ヨガと、幸せ&愛情ホルモン“オキシトシン”

ヨガと、幸せ&愛情ホルモン“オキシトシン”

年末年始はいかがおすごしでしたでしょうか?パートナーや家族とのんびりと休暇を過ごされた方、お世話になった方々との忘新年会を行った方、リゾートでゆっくりマッサージを受け幸せを感じた方もいらっしゃるかもしれません。

しみじみ幸せを感じる、そんなとき、我々の脳からはオキシトシンというホルモンが放出されています。オキシトシンは愛情ホルモンといわれています。

近年注目の、絆を育むホルモン

オキシトシンは人と人とが積極的で好意的な絆の環を築く促進剤として働き、人を好きになったり、恋をしたり、他者とつながることを手伝ってくれるのです。

オキシトシンが発見された当初は授乳中の女性の子宮収縮を促すといった女性機能に特有なホルモンとして認識されていましたが、近年の研究では男性の脳内にも存在することがわかってきました。

そしてオキシトシンのストレスへの抵抗性を上げる働きにも注目が集まっています。人はストレスを感じるとセロトニン作動性ニューロン(精神的な安らぎを与えるといわれる神経伝達物質)の働きが抑制されます。

オキシトシンはそれを和らげる作用がある、すなわち、セロトニン作動性ニューロンの働きを促進することでストレス反応を抑え、不安を減少させると考えられているのです。

オキシトシンの分泌ができないように遺伝子改変されたマウスでは母マウスが子育てや授乳を放棄してしまうことが確認されています。子どもへの愛情を注いで子育てをするためには、いかにオキシトシンが重要か、がわかります。

一方で、飼い犬に見つめられた飼い主の尿中にはオキシトシンが増加するという研究もあります。飼い犬のペットがしっぽを振って迎えてくれる嬉しさを知っている方なら納得されますよね。

足圧法は、極上のオキシトシン時間

では、ヨガでオキシトシンが出るのかについて、自らの体験を振り返りながら、考えていきたいと思います。

筆者が学んでいる友永ヨーガ学院の指導者養成コースでは二人ヨーガともいわれる「足圧法」が必修となっています。足圧法とは、足の裏でつま先から手の指の先まで全身を施術できるリラクゼーション法です。

施術者が片脚でバランスをとりながら被施術者を丁寧に踏むことで、施術者も体幹が整って全身がすっきりするのです。

被施術者は全身の血流がよくなってこれ以上ないほど深くくつろぎ、寝てしまう方もいらっしゃいます。身近な人の疲労や緊張を、踏んで流し出して家族の健康を守る術とも友永先生はおっしゃいます。

足圧法は解剖学に基づき踏み方の順番が決定されています。そのため施術者がゆっくりと体重をかけることに最初は、痛いのではないか?と少し怖くなりますが、実際受けてみると痛みを感じることはなく心地良さに全身の力がぬけていきます。

さらに、横たわっている被施術者が心地良さそうにしていると施術者側も嬉しくもなり、双方にリラックス、つまりオキシトシン効果があると筆者は感じています。

ヨガアジャストメントは、愛をつくすこと

女性インストラクターがヨガクラスでアジャストをしているところ
ヨガアジャストメントは、愛をつくすこと

筆者の敬愛する金田絵美先生はWellnessLabo.でもレッスンを受け持つ大人気の先生です。絵美先生のヨガレッスンでは、心地よくアーサナをアジャストしてくださいます。

戦士のポーズのときそっと背筋を伸ばしたり、チャイルドポーズの時にそっと背中を押してくれるなど、その一つひとつのアジャストが的確で繊細で驚くばかりです。レッスン後はしみじみと幸せな気分になれるのです。

昨年筆者はバリ島のウブドでFlyHighYogaのティーチャーズトレーニングに参加しました。スペイン人のホセ先生がアイアンガーヨガをベースに開発した、エアリアルヨガの一つです。

ホセ先生もまたアジャストがとても的確ですが、絵美先生のそれとは違い、逆転した鳩のポーズをとる生徒さんの腕をつかみ足でかなり強く背中を押すなど、積極的なアジャストです。

ホセ先生がアジャストをしているところ
ホセ先生がアジャストをしているところ(※画像はFlyHighYogaホームページよりお借りいたしました)

トレーニング中、アジャストについての講義もありました。解剖学的な見地からの説明が主でしたが、アメリカ出身の生徒さんから、アメリカではあなたのようなアジャストはセクシャルハラスメントに該当するおそれがあるという意見もあがりました。

それに対するホセ先生の答えは、「アジャストは“愛”なんだよ!」とのこと。先生のおおらかな笑顔をみて、さすが、ラテンの国の方と思わず笑ってしまいました。

先日、綿本彰先生が監訳された『ヨガアジャストメント』の監訳者の言葉を拝読していたところ、ホセ先生と綿本先生が同じ趣旨でアジャストについて話されていて驚きました。

私たちがアジャストするのは“ポーズ”ではなく“人”である。(中略)アジャストにおいて最も大切なのは“テクニック”ではなく“愛” であるということです。

生徒のことを敬い、大切に感じること、生徒の間違いを正す気持ちで行うのではなく、生徒の自発性にただ寄り添うこと、力で動かすのではなく、生徒自身の動きを助けること、そのために、全感覚を総動員して相手をよく感じることが大切だ、と私は常々感じています。

愛という言葉の背景にある人を大切に思う気持ち、思いやる気持ち、そして繊細に感じ取り理解することで良いアジャストが生まれるのかと納得したのです。

おそらくそのような瞬間、良いアジャスト受けた方はもちろん、行った方も幸せな気持ちになっているのではないでしょうか。まさにオキシトシンが脳内で放出されている瞬間なのではないでしょうか。

心地よいコミュニティでも、幸せホルモンに満たされる

では、オキシトシンは直接触れ合うことでしか放出されないのでしょうか?

積極的に人間関係を築くことは私たちのオキシトシンシステムを持続的に活性化させてくれます。また人への共感は血しょう中オキシトシン濃度を高めます。良いコミュニティを持ち、一家団らんの時間を過ごすことで健康が増進されるということは、我々は体感的に感じています。

ヨガのレッスンの後に仲間同士でお茶を飲んだり、職場で慰労会をしたりしているときにもオキシトシンは放出されると考えられています。人との交流の機会の多い年末年始は、その大切さを改めて考え直してみる良い機会かもしれません。

参考資料

  1. 『人は愛することで健康になれる』(高橋徳 著/知道出版・2014年)
  2. 『トラスト・ファクター』(ホール・J・ザック 著/キノブックス・2017年)
  3. 『ヨガアジャストメント』(マーク・ステファン 著/医道の日本社・2019年)
  4. 足圧法
  5. FlyHighYoga
  6. マインドフルネス・ヨガ・ヘルスケアの「サティガーデン」