アーサナの土台を安定させる大腿四頭筋

アーサナの土台を安定させる大腿四頭筋

大腿四頭筋は太もも前面にある下半身を代表する大きな筋肉です。大腿“四”頭筋というくらいなので4つの筋肉の総称だということがわかります。この4つの筋肉とは大腿直筋・内側広筋・中間広筋・外側広筋のこと。これらの筋肉は膝を伸ばす役割を担い、かつ下半身を安定させるための大きな支えとなっています。

ヨガの基本概念として「アーサナは土台が安定しなければならない」という考えがありますが、まさに大腿四頭筋は土台を安定させるために不可欠な筋肉。機能を正しく理解すれば、ヨガをする際、より効果的に下半身を安定させることができます。今回はこの大腿四頭筋の機能を徹底解剖!

大腿四頭筋が働くアーサナ

  1. イスのポーズ
  2. 戦士のポーズI、II
  3. 舟のポーズ
  4. 蛍のポーズ

1、2のように下半身を力強く踏み込むことが必要なポーズでは大腿四頭筋に力が入ります。その際に、大臀筋、中臀筋といった股関節周りの筋肉も働くことで、踏み込んだ際の下半身の安定性が高まります。一方3、4のように足を地面に付けずに膝を伸ばすアーサナでも大腿四頭筋が働きます。

大腿四頭筋の基礎知識

起始[筋肉の付着部位(支点)]

  • 大腿直筋:下前腸骨棘(ちょうこつきょく)・寛骨臼(かんこつきゅう)の上縁および関節包
  • 内側広筋:大腿骨粗線内側唇(だいたいこつそせんないそくしん)
  • 外側広筋:大腿骨粗線外側唇、上方は大転子の下部
  • 中間広筋:大腿骨前面近位2/3

停止[筋肉の付着部位(作用点)]

共同腱(大腿四頭筋腱)へ移行後、膝蓋骨を介して脛骨粗面

作用

  • 膝関節伸展
  • 大腿直筋のみ股関節屈曲

大腿四頭筋の主な働きは膝を伸ばす(膝関節伸展)ことですが、このうち大腿直筋は股関節を曲げる(股関節屈曲)働きも担っています。なお、膝を伸ばすうえで欠かせない筋肉であるということは、立つ時に働くということです。

地球には重力があり、立つためにはこの重力に抗う必要があります。重力に抗う筋肉を「抗重力筋」と呼び、大腿四頭筋は抗重力筋に分類されます。多くの人が立ち姿勢で無意識に膝を真っ直ぐに伸ばしているのは、この大腿四頭筋が働いているからです。

もし重力に抗うことができず自分の身体を支える筋力が無ければ立ち姿勢で膝が曲がってしまいます。ご高齢の方で膝が伸びずに曲がった状態で立っている方は大腿四頭筋が弱化し、重力に抗うことができていない可能性があります(元々変形で伸びない人もいます)。

とはいえ、膝を伸ばす時だけに働いているのではなく、スクワットなど膝を曲げている時にも大腿四頭筋は機能します。それは重力によって膝が曲がりすぎないように、ブレーキをかけるため。ヨガにおいても「イスのポーズ」は膝を曲げていますが大腿四頭筋に力が入っているのは、このためです。

膝関節を安定させる作用も

大腿四頭筋は膝関節を左右から囲うように骨に付着していますが、この大腿四頭筋が機能することで膝の固定力が向上します。高齢者に多く見られる、ふとした瞬間に膝が「カクッ!」となり、力が抜けたような感覚になるのは大腿四頭筋による膝の固定ができていないためです。

「イスのポーズ」を長い時間キープしたら膝がガクガク震えた経験ありませんか?あれも大腿四頭筋が疲労して膝の固定力が弱くなっているからです。

柔軟性を高めておくことも大切

大腿四頭筋には筋力とともに柔軟性があることも、求められます。先に述べたように、大腿四頭筋の一つである大腿直筋は、膝を伸ばすだけではなく股関節を“曲げる”働きも担っていますが、この“曲げる”動作には柔軟性が欠かせないのです。大腿直筋の柔軟性が低下すると膝は曲げにくくなり股関節を後方に伸ばす股関節伸展動作も制限されてしまいます。

大腿直筋の柔軟性が低下した状態では「三日月のポーズ」、「鳩のポーズ」、「ラクダのポーズ」といった下半身を反らすアーサナが上手く行えなくなりますから、大腿四頭筋のケアは日頃から行うようにしましょう。

一方、成長期の子どもの場合、骨の成長に対して筋肉が追いつかず常に筋肉が緊張していることがあります。そういう子は、うつ伏せに寝て膝を曲げて踵をお尻に当てようと思っても大腿直筋が硬くなりすぎて、踵がお尻に当たりません。この状態は大腿四頭筋の付着部である脛骨粗面(膝の皿の下)へのストレスに…。それが、成長期の子どもに多く見られる「オスグッドシュラッダー病」(脛骨粗面に痛みや炎症を発症)の原因になります。

大腿四頭筋がストレッチされるアーサナ

大腿四頭筋がストレッチされるアーサナ
大腿四頭筋がストレッチされるアーサナ
  • 三日月のポーズ
  • 鳩のポーズ
  • ラクダのポーズ
  • 橋のポーズ

…など膝を屈曲させながら股関節を伸展するポーズ。ただ、大腿四頭筋の柔軟性が低下している状態でいきなり難易度の高いアーサナを行うのはリスクがあります。「三日月のポーズ」や「橋のポーズ」といった比較的難易度の低いアーサナから始めて、徐々に大腿四頭筋の柔軟性を高めるようにすると、身体への負担を軽減できます。目安は大腿四頭筋が伸びて気持ちいいと感じる強度です。意識して、より良いヨガライフを送りましょう。