健康の維持・向上、心の安定や美容など、さまざまな目的でヨガをしている方がいらっしゃるかと思いますが、ヨガは海外では医療の補助や代替ケアとしても注目されています。
文献検索サイトに「Yoga」と入力してみると、2025年6月の時点で9,300件を超える研究報告があり、科学的な視点からもヨガの効果が確認されつつあります。
今回は、2013年にインドで発表された、仕事をよりポジティブで、より豊かにするためのカルマ・ヨガを紹介します。
1.『バガヴァッド・ギーター』とカルマ・ヨガ

『バガヴァッド・ギーター』(以下、『ギーター』)は、インドの二大古典叙事詩の一つである『マハーバーラタ』の一部です。『ギーター』の中で登場するインドの神クリシュナは、次のように説いています。
すべての苦しみと不和の根源は、利己的な欲望によって引き起こされる心の動揺である。欲望の炎を消す唯一の方法は、自己鍛錬によって心を鎮め、それと同時により高次の活動に従事すること。
『ギーター』は、精神性や霊性とも訳されるスピリチュアリティに関連するヨガの様々な形態を説明した経典の一つで、バクティ・ヨガ(献身・愛の道)、ジュニャーナ・ヨガ(知識の道)、そしてカルマ・ヨガ(行為の道)の3つのヨガの道を論理的に説明しています。
また、スピリチュアリティは、メンタルヘルス、夫婦や親子関係、職場等での人間関係、問題への対処能力とも関係していると考えられています。そして、スピリチュアリティの向上は、人生の目的や意味を見出すことにもつながると言われています。
『ギーター』では、カルマ・ヨガに関連して、絶え間なく働かなければならないと繰り返し記しています。また、どのように働くかをよく理解し、仕事を賢く科学的に行うことで、最大の結果を得ることができるようになると述べています。さらに、仕事の結果に対して無執着でいることで、利己心と執着から離れ、至福がもたらされると教えています。
『バガヴァッド・ギーター』は、現代における重大な危機的状況(うつ、薬物依存、自殺など)に対する心理療法の最古の教えとも呼べるかもしれません。
2.ポジティブ心理学とウェルビーイング

ポジティブ心理学とは、個人と社会システム全体の幸福とウェルビーイングの向上を目的として研究を行う学問です。幸福・希望・創造性・知恵を中心テーマとしています。
また、心理的ウェルビーイングとは、個人の心理的な潜在能力を最大限に発揮できることと定義されています。
私たちが活動しようとする時は、外発的な動機や内発的な動機によって行動し始めます。外発的な動機の場合、その活動の結果が自分にとって好ましい状況をもたらすかどうか、不快な感情を回避できるかどうかを理由に行動します。
一方、内発的な動機の場合には、自分自身がその活動が好きであることを理由に行動を起こし、それらを促進する要因として、①適度に困難であること、②上手く達成できると感じられること、③満足感が得られることの3つがあげられます。
これはまたフロー体験とも呼ばれ、コントロール可能でありながらも困難な課題またはスキルが要求される課題であり、内発的な動機による活動に取り組んでいるときに起こります。フロー状態を体験するためには、活動・課題への深い集中が不可欠です。これは、自己意識を滅することにもつながります。
3. カルマ・ヨガとポジティブ心理学
『ギーター』では、結果や成果を渇望してはならないと述べると同時に、すべての持ち得る力やスキルをもって行動すべきであると教えています。欲望なく行動する人は、欲望をもって行動する人と比べて、より優れた結果や成果が得られるはずです。また、良い結果であろうとなかろうと、どのような仕事も無駄にならないことは明らかです。
クリシュナは、過去や未来ではなく現在に集中することを強調しています。
やらなければならないことだけに集中することで、100%の集中力を発揮することが可能になります。結果や成果への欲求は不安を引き起こし、気が散ったり感情が乱れたりすることで仕事への集中力が妨げられてしまいます。
このカルマ・ヨガの教えは、現代的なポジティブ心理学の中で説明されるフロー体験の状態とほとんど一致しています。仕事への没頭でより高い集中状態と内発的動機が導かれ、さらには喜びや幸福への好循環につながるのです。
ポジティブ心理学では、個人と社会の繁栄に対する研究をしていますが、ストレス・コントロールも課題の一つです。ストレスは、心身への悪影響や疾病の罹患率、死亡率の上昇を引き起こす可能性があることも指摘されています。ですので、日々の些細な出来事にともなう不安、過去の心配や将来への過度な期待による不安を克服することは、ストレスの軽減につながることが期待されます。『ギーター』の教えである「過去と未来を手放し、今この時を生きること」の実践は、不安や心配を減らし、それらに関連するストレス、心身の疾患を低下させる治療法ともなる可能性があります。
今回の研究報告から、インドの古典『バガヴァッド・ギーター』の教えの中の一つであるカルマ・ヨガは、現代的なポジティブ心理学という学問にも通じ、また、すべての人の人生の中心ともなる仕事にも直結する教えであることが分かりました。
ストレスを克服して、ワークライフをより豊かにすることにもヨガの知恵が役立ちそうです。
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