ヨガの何をどう伝えるか【インストラクターのための話し方/聴き方】3

何のためにヨガを伝えているのか

インストラクターというヨガを伝える仕事をしていると、ヨガのアーサナを見せて、形を整えるということが、仕事の主題になってきてしまうことがあると聞く。いや、違う、私はヨガを伝えている…とイラッとした人もたくさんいるだろう。では、自問してほしい。「私は何のためにヨガを伝えているのか」。

本来、ヨガは個人の修行で、瞑想し、サマーディに入り、それを持続した生き方をすることが目的だ。そして「ヨガな人」がそれを体現し、エネルギーを伝播させて、どんどんヨガナヒトを増やしていくことが師の役割だ。

これが不調解消のヨガだったとしても、不調のもとになるエネルギーの滞りを解消すること(心身ともに)が、ヨガの目的になるので、伝えることは同じだろう。

今のあなたは、何のためにヨガを伝えているだろうか?

ヨガを消化しているか

11月19日発売の『Yogini』Vol.79は「ヨガを伝える人達に告ぐ!」というテーマで特集を組んでいる。その冒頭、龍村修先生は、こう語る。

「自分自身、ヨガをやる前はこうだったけれど、ヨガを始めたら日常生活でこうなったよ。マットの上だけでヨガをしているのではなく、ヨガが自分の生活の中に生きていますよ」という自分の経験を話せばいいんです。そうすれば、ヨガがどういうものなのか、必ず伝わっていくはずです。

龍村先生が受け継ぐ沖ヨガは「生活ヨガ」とも「求道ヨガ」(くどうよが)とも言われる。修行である一方、それは生活を豊かにし、生きる力を養い、命を生かしていくことができて初めてヨガであるということだ。

インストラクターにとってそれはとても大事なこと。なぜなら、ヨガを伝えるものは、「ヨガ」を伝えなければいけないからだ。では、自問してほしい。「ヨガって何?」。

ヨガとは何なのか?

ヨガとは何なのか? 結局、ヨガを伝える立場にある人達はずっとそれを考え続けないといけないのだと思う。ヨガはさまざまな切り口があり、社会でたくさんの用途として用いることができるが、インストラクターが伝えることは何なのか? その切り口の根底に流れているものは何なのか? それがヨガでなければ、ヨガのインストラクターではないのだ。

といっても、ヨガを伝える私が大上段に構える必要はない。龍村先生は語る。

ヨガにおいて先生はあくまでヨガだから。指導者はヨガを教えさせていただきながら、教えることを通して、たくさんのことを学ばせていただいているんです。

私は先生、あなたは生徒、というマウント取りはいらない。ヨガにおいて、教える立場、教えられる立場はどちらも学びを続ける先輩と後輩ということだ。だから、時に答えられないことがあってもいい。「それはまだきちんと伝えられないから、調べてきますね」と正直に言えればいいのだ。その謙虚な姿勢は、つまり自分のサイズをきちんと捉えられているということ。ヨガでは、そのほうが大事なことだろう。

インストラクターとはどうあるべきか

今回の『Yogini』はとても辛口だ。インストラクターの数と教える空間の数は、必ずしも同等ではない。だから、仕事としてどうヨガを伝えていくかということは、まず仕事を勝ち取る必要がある。では、どんな人が求められるのか、仕事として成功するにはどうすればいいのか、社会人として仕事とどう向き合えばいいのか、お金とどうつき合えばいいのか…。今回はそういうギモンや悩みに対して、ページを作っている。

耳の痛いこともたくさんあるかもしれない。でも、ヨガのインストラクターは、世間から見ると「ヨガ」そのもの。ヨガの窓口なのだ。だから、ヨガを伝えるものとしての誇りを持って、自分にうそのない仕事をしてほしい。そういう人が伝えるヨガは、きっと相手の心を振動させるからだ。

 

Yogini 79
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【『Yogini』Vol.76 特集】
ヨガを伝える人達に告ぐ! 

〜今、インストラクターが知っておくべきこと〜

・指導者も、生徒もヨガの道を歩む求道者
・ヨガインストラクターになった理由
・今、活躍するインストラクターにここまでの歩みを聞いてみた
・どうして自信を持てないのか。自信が持てない心の構造
・インストラクターが陥る悩みはどう解決する? 自分の心とのつき合い方を知る
・ヨガを伝える個人事業主としてのお金の知識と考え方
・食べられるインストラクター 食べられないインストラクター
・インストラクターが知りたいスタジオへのギモン
・もしもヨガインストラクターがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
・自分の強みを見つける3STEP
・200時間でできること、できないこと
・修了生に聞いた「学び」と「現在」
・スタジオが求める人材とは?
・インストラクターとしてスタジオオーナーとして 成功への道
・海外のインストラクター事情
・今、ヨガ業界に起こっていること、そして、今後のこと
・「ヨガを伝える」ということ

 

Text:大嶋朋子(Yogini編集部/Lotus8)
『Yogini』編集デスク。専門学校卒業後、フリーランスライターとして健康本や医療本の執筆、高校野球誌『輝け甲子園の星』のメイン編集、ハワイ全島のガイドブック編集を経験し、ピークス株式会社を経てエイ出版社社員に。『RETRIEVER』『アロマじかん』『ハワイスタイル』編集長、『東京生活』副編集長を経験。その後は多くのトレーニング本、女性の心と体を豊かにする書籍などの編集に携わる。インタビューした数は数千人。現在は、心理カウンセリング、傾聴を学び、判断基準を「ヨガの八支則」のヤマ・ニヤマにおいて、日々、女性の心と体について知識を深めている。