周産期の心と体の健康に対するヨガの効果

周産期の心と体の健康に対するヨガの効果

健康の維持・向上、心の安定、美容など、さまざまな目的でヨガをされている方がいらっしゃるかと思いますが、海外ではすでに医療の補助や代替ケアとしても注目されています。

文献検索サイトに「Yoga」と入力してみると、2023年3月末までで7,500件を超える報告がされていて、科学的な視点からもヨガの効果が確認されつつあります。

今回は周産期の心と体の健康に対するヨガの効果について、2015年のシステマティックレビュー(すでに報告されている過去の個別の研究をとりまとめる手法)による研究を紹介します。

研究の背景::求められる妊婦の補完代替医療

周産期においては、うつ病は20%、不安症は10%の女性が発症していることが研究で示されています
産後に不安になっている女性

周産期は妊娠22週~出生後7日を指し、胎児・新生児と母体の両方にとって非常に大切な時期であり、また生命に関わる事態も含め病気などのリスクが最も高い時期とされています。

周産期においては、うつ病は20%、不安症は10%の女性が発症していることが研究で示されています。

薬による治療が有効であるとされていますが、妊婦への安全性の懸念と胎児への有害作用の懸念から、薬の服用に対しては消極的です。

妊娠中の女性それぞれで状態が異なり非常に複雑であることもあり、妊娠中または授乳中の抗うつ薬の使用による有害作用は未だ明らかではありません。

しかし、一部の薬においては一過性新生児合併症をもたらす可能性があるとされていることなどから、薬を用いるベネフィットとリスクが不明瞭なために、妊婦自身だけでなく医療提供者も最善の選択に迷いが起こることもあります。

2012年のアメリカの国民調健康査のデータによると、成人のうち38%が、鍼治療、カイロプラティック、ハーブやサプリメント、ヨガや瞑想などを含む、補完代替医療を利用していることが分かり、注目度が高くなってきています。

なかでもヨガは、身体的なポーズ・呼吸法・瞑想やリラクゼーションが組み合わされ、心と体の両面にアプローチをすることを可能とします。

そこで、これまでに報告されている研究をレビューし、妊婦の健康や心の幸福に対するヨガの効果を検討することを目的としました。

研究の方法:2013年までの報告をレビュー

文献検索サイトを用いて2013年までに発表された関連する報告をレビューしました。

主な検索キーワードは以下のとおりです。

  • 周産期
  • 分娩前後
  • 妊娠中
  • 産後
  • 産前産後
  • ヨガ

一次検索をした結果約335の文献がヒットし、そこから今回の研究目的に合わせて最終的に13の文献に絞り込みして内容を確認しました。

すべての研究が何らかの形でヨガを取り入れていますが、その種類は様々です。

研究の結果:ヨガとマインドフルネスの効果

マタニティヨガで瞑想
瞑想をする妊婦

13の研究すべてを集めると参加した妊婦は667名となります。

7つの研究においてヨガと一緒にマインドフルネスや瞑想が実施されており、ヨガと瞑想は組み合わせて行われることが最も多いことが分かります。

太極拳、エクササイズ、ピラティスなどの他の補完代替療法とヨガが組み合わせて行われたパターンも、他の研究では見られました。

ヨガの介入期間は研究によって異なり、6~16週間の幅で行われ、また1回あたりの時間は20~120分です。

13の研究のうち7件でうつ病に対する効果を評価しています。その結果、6件で統計学的にも優位にうつ病が減少していることが分かりました。

また、5件で不安症に対する評価をした結果、5件すべてで顕著に不安症が減少していると報告していました。

多くの研究が妊娠中のうつ病や不安症に対する効果を検討している中で、同時に痛みやストレスにたいする受容度、母体と胎児の愛着、睡眠や疲労、イライラ感といった他の指標についても評価を行っています。

特にマインドフルネスヨガを行ったグループでは、母体と胎児間の愛着スコアが増加したとの報告が見られました。

妊娠中のヨガについてのインタビューを行った一部の研究では以下の報告も得られており、社会的支援の要素につながるとも考えられています。

  • 94%の参加者が、ヨガクラスに満足し、他の人にも勧めたいと思った。
  • 81%の参加者が、ヨガクラスは自分にとって大切な重要な時間となった。
  • 63%の参加者が、より希望や自信を持つことができた。

ヨガは妊婦の状態に合わせて内容を様々に変えて行うこともでき、周産期の女性にとって安全に取り入れやすい補完代替医療の1つになり得ることが示唆されます。

今回の研究においては、ヨガによる有害事象の報告はひとつもありませんでした。

また、途中で脱落する参加者は低く、出席率も良好であったことから、多くの妊婦から受け入れられやすく、周産期ケアの1つに取り入れることの実現可能性が高いことが分かりました。

すでに海外では補完代替医療が注目を集め、研究結果の報告も増えていることから、現代の科学的にも効果が明らかになってきているようです。

ヨガもその1つになり得る可能性がこの研究結果からも分かります。

特に母子や胎児・新生児へは、薬の影響が心配となります。心地よいヨガによって、大切な時期により自然な方法で、心の不安を減少し体の元気を保つことにつながるといいですね。