ヨガコミュニティで健康長寿!?シニアにヨガがいい理由

ヨガコミュニティで健康長寿!?シニアにヨガがいい理由

先日整形外科ヨガのティーチャーズトレーニングの一コマで「ヨガとメンタルヘルス」について講義を受け持ちました。熱気あふれるヨガインストラクターの方々でこちらも大変勉強になりました。

整形外科ヨガは筆者の大学の先輩の整形外科医である井上留美子先生と、ヨガインストラクターの西川尚美先生が開発されたシニア向けのヨガで、その内容は効果的・効率的・短時間で楽しく継続できる椅子ヨガの実践です。

ロコモティブシンドローム予防にもなるようなトレーニングで、3カ月1クールのプログラムで構成されています。シニアの方々が毎週1回楽しみながら、でもちょっとだけ高い目標をもって元気に参加されているのを拝見すると、こちらまで元気をいただきます。

3カ月継続してレッスンをすると、確実に身体が変わってくる。そしてそこには温かなコミュニティーが生まれ、参加される皆様が、いきいきしてくる。シニアの方々が元気になる整形外科ヨガが、幅広く世の中に広まることを期待しています。

ブルーゾーンからひもとく、長寿の秘密

さて、このようなエネルギッシュなご老人の“元気の秘訣”とは、何でしょうか?全人類が共通して知りたい事実です。

筆者の曽祖父母も90歳を超えても元気な「スーパーおじいちゃん」でした。晩年の様子を親族に聞くと、周囲に親族や友人が集っていたことや、和食中心の食生活だったこと、最後まで元気に遠泳をしていたこと、最後までお酒もタバコも嗜んでいたこと等の生活習慣が語られました。

そんな、いつまでも健康で元気、かつ長生きの人々が数多く居住する特別な地域があり、それをブルーゾーンといいます。

たとえばイタリア・サルデーニャ島のバルバギア地方、日本の沖縄、ギリシャのイカリア島、アメリカのロマリンダ、コスタリカのニコヤ半島などがブルーゾーンと言われています。

共通しているのは、比較的温暖で過ごしやすい地域なこと。また、伝統的な食生活を送っていることです。研究結果によると、長寿は、遺伝子よりも、食生活や生活習慣の影響が強いと考えられています。

日本の沖縄の食生活も栄養学的にも素晴らしい内容です。ゴーヤや豆腐、ウコン、だし汁、「もずく」を始めとした海藻などは理想的な食材です。ゴーヤにはビタミンA、Cが、豆腐にはイソフラボンが豊富ですし、ウコンには抗酸化作用があり、海藻にはフコダインやアスタキチンサンという成分が豊富に含まれています。

さらに、沖縄は日本の他の地域にくらべて家族主義的な生活をしており、世界の中で、もっとも長寿の女性たちが暮らしていることでも知られています。

ポイントは、健康的な食生活と、“孤独”でないこと

長寿の秘密はどこにある?
長寿の秘密はどこにある?

この長寿の秘密はどこにあるのでしょうか?米国の研究者、ダン・ビュートナーらはこれらブルーゾーンを訪れ、長寿の人にみられる共通点から、長生きするための9つの秘訣を見出しました。

  1. 日常生活で、よく体を動かし、そしてそれが規則的なこと。 長寿地域に住む人々は、座る時間が多い生活様式とは無縁。
  2. 生き甲斐があること。毎朝起きるための目的があるということ。
  3. ストレスが少ない。ストレスは老化とかかわるすべての病気と密接な関係にある。
  4. 腹八分目の食事。
  5. 野菜中心の食事を心がけること。肉や魚、乳製品は食べてもいいが少量に抑えること。
  6. 適量のお酒をたしなむ程度に飲む人は、飲まない人よりも長生きするという俗説は正しい(最近、この考えに反対する意見もあるが、ブルーゾーンの高齢者には赤ワインなどを適量飲む人が多い)。
  7. 健康的な習慣を促進するような社会的グループに参加する。
  8. 宗教グループの活動に参加する。孤独は死につながりやすい。お互いに助け合うコミュニティーで暮らすことは大切。
  9. 父親、母親、兄弟姉妹、祖父母等、家族間の絆が深いこと。

これらをみると、運動や食事などを気遣い、健康的なライフスタイルを維持することに加えて、社会生活も重要視されています。つまり、孤独ではなく何らかのグループに属しているということです。そして帰属したグループが生きがいを見いだせるグループであることも指摘されています。

鍵を握るのは“絆で生まれるオキシトシン”

前回は幸せホルモンとも言われるオキシトシンについて述べました。

ヨガと、幸せ&愛情ホルモン“オキシトシン”

人との触れ合い、人を大切に思う気持ち、コミュニティーに属することなどを通じて人の脳内でオキシトシンというホルモンが放出されます。オキシトシンはストレスを軽減する作用などがあるため、幸せホルモンと呼ばれているのです。

そのオキシトシンが長寿と関係するのではないかとオキシトシンの研究者である高橋徳先生が指摘しています。

オキシトシンが長寿と関係する!?
オキシトシンが長寿と関係する!?

この調査の示唆するところは、健康な心身、遺伝的要素に加え、暮らしている周りの環境と日頃の生活パターンとの相互作用が長寿に繋がっているのではないかということです。

地域の人達と日頃積極的に交わり、会話を交わすことがオキシトシンの合成を活発にし、抑うつの発症を抑えているのではないでしょうか。

ブルーゾーン地域の人々の長寿と、オキシトシンレベルとの因果関係を解き明かすためにも、今後さらなる研究の進展が待たれるところです。

シニア向けのヨガである、整形外科ヨガに参加された方々の結果に着目すると筋力アップなどの良い効果が認められているそうです。

さらにブルーゾーン研究に照らし合わせると、単に運動をするだけではなく、3カ月かけて醸成される参加者同士、インストラクターとの絆や、周囲からの影響で健康意識の動機づけなどが心身ともに健康に役立っているのではないでしょうか?

様々な形のシニアヨガが各地で開催されています。シニアヨガは、健康に役立つ一つのコミュニティー形成として社会貢献できる可能性を秘めているのではないかと期待しています。

参考資料

  1. 整形外科ヨガ
  2. 『長寿の食卓をめぐる旅』(ナショナル・ジオグラフィック・2020年1月号)
  3. 長寿地域「ブルーゾーン」に学ぶ健康の秘訣
  4. 『人は愛することで健康になれる』(高橋徳 著/知道出版・2014年)