ヨガインストラクターが大事にしたい言葉選びと話し方【 話し方/聴き方 1 】

インストラクターは実は、総合力が必要とされる仕事だ。中でもコミュニケーション能力は、とても重要なスキルと言っていいだろう。では、コミュニケーション能力とは? 代表的なものは二つ。話すこと、聴くこと。そのうち、今回は【話すこと】に特化して考えていきたい。

ポジティブに話すのは基本?

ヨガをしているとポジティブになっていく人が多い。細かいことにこだわらなくなったとか、今までとは違う側面を見られるようになったというステキな話をたくさん聞く。中でもよくあるのが、ネガティブなことを言わなくなったというケース。意識的に行っていたことが身についた人も多いだろう。実際に、意識的に「いいほう」に目を向けることで、ものごとが開けて見えたり、前進しやすくなったり、気が楽になったりすることは多い。だから、ぜひ活用したいものだ。

ただ、ポジティブに見ることばかりしていると、だんだん疲れてしまう、という話も少なからず聞く。一生懸命いい面を探すことで、いい人になっている自分に疲れてしまうのだろうか…。思いを殺してしまうことで、その打撃を結局自分が受けてしまうのだろうか。

心にとどめておくのはストレスに

8月末、心理カウンセラーや対人援助、介護職の人達が集まるワークショップに出てきた。コロナ禍でなかなか開催できなかったため、通常は3カ月に1回のペースで行うこのワークショップが、1月以来の開催となった。この時、最初のエクササイズで行ったのは、「コロナについて身の回りに起きたこと」を話すことだった。何でもいい、気づいたこと、感じたこと、いやだったこと、よかったことなどを、話したい人が話す。この時、臨床心理士が言ったのは「コロナのことを話しておかなければならない」だった。

これは、実はとても重要なことで、コロナについては、ニュースをたくさん見聞きするけれど、自分から話すことは結構少ない。あるいは、機会があまりない。でも、思っていることはいろいろあるはずなのだ。だから、それをアウトプットする。自分の内側にとどめておくのではなくて、話せる場所で話しておくということだ。そうすることで、傷ついていたり、受けていたストレスをーー自覚がなかったとしても、手放すことができるからだ。だから、ここではネガティブな話もOK。今、自分がどう感じているのかをきちんと受け止めるということが、目的だからだ。

自分の感情を自分で受け止める

そんな時間を設けて、普段はどこでも話していないようなことをいろいろ話すと、すごく軽くなった。普段なら、あまり話さないネガティブな感情(おそれや緊張、怒り、不安など)も公開することで、自分を救うことができた気もした。もちろん、聞いている人はそれに対して否定をせず、ただ共感するだけだ。「そういうことがあったんだね」と。

ネガティブな言葉は絶対にダメだとは、普段から思っているわけではないけれど、人間らしい感情の動きを吐き出すことは悪くない。自分を傷つけて、痛みを感じながら、誰かを助けることはなかなか困難だから。自分の感情をきちんと自分で受け止めることは、大事なコミュニケーションスキル。いい人間関係を保つために大事にしたい時間だ。

言葉選びは話し方の重要課題

話す時、使う言葉を選ぶのは、一つの大事な課題だ。単語一つが、人を盛り上げたり、反対に嫌な思いをさせることがある。自分ではそう思っていない言葉は、相手にどう受け取られるかはわからない(相手任せ)だからだ。

例えば、以下の言葉をあなたはどう思うだろうか?

・あなたは声が大きいですね。
・あなたの声は元気をくれますね。
・あなたは変わっていますね。
・あなたは個性的ですね。
・あなたは普通とは違うわね。
・あなたは普通ですね。
・あなたは体が硬いですね。
・あなたはもっと体を深く曲げられそうですね。
・あなたは呼吸が浅いですね。
・あなたは毎日頑張っていますね。
・あなたは頑張っていないですね。
・あなたはリラックスしていますね。

これらは、どれもいいも悪いもない言葉。ただの言葉であって、言うほうはなにげなく使うことがありそうな表現だ。でも、人によって捉え方が異なり、それがよくも悪くも感情を刺激することがあり得る。あなたにとっては、悪気がない言葉でも、経験や価値観で言葉の意味は変わってしまう。

こうなると何が正解かはわからない。だとしたらどうやって言葉を選べばいいのだろうか? 答えは「表情」や前後の言葉次第となるだろう。経験で学んでいくしかない。

また、そこまでの関係性もとても大きい。まだ関係性が作れていない人には、少なくともダメだしはNG。その人の気持ちを盛り上げられる言葉を選ぶようにしたい。

「話し方・聴き方」講座、今回はここまで。月一で紹介していくので、お楽しみに。

 

Text:大嶋朋子(Yogini編集部/Lotus8)
『Yogini』編集デスク。専門学校卒業後、フリーランスライターとして健康本や医療本の執筆、高校野球誌『輝け甲子園の星』のメイン編集、ハワイ全島のガイドブック編集を経験し、ピークス株式会社を経てエイ出版社社員に。『RETRIEVER』『アロマじかん』『ハワイスタイル』編集長、『東京生活』副編集長を経験。その後は多くのトレーニング本、女性の心と体を豊かにする書籍などの編集に携わる。インタビューした数は数千人。現在は、心理カウンセリング、傾聴を学び、判断基準を「ヨガの八支則」のヤマ・ニヤマにおいて、日々、女性の心と体について知識を深めている。