B.K.S.アイアンガー師の線画と柳生直子先生

アイアンガーヨガってどんなヨガ?【プロップス 編】B.K.S.アイアンガー師の愛弟子・柳生直子先生に聞いてみた。

「アイアンガーヨガ」。
その創設者であるB.K.S.アイアンガー師のベストセラー『ハタヨガの真髄』は、今もなおヨガの実践・学びの場には欠かせない1冊として根付いています。

こんにちは、ヨガジェネレーションのなおこです。

前回の記事「アイアンガーヨガってどんなヨガ?【ハタヨガの真髄 編】B.K.S.アイアンガー師の愛弟子・柳生直子先生に聞いてみた。」では、そんな『ハタヨガの真髄』にまつわるエピソードを、その愛弟子・柳生直子先生にお伺いしました!

今回はその後編【プロップス 編】!

アイアンガーヨガを知る上でもう一つ、欠かせないプロップスについて焦点を当てて、深掘りします。

B.K.S.アイアンガー師から最も長く指導を受けた日本人である柳生直子先生。アイアンガー師の間近で学びを続けてこられた柳生先生だからこそ語れる、貴重なエピソードの数々について、まとめてお伝えします。

プロップスの考案の歴史

ヨガスタジオに置かれたブランケット・ブリック・ヨガベルト
柳生先生の講座では木製ブリック・コットンブランケットなどを使ってヨガを体験します

1980年から2020年まで、多いときは年に複数回、合計なんと55回もインドへ渡られた柳生先生。

インドへ行く度に、アイアンガーヨガで用いられるプロップスも多様に増えていったそう。その歴史やいきいきとしたエピソードも伺うことができました。

ヨガマット

もともとは布製のラグ(敷物)でヨガをしていたが、海外の旅行先でスティッキーマット(粘着性の高い工業用のロール状のシート)を見つけられたアイアンガー先生がヨガに取り入れられたのがはじまり。大きなロール状のシートから15本程度のヨガマットを切って使われていた。昔はカラフルなものはなく、一色のみ。布製ではウールドゥバダヌラーサナ(ブリッジ)で手足が安定せず、生徒たちが腰を痛めないように使用することになった。ヨガマットの普及で、ヨガはより安全で身近なものになった。

ブリック

当初はレンガ製だった。インド・プーナの家々はレンガ積みが多く、町の角に積んであり手に入りやすかった。アイアンガー先生が三角形のポーズをするときに、膝を守りポーズにスペースを作るために初めてブリックを使われたそう。

ベルト

アイアンガー先生がヨーロッパ訪問時、荷物を紐で縛っているのを見て、体を締める時に使え、さらにバックルがあることでその人の体に合わせて調整できるということで考案された。

ブランケット

インドでは駅などどこにでもあるコットン製のブランケット。座位ではお尻の下に、仰向けになったときには頭と首をサポートしたり、胸を開くために体の下に置いたりするのに用いられた。正しい呼吸法にはブランケットはなくてはならないもの。

ボルスター

インドの長枕。インドの家には日常的にあるものが使われた。インドはイギリスの統治を受けていたのでイギリスの文化が根強く入っており、イギリスにも長枕は日常的に目につくものである。

ウォールロープ

井戸のつるべにロープがかかっているのを見て考案。逆立ちができない人が首に痛くない方法はないか?という視点でヨガに用いられるようになった。

アイアンガー先生は超がつくほどアイデアマンでした。まさに必要が発明の母、自分が考えている時に、目についたものが使える!と思ったらすぐ試されていました。全てがもとよりヨガのために作られていたわけではなくて、アイアンガー先生がすべてを利用して、数々のプロップスは考案されていったのです。

今やヨガの練習には欠かせないプロップス、それらすべてがアイアンガー師による考案であると思うと、現代ヨガに残された功績の大きさをますます感じます。

インドの文化、生活に根ざして増えていったプロップス。もしアイアンガー先生がインドではなくて日本にお生まれになっていたら、お座布団とか違ったものがプロップスになっていたかもしれないわね!と笑いながらお話していた柳生先生が印象的でした。

最大のプロップスは、体

生徒のポーズを補助する柳生直子先生
アイアンガーヨガでは椅子もプロップスに。インドのチャイ屋さんにあるような椅子が取り入れられたのよ、と柳生先生

多くのプロップスが生まれたエピソードをお聞きしたところで、柳生先生がお話くださったお話。それは、私たちを物理的に支えてくれるヨガプロップスの域を超えた深いものでした。

アイアンガー先生が考案されたプロップスはたしかに私たちを正してくれる一つのものなのだけれど、ヨガをする上で最後にいきつくのはソウル(魂)なのです。コシャの考え方でいくと、清らかな魂に出会うために旅をしていて、その一番外側が体。ソウル(魂)すなわち真我が傷付いても穢れてもいけない。それをしっかり守ってくれる鞘は、体。最大のプロップスは体なのです。

体を正しく整えることの意義、それを具体的に行いやすくするためのプロップスの数々。

アイアンガー先生がプロップスの使用を通して目指されたのは、アサナによって体を痛めないことでした。
誰もが最大限にそのアサナの恩恵を得るために、体が熟達する過程において、こうしたサポートを得ること。
体の差異があっても、誰もがそこに到達できることを目指されていました。
考案されたものの数々を見ると、誰もがヨガを安全に楽しく、効果的に深め享受できるような、アイアンガー先生の深い愛情を感じるのです。プロップスは体だけではなく、心・精神的なサポートにもなっているのです。

柳生先生は、プロップス、そしてアイアンガー先生に対して、こんなメッセージをくださいました。

アイアンガー先生が残されたものがいかに大きなものを残してくださったのかということ、そしてその思いや大切にしたい言葉を、その言葉の温度感までも今もなお伝えてくださる柳生先生という存在の貴重さを改めて感じます。

アイアンガーヨガを動画で体験!


ここまでお読みいただき、実際にアイアンガーヨガを体験したい!という気持ちになった方に!貴重なアイアンガーヨガのレッスンをご紹介!

多くの方は、手が床に付かないときに補助的にブロックを使ったり、前屈のときに足裏にベルトを引っかけたりという使い方が多いかもしれませんが、アイアンガーヨガでのプロップスの使い方は本当に多種多様!

今回は呼吸法を実践する前に身体をととのえられるポーズをピックアップしてご紹介いただきました。

ぜひ実践してみてくださいね。

柳生先生からアイアンガーヨガをより深める!1日集中基礎講座

ヨガジェネレーションでは、柳生先生からたっぷりとアイアンガーヨガを学べる講座、「ハタヨガの真髄を学ぶ、柳生直子「アイアンガーヨガ<1日集中>基礎講座」を開催中!

今回ご紹介したエピソードはほんの一部。講座ではアイアンガー先生による言葉やプロップスの使い方もバリエーション豊富に学ぶことができます。

体を丁寧に整えながら、自然と上級ポーズの完成へも近づいていくシークエンスも、解剖学に基づき丁寧にアライメントを整えていくアイアンガーヨガの魅力のひとつ。

毎回、ご参加のみなさまの体の状態や希望を参考にして、ピークポーズとそのポーズに至るまでの細やかな体の調整シークエンスもたっぷり体験することができます。

ぜひ今度はご自身で、体験と学びを深めてみてくださいね。