ヨガの要!“脊柱の正しいポジション”のレクチャー法

ヨガの要!“脊柱の正しいポジション”のレクチャー法

ヨガをする上で大事なのが“良い姿勢”を作ることです。その姿勢を保ちながら、一つ一つのアーサナを展開するのがポイントになります。

今回は、そんな“良い姿勢”を初心者の方に教える場合、指導者は何に注意をすべきかを深く見ていきたいと思います。

姿勢への正しい理解を促すには?

ヨガ指導者やヨガ熟練者は、 長きにわたるプラクティスをとおして、自然と“良い姿勢”が身についています。一方、ヨガ初心者の方にとっては良い姿勢といわれてもピンとこない人が大半でしょう。

その理由の一つとして、自分の目で姿勢を確認することが難しいことが挙げられます。五感を働かせながら姿勢をとらえることは、初心者にとっては至難の技ともいっても過言ではありません。

たとえば、足やヒザの向きは自分の目で見て位置を修正することができます。しかし、脊柱の位置は鏡が無い限り自分の目で確認しながら整えることができません。

ヨガの熟練者は、前述のとおり感覚的に“良い姿勢”がわかりますから、鏡を見なくても、その都度、脊柱を正しいポジションに修正することが可能です。

ただ、初心者の方にはかなり難易度が高いといえますから、まず脊柱の正しいポジションがどのようなものなのかわかりやすく丁寧に教えてあげないといけません。

とはいえ、自分の目で脊柱のポジションを見ることができないぶん、時間がかかるので視覚に変わる“触覚”を使って教えてあげることが必要です。

“触覚”を使った脊柱のポジション把握法、3つのステップ

“触覚”を使った脊柱のポジション把握法
“触覚”を使った脊柱のポジション把握法

1:床に仰向けに寝て背中の状態をチェック

まずは床に仰向けに寝ます。その時の背骨が床に触れる感覚から脊柱の正しいポジションをとらえていきます。

脊柱というのは元々、腰椎・頚椎は前弯(反る方向)し、胸椎は後弯(丸まる方向)しています。そのため腰と首は床に密着せず、若干のスペースができます。腰と床の間のスペースは、手のひらがスッポリ入るくらいが理想です。

反り腰傾向の人だと手のひらサイズ以上の隙間ができてしまいます。逆に丸腰傾向の人だと腰と床の間に手を入れようとしてもスペースが無いので手が入りません。腰の状態を理解いただいたら、理想のポジションへと調整していきます。

女性の場合、多くの方が反り腰傾向にあります。その場合、腰を適正位置に修正するのが難しいかもしれません。そういう方には、ヒザを立てて仰向けになるよう、指導してください。腰にゆとりができて修正しやすくなります。

ちなみにヒザを立てると腰の反りが改善する人は、股関節が硬くなっている証拠です。

一方、猫背傾向の人は、仰向けに寝た時に背骨が伸びにくいので頭部を正しい位置に置くことができません。そのため、仰向けになった際にアゴが上がりやすい傾向にありますので、指導者は生徒さんのアゴの位置にも目を向け、正しい姿勢に導いてあげましょう。

アゴが上がったままでは、良い呼吸もできなくなってしまいます。

アゴが上がりやすい生徒さんには、脊柱の伸展系のアーサナを行ってもらうのも有効。それにより、胸椎の過剰な後弯を修正してあげましょう。

仕上げに、目を閉じて、いまの正しい脊柱のポジションを感覚でとらえてもらいます。その際、指導者はできる限り生徒さんの寝ている姿勢をチェックし、正しいポジションに位置していない箇所があれば、修正してあげましょう。

2:壁に背中を当てて立つ

要領は1の「床に仰向けに寝る」と一緒です。壁に背中を当ててまっすぐ立ちます。この時、骨盤、胸椎、後頭部が壁に密着するようにして腰は手のひらがスッポリ入るくらいのスペースを空けます。

床に寝ている時と壁に背中を当てて立つことの違いは「重力」の差です。地球には重力があり、人間はその重力に抗いながら立ったり座ったりしていますから、重力に抗うには筋力が必要です。重力に抗う筋肉のことを「抗重力筋」と呼び、下腿三頭筋、大腿四頭筋、大臀筋、腹筋群、背筋群などがこれに当たります。

たとえば、寝ている時は背骨が伸びているのに立位や座位になると身体が丸まってしまう人は抗重力筋が上手く機能していないか弱化しているといえます。壁に背中を当てて立つ目的は抗重力下で脊柱を正しいポジションに置き、抗重力筋を活動させることです。重力下で脊柱を正しい位置でキープするための身体の使い方を壁に背中を着けて立つことで学習してもらいます。

実際に壁に背中を当てて脊柱を正しいポジションでキープするとお腹に力が入っていることがわかると思います。脊柱を正しいポジションに置くと、腹筋や背筋には自ずと力が入るからです。

生徒さんが、この状態に慣れてきたら、今度はその場で手をバンザイしたり、片足を上げてもらいましょう。もちろん脊柱が動かないように注意しながらです。お腹に、しっかり力が入ることを体感いただけると思います。

これはリハビリでも行われるエクササイズの一つ。脊柱を正しいポジションにキープしていても手足が動かした途端に、姿勢が崩れる人は腰や首を痛めやすい傾向にあります。それを修正するエクササイズでもあるのです。もちろん最初は立位からではなく座った状態で壁に背中に当ててもらってもOKです。

3:座って脊柱のポジションを修正する

1と2で脊柱の正しいポジションの感覚を覚えてもらった後は、自立して脊柱のポジションを修正してもらうようにします。

まずは、床かイスに座ってもらいましょう。床の場合、坐法は生徒さんがしやすいものでOKです。次に骨盤を前後傾させて坐骨にしっかり体重が乗るところを見つけてもらいます。坐骨とは左右のお尻の奥にある尖った骨の名称です。坐骨にしっかり体重が乗るポジションは骨盤の正しい位置といわれています。

脊柱は骨盤の上にありますので、骨盤が正しいポジションになければ脊柱も正しいポジションに置くことはできません。坐骨にしっかり体重が乗るよう、意識してもらいましょう。

最後に、骨盤から頭頂を貫く身体の軸を上に伸ばすよう意識してもらいます。

脊柱の正しい状態の目安は、背すじがもっとも伸びているポジションだといわれています。身体が丸まったり、反っているような状態では身長を伸ばすことができないことからも、そのことがわかるかと思います。

脊柱の正しい状態の目安は、背すじがもっとも伸びているポジション
脊柱の正しい状態の目安は、背すじがもっとも伸びているポジション

身長を伸ばすことを意識してもらうと、肩をすくめてしまう人もいますから、耳と肩の距離を引き延ばして首を長くするイメージを持ってもらうことも伝えるようにしましょう。

こうして座位姿勢で脊柱のポジションを修正したら、目をつぶってゆっくり呼吸を繰り返すよう促します。脊柱の正しいポジションで呼吸することを覚えてもらうためです。

姿勢が崩れていくのを感じたらまた、自ら修正するよう指導しましょう。この一連の流れを徹底することで、抗重力下においても脊柱の正しいポジションを維持しながら呼吸をするということを身体で覚えられるようになります。

まとめ

ヨガ初心者の方に、正しい姿勢の指導をする際は、以上の3つのステップを参考に、脊柱の正しいポジションを、生徒さんがとらえられるようサポートしてください。

大事なことは、最終的には生徒さん自らが、感覚をとおして脊柱の正しいポジションを覚えていくことです。