとトレーニングの併用が、健康への近道

良質な健康、良質な身体を求めるのであればヨガとトレーニングを併用するのが近道
良質な健康、良質な身体を求めるのであればヨガとトレーニングを併用するのが近道

時速100キロ出せるエンジンを搭載しているのに、メンテナンス不足で時速60キロしか出ない自動車を、きちんと調整して本来のスピードを出せるようにするのがヨガ。エンジンのグレードを上げて時速120キロ出せるようにするのがウエートトレーニングといったところでしょうか。

つまり、良質な健康、良質な身体を求めるのであればヨガとトレーニングを併用するのが1番ということ。身体のメンテナンスをしながら身体機能を高めていくのがもっとも効率的なのです。

もちろん現在ヨガをされていて心身の健康を保てている人は、そのままヨガを続けてください。ヨガは心身を調律するのにとても良い健康法です。ただ、ヨガだけでなく別の健康法を取り入れることで相乗効果がもたらされ、より健康に近づけるはずです。

監修理学療法士 奥悠輝

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