子どもたちのマインドフルな状態と、脳神経機能の接続性

子どもたちのマインドフルな状態と、脳神経機能の接続性

健康の維持・向上、心の安定、美容など、さまざまな目的でヨガをされている方がいらっしゃるかと思いますが、海外ではすでに医療の補助や代替ケアとしても注目されています。

文献検索サイトに「Yoga」と入力してみると、2022年6月末までで約7,000件の報告がされていて、科学的な視点からもヨガの効果が確認されつつあります。

今回は子どもたちとヨガの効果に関連して、マインドフルネス・瞑想に関する研究を紹介します。

研究の背景・目的:マインドフルネスの子どもに対する効果を調べる

研究の背景・目的:マインドフルネスの子どもに対する効果を調べる
研究の背景・目的:マインドフルネスの子どもに対する効果を調べる

今この瞬間のことではなく、過去や未来のことへ意識が移ってしまう「マインド・ワンダー」の状態は、実は、起きて意識がある時間帯のうちの50%近くと言われています。

過去の反芻※1や将来への心配など、ネガティブな感情からこのようなことが起こっていることが分かってきており、今この瞬間に心をおくことの重要性に関心がよせられてきました。

その1つの方法として、「今この瞬間に意識を向けて集中し、目の前で起こっている出来事をジャッジすることなく受け入れる」と定義される、マインドフルネスが挙げられます。

これまでの他の研究結果から、瞑想練習を含むマインドフルネスに関することを増進することによって、以下の事例を含み、心身の健康に対して幅広く良い効果があることがすでに分かって来ており、様々な疾患を持つ患者へも効果を示すという研究結果も出てきています。

  • 認知機能の向上
  • 感情の安定
  • ストレス耐性
  • 痛みの緩和
  • 気分や感情の好転
  • うつ症状や不安症の減少

マインドフルネス評価は主に大人を対象として行われてきたものの、今後は教育や子どもの医療など、子どもたちに対しても良い効果がもたらされることが期待されます。

  • ※1 反芻:はんすう。繰り返し考える事。

研究の方法:子どもに対し脳波や問診による評価を行う

42名の6~17歳の子どもたち(うち女子は23名)がこの研究に参加しました。

MRI を用いた脳波測定や、問診票によるマインドフルネス状態またはうつや不安症に関する様々な指標数値から評価を行いました。

研究の結果・結論:マインドフルネスにより不安が減る

研究の結果・結論:マインドフルネスにより不安が減る
研究の結果・結論:マインドフルネスにより不安が減る

問診票の結果から、マインドフルネス数値が高いほど不安が少ないことが分かりました。

マインドフルネス数値は、参加者の背景にある、収入や親の教育、IQ、思春期、性別またはうつ状態とは関連がないようです。

MRI では、マインドフルネスの3つの段階とも関連する、3つの領域の脳波を測定しました。

  • D:デフォルト状態 → 意識が逸れること
  • S:気づき・感情 → 意識が逸れたことに気がつくこと
  • C:中央管理機能 → 「今」に意識を戻すこと

静的時の通常の脳の状態と、マインドフルネスによる変化

静的時の通常の脳の状態においては、右脳と左脳の中央管理機能同士、気づき・感情と左脳の中央管理機能、デフォルト状態と左右の中央管理機能の接続性が良いことが分かりました。

マインドフルネスを行った場合、デフォルト状態と左脳の中央管理機能の接続性が若干向上したものの、あまり数値に大きな変化はありませんでした。

心穏やかな時や落ち着きがある時には、意識が逸れたことに気が付きやすく、また「今」に意識を戻す機能が働きやすいことが分かります。

動的時の通常の脳の状態と、マインドフルネスによる変化

動的時に脳の状態は、大きく5パターンに分けられることが分かりました。

  • パターン1:
    デフォルト状態と左右の中央管理機能、気づき・感情と左脳の中央管理機能の接続性が良い
  • パターン2:
    デフォルト状態と左右の中央管理機能、右脳と左脳の中央管理機能同士の接続性が良い
  • パターン3:
    デフォルト状態と左右の中央管理機能、気づき・感情と左右の中央管理機能、右脳と左脳の中央管理機能同士の接続性が良い
  • パターン4:
    すべての機能の接続性が良い
  • パターン5:
    デフォルト状態と左右の中央管理機能の接続性が良く、他は弱い

マインドフルネス数値が高い子どもたちほど、パターン2の気づき・感情との接続が少ない状態にいる時間が短く、様々な脳の状態パターンに移行しやすいことが分かりました。

また、不安症がある子どもたちにおいては、様々な接続状態へ移り変わりも少ないことが測定されました。

今回の測定の結果から、マインドフルネスは、様々な接続状態への移り変わる回数、特定の状態が表現される頻度、またネットワーク間の強度と関連することが分かりました。

脳神経の接続状態が柔軟であることによって、マインドフルネスが向上し、不安が減少することが解明されてきました。

また、マインドフルネス数値が高い子は、気づきが少ない脳の状態にいる時間が短いようです。

マインドフルな状態の脳科学的な解明が進むことは、ヨガや瞑想が子どもたちの精神的・身体的な発達にどのように貢献できるか、さらなる理解を深める助けとなりそうです。

子どもたちのキラキラ輝く好奇心やそれによる気づきが促されることは、のびのびと、そしてすくすくと成長するかぎにもなるかもしれません。