朋子_連載_#1

#1:生活の中でのヨガ哲学に気づく。~自分にもアヒムサを~

2022年になり、ひと月が経ちました。旧暦でも元日を迎えましたが、皆さんにとっては、どのような新年の始まりになっているでしょうか。

この記事を通して「はじめまして」の方たちも大勢いらっしゃると思いますが、ヨガ&マインドフルネス講師の川原朋子です。昨年末まで丸5年間、わたしの講座やクラスを受講してくださった皆さん限定で毎月お送りしていた季節のお便りを、今年から「Mindful Living〜普段着のヨガとマインドフルネス〜」という連載記事として書かせてもらうことになりました。今回は、その記念すべき第1弾「自分にもアヒムサを」です。早速お読みくださっている皆さま、ありがとうございます!

解釈は当然人の数だけありますが、わたしにとってヨガやマインドフルネスは、人生をよりよく生きる、自分が自分らしくあることで、自然とより生きやすくなる、その味方になってくれるもの。普段はリストラティブヨガ(自律神経を整えるヨガ)、ヨガニドラ瞑想、マインドフルネスなどという名称でクラスや講座をさせてもらっていますが、その呼び名がどうであれ、わたしがお伝えしていることはすべて “不二一元論(アドヴァイタ)” に根ざしています。より正確に言えば、哲学的な概念としてだけではなく、人としての在り方、生き方そのものとしてのアドヴァイタを伝えるために、ヨガニドラ瞑想やリストラティブヨガ、マインドフルネスといった手法を用いている、ということになります。

全ては1つにつながっている。~アドヴァイタ(不二一元論)~とは

宇宙の中に立つ人
不二一元論とは?

サンスクリット語で「二つではない = もともとは一つである」という意味。非二元論とも呼ばれます。英語にOneness(ワンネス)という言葉がありますが、まさにその「一体感」を味わうこと。自分自身とのつながりはもちろん、自分を取り巻くすべての人やものとのつながりを感じることが “アドヴァイタ” です。それは、世界の中での自分の在り方そのもの。わたしたちは、もともとすべてと一つにつながっているので(それが本来の自分の状態)、つなげよう、つながろうとする努力は要らず、すでに「つながっている」ことに気づく(思い出す)ためにアーサナ、瞑想、呼吸法といったヨガの手法を実践するという考え方です。

そこには「ありのままに今に気づく」というマインドフルネスの要素もあり、つまりはヨガもマインドフルネスも日常そして人生そのものということです。背伸びせず、肩肘張らず、着飾らず…。この記事では、そうした普段の暮らしの中にある等身大のヨガやマインドフルネスのお話を皆さんにお届けしたいと思っています。


少し前のことですが、とある駅で乗り換えの急行を待っている間、普段は特に気にしないホームドアの注意表示にふと目が留まりました。

「のりださない」
「立てかけない」
「かけこまない」
「立ち入らない」

日本語は、そうきっぱりと命令形。でもその下の英文は、”Please keep out.” など、すべてに ‘Please’ がついた丁寧形。そうやって外に遠慮し、他を立てるがあまり、内に厳しく、つい自分を卑下してしまいがち…。考えすぎと言われればそれまでですが、日常のあちこちに根付いているそうしたこの国の文化を、こんなところにも垣間見たような気がしました。

遠慮と察し

相手を慮ったり、場の空気を読んだり…。それは、日本人特有の心の細やかさ、そして美しさでもありますが、遠慮と配慮は別のもの。前者は、他人に対して控えめに振る舞うこと。後者は、相手の立場になって考え、心くばりをすること。俗に言う「遠慮のかたまり」。世間体を気にして周りを優先する分、無意識にも自らの首を締めてしまうような生き方は、あまり健全とは言えません。

他人に優しく、自分に厳しく…。ではなく、他人も自分も分け隔てせず、誰に対しても思いやりを持って接すること。それがヨガ哲学でいう「アヒムサ(非暴力)」です。

苦しいとき。辛いとき。二進も三進も行かなくて、もうどうにもならないと感じているとき。それが自分自身ではなく、もし大切な誰かだったら、どんな言葉をかけ、どんなことをしてあげるか…。果たして罪悪感を持つことなく、自分にも十分同じことができているでしょうか?

できたことに合格点を!”スローダウン”のススメ

スローダウン
出来たことに、合格点をつけて、スローダウンしましょう。

わたし自身の体験を振り返って思うのは、しんどいときほど、まだできていないこと、やらなくてはいけないことばかりに気が向いて、すでにできていること、もう十分頑張っていることを見逃してしまうもの。それがさらに自分を追い込んで、余計に苦しくなってしまったり…。

そんなときは、やはり一度止まってみること。それが難しければ、できる限りすべてのペースを落としてみること。そうすることで、いつも当たり前のようにしていることを、辛い中でもちゃんとしている自分に気づいてあげる、そのゆとりが戻ってきます。

例えば…

  • 朝起きる
  • 顔を洗う
  • 歯を磨く
  • ご飯を食べる
  • 身支度をする
  • 仕事に行く
  • 仕事をする…

どれか一つでもできていたら、その日はすでに合格点!やるべきことではなく、できたことリストを作ってみるのもお勧めです。

マインドの罠にかかっていませんか?苦しい思考を解き放つ秘訣

鳥が籠から飛び立つ
思考の殻を破る!

わたしたちのマインドが抱く思考。その8割は、否定的なものと言われています。それは、心理学で「ネガティブ(ネガティビティ)バイアス」と呼ばれるものがあるがゆえ。行き詰まっているときは、より手強いそのネガティブバイアスの罠にはまりがちですが、はまっていることに気づけば、そこから自分を自由にしてあげることもできるのです。

もし後ろ向きな気持ちや考えに苛まれていたら、一旦止まって深呼吸。「あー、これがいわゆるネガティブバイアスだな」とその存在を認めてあげるだけで、自分を色眼鏡で見ないですむようになります。それを繰り返していくうちに、誰かや何かに対しても自ずと同じことができるようになっていく…。それが「アヒムサ(非暴力)」なのだと思います。

Love is the absence of judgement.
ーDalai Lama

愛とは、色眼鏡を外すこと

(ダライ・ラマ/和訳: 川原朋子)