本場インドのヨガ事情&インドで学べること

本場インドのヨガ事情&インドで学べること

インドで行われているヨガとはどのようなものなのでしょうか?ヨガを深めようと思ったら、やはりインドに行ったほうがいいのでしょうか?

インドで様々なスタイルのヨガの先生に出会った筆者が感じた、インドと日本のヨガの違いについて、ご紹介したいと思います。

インド人にとってヨガって?

インド人にとって“ヨガ”ってどんな存在?
インド人にとって“ヨガ”ってどんな存在?

私が初めてインドでヨガを経験したのは2012年頃。当時インドでヨガは、あまりポピュラーではありませんでした。2015年に、ナレンドラ・モディ首相によって創始された「国際ヨガの日」によって、ヨガがインド国内外で広く認知されるようになりましたが、以前はインドに来てもヨガを練習しているのは外国人ばかり。

古典ヨガは密教だった

ハタヨガの経典を読むと頻繁に書かれていますが、古典的なヨガは師から弟子にのみ直接継承されていた密教的なものであり、厳格な他言無用でした。

修業は出家僧が人里離れた山奥などで行われており、一般の人にとっては「なんだか神秘的なことを言っている不思議な人たち」という認識だったのです。

それが数十年前に、著名なヨガティーチャーが西洋で誕生したことに端を発し、逆輸入のような形でインドの国民にもヨガが認知されるようになりました。ヨガが健康に良いという認識も、シヴァナンダヨガやアイアンガーヨガが西洋でポピュラーになってから、少しずつ広まったものです。

今でもヨガは神秘的な側面が強い

ヨガのアーサナやプラーナヤマが健康に良いという認識が、すっかり広まっているものの、スピリチュアルな側面を切り離すことはできません。ヨガのコンセプトはヒンドゥー教と深く関係し、宗教的に捉えられているからです。

インドでヨガのグルというと、悟りを開いた聖者のような風貌の先生が一般的です。グルに対しては、先生というより、まるで神様のように接している光景を見かけることが多いのも、ヨガの特徴といえます。

スピリチュアルとエクササイズの二極化

近年、ムンバイやデリーなどの都会では、完全にエクササイズ化したヨガスタジオが増えています。特に富裕層が多く、ボリウッド映画の中心であるムンバイの人々はボディメイクへの意識がとても強いため、西洋風のヨガスタジオも増えました。

都会のヨガスタジオでは、とにかく美しいボディラインを手に入れるために行われるアーサナが人気で、ヨガのアーサナを元にした筋トレのようなクラスが人気です。

一方で、伝統的なヨガのアシュラムに行くと、ヨガのアーサナはあまり行わず、瞑想や座学を中心に実施しているところがほとんど。

両者の傾向は、極端に分かれていて、程よいバランスのヨガを受けようと思うと、どうしても外国人向けのヨガ教室を探すことになります。

インドでヨガを学ぶには

インドでヨガを学びたい人へのアドバイス
インドでヨガを学びたい人へのアドバイス

私たちがイメージするような、「アーサナをしっかりと学びながら、心身も浄化できるようなヨガ…」と思ってインドに行っても、自力ではなかなか、いい教室、あるいは講師を見つけることはできません。

日本ほど洗練されたヨガ教室・講師が見つかりにくい

インドでは、解剖学にも精通した、洗練したヨガを教える先生は本当にごく一部。古典ヨガは、アライメントにはこだわらないシンプルなアーサナを行う場合が多く、粗削りな印象を受けますが、その素朴さが魅力でもあります。

もし、アーサナをアライメントの側面からも深掘りしたいなら、日本にいた方が簡単に先生を見つけられるでしょう。

現地では情報交換・口コミが命

納得のいく講師と出会い、ヨガの学びを深めたい!とインドに訪れたほとんどの人が、口コミを頼りに情報を得ています。

外国人向けのヨガ教室が集まるのは、ヨガリシケシ・マイソール・ダラムサラ・ケララなど。リシケシやマイソールなどは、ヨガを目的に通ってくる外国人が本当に多く、日本人も度々見かけます。

カフェなどで座っていると、「どこの先生は良かった」といった会話が四方から聞こえてきますので、ちょっと勇気を出して話しかけてみると有力な情報が得られるかもしれません。

または、ドロップインでクラスに参加し、その後に、一緒に受けていた他の生徒さんに話しかけてみるのもおすすめです。インドでは、みんな“お互い様“と考えている人が多いで、本当に親切に教えてくれます。

観光地では、様々なヨガを体験できる

決まった先生がいない場合、リシケシかマイソールをお勧めします。すっかり外国人向けに観光地化が進み、あまり神聖な雰囲気には浸れませんが、あらゆる種類のヨガを受けることができます。

アイアンガーヨガ、クンダリニーヨガ、アシュタンガヨガ、OSHOの瞑想……など、タイプの全く異なるヨガが、一堂に揃っているのは魅力的。

もちろん、昔ながらのハタヨガを教える先生や、アシュラムでの素朴なヨガを受けることもできます。

ヨガのインストラクターをしているような外国人が多く集まるので、彼らの需要に充分に答えられるレベルの先生も多くいます。あらゆるヨガを、たった数日の滞在で経験できる、本当にスペシャルな場所だと思います。

インドの都心でヨガを学ぶなら……

インドの都心でヨガを学ぶのにオススメの場所は?
インドの都心でヨガを学ぶのにオススメの場所は?

インドには本当に沢山の日本人が在住しています。その中でも、デリーやグルガオンには日系企業が多く、8000人程の日本人が在住しているとも言われています。

このように仕事でインドに赴任した人の中には、「せっかくインドにいるのだから!」とヨガを習う方も多くいらっしゃいます。そんなインド在住の日本人に人気のヨガとは?口コミをもとに調べてみました。

シヴァナンダヨガ・センターがおすすめ

インドで一般の人にも知名度が高く、インド各地にシヴァナンダヨガ・センターがあり、デリー・グルガオン地区だけでも、いくつもセンターがあります。とても素朴で穏やかなヨガなので人気が高く、日本人でも通っている方が多いようです。

インドの都心でヨガを学びたいという人には、私もシヴァナンダヨガ・センターをおすすめします。ヨガセンターは、シヴァナンダのほかにも、多数ありますが、ヒンディー語のみのところもあるので事前に確認してから行くようにしましょう。

出張ヨガも人気

中流家庭以上のインド人女性、とくに北インドでは、身の安全のために、あまり家から外に出ない人が多いです。そのため会食はケータリング、マッサージやヨガも自宅で、というケースが珍しくありません。

特に主婦層は、自宅にヨガの先生を招いている人が多く、週に3日程度来てもらっているようです。それでいて金額は月に1万円程度と、リーズナブルな点も魅力の一つ(値段は交渉できます)。

ツワモノ、日本人講師もいる!?

「せっかくインドにいるのだから本場の先生から習いたい!」と考える方が大半だと思いますが、インドで、特に都心部で理想的な先生を見つけるのは至難の技。何か所か巡った挙句、イマイチだった…という話をよく聞きます。

最終的に日本人の先生がやっている、日本人向けのヨガ教室に通う人がとても多いです。

一見するとそれでは物足りないと感じられるかもしれませんが、インドでヨガを教えている日本人先生は、ツワモノが多いのです。生半端な覚悟では外国人が、インドでヨガを仕事にすることはできません。そのため本当に厳選された先生がいます。

インド在住の先生から習いたくて、わざわざ日本から訪ねてくる生徒もいるほどです。

ヨガはアーサナだけでないことを体得できる

インドで出会うヨガの先生は、ヨガがアーサナではないということを知っている
インドで出会うヨガの先生は、ヨガがアーサナではないということを知っている

アーサナはヨガのほんの一部であり、それが全てではありません。分かっていても、どうしても日本ではアーサナを中心に学ぶ機会が多く、それ以外がおざなりになってしまいがちです。

きちんとヨガを学びたいと思ってティーチャーズ・トレーニング(養成コース)を受けたとしても、結局哲学的な部分は、よく理解できないまま……という話を聞きます。

一方、インドでヨガを学ぶと、ヨガは人生そのものだ、と必ず実感させられます。リシケシのガンジス川沿いの小道を歩いている誰もが「ヨガとはなに?」「人生とはなに?」と自問しているでしょう。

インドで出会うヨガの先生は、ヨガがアーサナではないということを知っています。アーサナを中心に教えている先生であっても、ヨガは人生を輝かしいものへと磨き上げるためのツールであると理解しています。

ヨガとはなにか?その疑問に本当に向き合うことができるのは、日本から勇気を出してインドに来た人の特権だと思います。

インドでヨガを勉強する=人生の分岐点

インドに来てから、私自身、本当に沢山のヨガ友達ができました。その9割がたが、世界各国から来た外国人です。

私がティーチャーズ・トレーニングを受けていた時には、30人近くのクラスメイトがいました。その後、同じスクールでアシスタントとして指導に関わったため、同じ学校内だけでも100人ほどの人と出会い、人生について連日語り合いました。

ヨガの養成を受けると、1か月間はインドにいることになりますから、仕事を辞めてきた人もたくさんいらっしゃいます。

彼らの多くは、今後の人生を考え直すためにインドに来ていました。それはとても苦しい自分との戦いです。「ヨガを教えて生活したい」と思っても、短期間で簡単に実現できる人はごく一部。

ヨガと離れた生活に戻りたくなくて、そのまま何か月も、下手したら何年もインドに残ってバックパッカーをしている人もいれば、頑張って東南アジアにヨガスタジオを設けて理想の生活を手に入れた人もいますし、SNSを活用してインフルエンサー的な活動でヨガと生きている人もいます。

このように、すぐ人生の方向が見つかった人もいれば、何年も苦しみ続ける人もいますが、共通して言えることは、インドでヨガを学んだことが人生の分岐点になっている、ということでしょう。

もちろん、日本でもヨガと出会ったことで人生が変わる人はとても多いです。しかし、インドではそれを、より顕著に実感させられます。

人生と本気で向き合える、本場で学ぶ醍醐味

インドでヨガを学んだ人が習得できる一番の宝物とは?
インドでヨガを学んだ人が習得できる一番の宝物とは?

インドはいい意味でも、悪い意味でも強烈な国です。

インドにヨガを学びにくる人は増えましたが、すべての経験が楽しかったという人ばかりではありません。インドでは、ヨガで学んだことを、日常生活の中で考えさせられることが日々起こります。

何もかもが整備された日本とは異なるので、日常生活のなかでつまずくことも頻繁に起こります。そして、その度に、「これは何の試練だろう?」と考えさせられます。

その時に助けてくれるのがヨガの教えです。

人生にどうやってヨガを生かすのか?それはインドでヨガを学んだ人が習得できる一番の宝物だと思います。

(写真:筆者撮影)

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