ヨガの教典を、読めるようになるコツ

ヨガの教典を、読めるようになるコツ

ヨガを深めたいと思い教典を手に取ったものの、最初の数ページを読んだところで、難しさに挫折してしまった……という人は多いかもしれません。

『ヨガスートラ』や『バガヴァット・ギーター』などのヨガ教典は、最初は難しいけれど、概要が分かってくるととてもシンプルな哲学です。

今日は、これから哲学を勉強したい人が、どのように取り組めば、挫折せずヨガを深められるのか。その方法を、ご提案したいと思います。

哲学がまとめてある本から教典を読む

筆者にとって教典を読むうえで役立ったのは、『ハタヨガの真髄_600の写真による実技事典』(B.K.Sアイアンガー著)です。こちらの本を例に、哲学の勉強の仕方をご紹介します。

『ハタヨガの真髄』はアーサナの詳しい解説で有名な本ですが、哲学パートも非常に的確にまとめられていて、『ヨガスートラ』のエッセンスが詰まっています。

哲学は、最初の50ページに要約されていて、大切な部分は箇条書きで書かれているため、視覚的にもとても読みやすいです。

『ハタヨガの真髄』活用法

  1. 本書の「ヨガとは何か?」を読んで、概要を学ぶ。
  2. 書いてある内容が、教典のどの部分に該当するか探してみる。
    例)クレシャ(煩悩)には5つの原因があると書いてある
    ⇒『ヨガスートラ』で探すと2章3節に該当。
  3. 教典の該当部分の文章を読んで意味を考える
  4. 『ヨガスートラ』の翻訳本の解説と、『ハタヨガの真髄』の解説を読み比べる。

本来であれば、本で読んで、分からない部分は先生に聞く方が良いのですが、哲学の先生が近くにいない場合、独学するしかありません。その場合には、すでに分かりやすく説明されている本から読み解くのが近道です。

解説は、できるだけ複数の本から読んだ方が良いでしょう。一見、大変な作業に思えるかもしれませんが、いくつものテーマを読む必要はありません

たとえば「1日、1テーマ」だけでも構わないのです。そう思うと、たとえ3冊の本を見比べても、実際に読む分量は、さほど多くはないので、着実に読み進めることができるでしょう。

まとめノートを作りながら読む

1ページから流れを追って読み進めるときには、さらっと流れで読むと、なかなか内容が頭に入ってきにくいかもしれません。理解を深めるには、『ヨガスートラ』を読む時も、『バガヴァット・ギーター』を読む時も、何が書かれているのかをメモしながら読むと頭に入りやすいです。

ほぼ1ページごとに何が書かれているのかを書き出していきます。大切だと思う説の内容をメモする程度で大丈夫です。時間がかかり過ぎると進まないので、端的に書き出すことがポイントになります。

例)『バガヴァット・ギーター』3章
3節・サーンキャとヨガの立場がある
5節・必ず行為をさせられる
8節・定められた行為をなせ

これだけ読んでも分かりにくいまとめになっていますが、あくまでも内容を理解するためなので綺麗にまとめなくても大丈夫。書き出しながら読むと、普通に読むよりもずっと時間はかかりますが、何倍も理解できるようになります。

もしも、分かりにくい部分が出てきたら飛ばしても構いません。特にギーターの場合、例え話が長く書かれている部分もあるので、最初はバッサリと飛ばして読んでも大丈夫です。

その他、おススメの独学術

ヨガ哲学を独学で学ぶには?
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上記の方法が、初心者が独学で哲学教典を読むのに一番効果的な方法だと思いますが、それ以外にも筆者が実践してきた方法をご紹介します。

コツ1:1ページ目から読まず、必要な部分から読む

『バガヴァット・ギーター』や『ヨガスートラ』を読んで、「分からない!」と言っている方のほとんどが、教典の1ページ目から開いて、順番に読もうとしています。

もちろん、それぞれの教典ごとに考えられた構成があるので、1ページ目から読むのは理想的です。しかし、『ヨガスートラ』にしろ、『バガヴァット・ギーター』にしろ、冒頭部分は意外と難しいのです。まずは分かるところから読む!という姿勢がとても大切です。

たとえば『ヨガスートラ』なら実践パートから読みましょう。『ヨガスートラ』の実践部分は、八支則というシステムで説明されています。

ヤマ、ニヤマ、アーサナ、プラーナーヤマ、プラテャーハーラ、ダーラナ、デャーナ、サマーディが8つの部門である(『ヨガスートラ』2章29節)

八支則はヨガを実践している人、すべてが辿るべきプロセスですが、ほとんどの人は、アーサナからヨガの実践を始めます。しかし『ヨガスートラ』では、アーサナを行う前に、ヤマとニヤマの実践によって自身の準備を行う必要があると説いています。

ヤマやニヤマが理解できていないと、アーサナへの執着が高くなってしまったり、精神的な意味でのヨガの恩恵を受けにくくなってしまうからです。アーサナの前にヤマ・ニヤマがあり、アーサナの後にも段階があると分かっているだけでも、日常の練習の意識が変わります。

こうした部分を知るだけでも教典を読む意義があります。

自分に関係の深い部分は読みやすいと思います。教典のすべてを読もうとせず、自分にとって分かりやすそうな部分、興味のある部分から読み進めた方が良いでしょう。

コツ2:先生から聞いた、教えを探して読む

どんなに頑張っても、ヨガ哲学のすべてを独学で深めるには限界があります。筆者も、恩師に出会うまでは、何度本を読んで理解しようとしても駄目でした。経験を含まない言葉だけの知識は、実感を持った学びになりにくいからです。

ヨガは経験を伴う哲学なので、経験者から学ぶことがとても重要になります。

実際にヨガを実践している恩師からの言葉には力があります。

哲学を教えてもらえるような師に出会うことは、なかなか難しいかもしれませんが、たとえば、ヨガのクラスや、受講した講座でアヒムサ(非暴力)について聞いたら、アヒムサとは何かを教典で調べてみる。また、サントーシャ(知足)について聞いたら、サントーシャについて書かれた部分を読んでみる。講師から教わった言葉が、大きな教典のほんの一部であっても、体験を伴って得た知識は一生ものの宝となり得ます。

コツ3:お気に入りの一節を見つける

自分にとってピンとくるような、お気に入りの一節を探すのも、とても有効です。筆者の場合、次の一節をとても気に入っています。

イシュワラは苦しみ、カルマ(行為)、カルマの結果、カルマへの依存に一度も触れていない特別に純粋なプルシャである。(『ヨガスートラ』1章24節)

この一文は、ヨガにとっての神様と、宗教的な神様の違いをはっきりと示した文章です。この定義によって、ヨガにおいての神とは絶対的な存在ではなく、私たちの本質と同じだと分かりました。ヨガと宗教の違いをとてもハッキリと感じることができて、ヨガの教えは安心して信じることができると感じました。

ヨガと宗教の違い:ヨガ・スートラが唱えるイシュワラ(自在神)とは?

「自分も、神も、プルシャである」と、とても個性的なヨガの理論を知ったことで、もっと深く学びたいと興味を持ちました。その時に『ヨガスートラ』のなかでプルシャについて書かれている部分を探して読み、分からない部分は解説本などで探しました。

このように、自身の興味の持てる部分から勉強を始めることで、少しずつ「分かる!」が増えてきます。

入り口は難しいけれど、楽しいヨガ哲学

始めて読む人にとっては難しいヨガの教典。しかし、基礎が分かってくると、とてもシンプルで分かりやすい哲学です。

今回は独学で学ぶ方法をご提案しましたが、もっとも分かりやすい方法は、先生から直接教わることです。もしもチャンスがあれば、ヨガの座学の講座にも参加してみましょう。

難しければ、筆者の連載『深めようヨガ哲学』でもスートラやギーターの内容を段階的にご説明しています。教典の本文と併せて読むことで、理解が深まるように書いていますので、ご活用下さい。

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