心に作用する呼吸の底力

ストレスケアに最適!心に作用する呼吸の底力

ストレスケアに最適!心に作用する呼吸の底力

ストレスには呼吸が効くらしいというのは、最近の健康志向の話ではもう定番と言っても過言ではないだろう。しかし、いったいなぜ呼吸はストレスに効くのだろうか?

まず本題に入る前に理解しておきたいのが、ストレスは悪者ではないということだ。現代はストレスをまるで邪魔者のように扱っているが、私達が成長したり、可能性を広げてきたのはストレスのお陰だ。

問題なのは、ストレスではなく、ストレスを封じ込めている私達のほうにあると言える。普段私達は、その場にそぐわない欲求、感情、思いなどを一時的に自分の中にグッと封じ込めて暮らしている。

これは大人として当然のエチケットだが、その時私達は、欲求だけではなく体と心、そして呼吸をも抑圧している。そしてそのまま封じ込め続けていると、心と体がガチガチになりやがて心身症やうつ病へと発展してしまう可能性も。時には上手に発散させてあげたい。

呼吸を通してストレスを手放す

ストレスがたまっている人のほとんどは、必ず息が詰まっている。だから息をゆっくりと深く意識するだけで、息によって封じ込めれていたストレスを発散することができる。

オススメは、呼吸に合わせて体を動かすこと。呼吸に合わせて体を動かすと、ただ座って呼吸を観察するよりも、呼吸を意識しやすい。呼吸に動きが助長されて、筋肉も動きやすくなる。

すると、筋肉が温まってほぐれ、より呼吸が深まるといういい循環が生まれる。中でも太陽礼拝は、呼気と吸気が繰り返される理想的な流れ。一つのポーズをじっくりと行う時も、呼吸を意識しながら行おう。

呼吸とポーズで体の詰まりや心のブロックを取り除いたら、今度は呼吸のペーズをスローダウンしていこう。呼吸がゆっくりになれば、心の動きもスローになっていく。すると、次第に思考がゆっくりになって落ち着きを取り戻すことができるだろう。

冷静にものごとを観察できるようになれば、悩みが解決したり自分のできることが明らかになる。ストレスは抱えるものではなく、気づきのチャンスと捉えることができるのだ。

ポーズの効果を知って、ストレスをケア

生理学的には自律神経が、心と体をつなぐ接点と考えられる。自律神経を使って筋肉、血管、神経など体の緊張を緩めることが、心の緊張を緩めることになる。そして、その自律神経をコントロールしているのが、呼吸なのだ。

ストレスを抱えている状態とは、交感神経が優位になっている状態。ストレスから解放されるには、呼吸をコントロールして、交感神経を静めてあげればいい。その中でも最も効果が期待できる方法がヨガなのだ。

ストレスによる交感神経の興奮を静まり、呼吸もゆっくりとなるのでオススメだ。また、ポーズ一つ取ってみても、元気になるポーズと、リラックスできるポーズがあるので、より細かく使い分けてみよう。

例えば、後屈のポーズは呼吸がきつくなりやすく、ポーズの中では交感神経がグンッとアップする。一方でシャヴァーサナは、ニュートラルな体勢で副交感神経を高め、呼吸を落ち着かせてくれる。

このように各ポーズの性質を知れば、目的に合わせて使い分けることができる。

ヨガがストレス解消法として理に叶っているわけ

ここでは、よりストレスフリーになれるポーズの組み立て方を紹介する。交感神経を優位にするポーズの後に、あえて副交感神経を優位にするポーズを行うのだ。

自律神経には、恒常性という性質があり、交感神経が上がった分、反作用で副交感神経が上がるというルールがある。

つまり交感神経をアップさせた後には、いずれ副交感神経が優位になる時期がやってくる。その時、あえて副交感神経を高めるポーズを取り入れると、より効果的にストレスフリーへと導くことができる。

と言っても、何も特別なプログラムを考える必要はない。体を動かして、交感神経をアップさせ、最後にシャヴァーサナで心身ともに時間をかけて休めていく、一般的なヨガの流れはすでに生理学的に見ても、とても理に叶った流れ。ヨガは長い間その流れをやってきた優れものなのだ。

忙しい人ほど、疲れた時ほど、少しでもヨガを日常に取り入れて、自分のストレスをマネジメントする余裕を持ちたいものだ。

教えてくれた人=綿本彰
わたもとあきら。『日本ヨーガ瞑想協会』会長。幼いころより、父であり『日本ヨーガ瞑想協会』名誉会長である故綿本昂からヨガを学ぶ。インドに渡り、瞑想、アーユルヴェーダを研修。1994年よからヨガや瞑想の指導を世界各国で行っている。著書に『一瞬で自己肯定感を上げる瞑想法』など多数あり。https://yoga.jp/
教えてくれた人=石井正則
いしいまさのり。医学博士。『JCHO東京新宿メディカルセンター』耳鼻咽喉科・診療部長。ヨギーインスティテュート・認定インストラクター・専門講師。

文=Yogini編集部