アヒンサーとは非暴力、傷つけないこと
ヤマにはアヒンサー、サッティヤ(ウソをつかない)、アステーヤ(盗まない)、ブランハチャルヤ(適切なつき合い方をする)、アパリグラハ(必要以上にものを持たない)の5つがありますが、ベースとなっているのがアヒンサーです。ウソをついたら人を傷つける可能性があるし、盗むことも誰かを傷つける可能性がある。すべてがヒンサー(暴力)につながっているんです。アヒンサーにつながる行動を取ると、相手を傷つけた分、自分の周りにヒンサーが増えます。そうするとマインドは落ち着かなくなり、それに対処するだけで人生が終わってしまいます。それはスッカ(幸せ)かドゥッカ(苦しみ)かと言ったら、幸せではなく、間違いなく苦しみ。つまり、人を傷つける行為をしていたら、ヨガのゴールには行けないのです。
なぜ守れないの?
ヤマ、ニヤマに反する行動の根底には、貪欲さ、怒り、執着や妄想があると『ヨーガスートラ』には書かれています。上の立場になりたい、相手を陥れたい、手放したくない、失いたくないなど。さらに、34節にはヤマ、ニヤマに反する、人を傷つけるような行動を取ると、世界が歪んで見えるようになる、自分が陥れられるんじゃないかと永遠に苦しむようになってしまうと、行動の結果も書かれています。その上で、そうならないためには、ものごとをいろいろな角度から見るようにしましょう、と説いてくれているのです。
いろいろな角度から見る
別な角度から考えることを『ヨーガスートラ』では、プラクティシャバーバナ=反対側(代替的)な心の態度、と言います。ただ、ここには「自分の本音を大事にする」ことも含まれています。自分は本当はどう思っているのかを大事にすれば、自分を傷つけないことにもなるし、相手を傷つけないことにもなる。アヒンサーになるのです。
忖度してしまう心…
アヒンサーの定義は時代や地域によっても変わり、アヒンサーが何かという画一的な答えはないんです。だからこそ、自分自身が一つひとつを意識的に考えることがすごく大切。例えば、化粧品を選ぶ時に動物実験をしていないものにするとか、元気であるために肉を食べるけど感謝して残さずいただくとか。受け身ではなく、自分の中でどこまでがOKで、どこからがヒンサーになるのかを意識的に考えてほしいと思います。
出典:『Yogini』Nol.66
監修:森田尚子
もりたなおこ。クリシュナマチャリアのヨーガ正式指導者。ヴェーディック・チャンティング正式指導者。ヨーガスートラ講師。
Text:Yogini編集部
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