ヨガ哲学で あるある悩み 解決の糸口を探る

ヨガ哲学で「悩み解決の道」を探る

ヨガ哲学から考える、悩みの解決法

人生には悩みがつきもの。すぐに解消される悩みもあれば、過去から現在まで、ずっと引きずってしまう悩みもある。はたまた、社会に対する憤りなど、自分の力が到底及ばないようなことに対するモヤモヤもあるだろう。

しかし、他を変えることは難しい。一番早い解決への糸口は、自分の考え方、捉え方を変えることだ。今回は、ヨガ哲学の考えを通して、あるあるな悩みに対する向き合い方のヒントを探っていこう。

あるある悩み1:身近な人の言動に、心を乱してしまう。

『バガヴァッド・ギーター』に、サットヴァな人の性質の一つとして「クシャマー(許容する、許す)」という言葉が出てくる。

家族、友人、仕事仲間など、関係が近くなればなるほど、相手に要求が増えて不満が現れるものだが、イライラという感情は出てもOK。イラ立つ自分を受け入れられないことが、さらなるイライラを生んでしまう。

相手に悪気はないかもしれない。相手の立場に立って考え、時には自分の気持ちを伝えて解決する努力が必要だ。他人も世界の一部。受け入れ、自分の捉え方を変えていこう。

あるある悩み2:仕事のスキルが上達しない…。自分には合ってないのではないか。

『ヨーガ・スートラ』に「アッビャーサ」という言葉が出てくる。この言葉は繰り返し実践することの大切さを表す。スキルの上達は差し置いても、何年も働き続けることは誇れること。

聖典は、過去に選んだ結果が「今」になって叶って現れていると言う。「今」はすべて自分が選んだこと、行いをした結果。ネガティブに考えてしまう時は、他人と比べていたり、ものごとのマイナスの面ばかり見ている時かもしれない。

今の仕事があることで、得していること、感謝できることを探してみよう。

あるある悩み3:過去にされた仕打ちをいつまでも忘れられない

『バガヴァッド・ギーター』第2章52節は、「あなたの知性が不浄な世界を超える時、今まで聞いていたことや、これから聞かねばならないであろうことに対して、平静さを得るでしょう」と教える。

過去にされたことがたとえトラウマになるようなツラさであっても、過去を変えることはできない。この世界は起こるべきことが完璧に起こると言われる。それをバネに人に優しくなれたなら、ツラかった出来事にもいい作用があったと思えるだろう。

自分の捉え方を変える努力や、感謝できる側面を探してみよう。

あるある悩み4:身体機能や容姿の衰えを受け入れられない

『バガヴァッド・ギーター』は、肉体は移り変わるものだが、自分の本質(プルシャ)は、唯一移り変わらないものと語る。

植物や動物にも幼少期、熟年期があるように、変化はごく普通のことだが、自分の老いにショックを感じる人は多いのではないだろうか。しかし、一方で人によっては、老いることに楽しさや美しさを感じる人もいる。

インドには、痩せていることがいいという価値観がないため、お腹が出ている女性も隠さず、見ている人も目にもとめず気にしない。老いることへの悲しみは、ただの自分の価値観からくるもので、プルシャは変化していないのだ。

あるある悩み5:人の傷つけ合いがなくならないのはなぜ?

誰もがアルタ(安心)やカーマ(喜び)を求めると聖典は言う。ダルマ(調和)とともにそれらを求める人は、考えの成長した人。ダルマの価値に気づくまでは、自分だけを満たそうとしてしまいがちだ。

そういう人は、アダルマ(不調和)な行いをして、他人や環境を傷つけてしまうことも。アダルマな人を簡単に変えることはできないので、まずは自分が見本になるように、ダルマな行いに努めよう。

しかし、自分の行動が必ずしも正しいとは限らないので、正義感がモラルハラスメントになってしまわないように気をつけて。よく考え、自分、他人、環境のために行動しよう。

できることから始めよう

ヨガの聖典に書いてあるような心で、世界を捉えることができたら理想的だ。しかし、現実的にすべて思う通りにコントロールすることは不可能。

いきなり変えようとするのではなく、毎日の生活の中でヨガ哲学の教えを少しでも意識して、世界を見てみる努力をしたい。

最初は意識的だった思考が、きっといつしか無意識に、そして自分の一部となる日がやってくるだろう。

教えてくれた人=谷戸康洋
やとやすひろ。生まれ育った標高1100mの八ヶ岳南麓の環境を生かし、森林療法、自然療法などにも積極的にヨガを取り入れる。2012年に自身のスタジオ「fika」を山梨県昭和町に設立。高齢者向けのヨガクラスから、企業での出張ヨガクラス、教育者向けのヨガやスポーツ選手に向けてのヨガクラスなどを開催。サンスクリット語、ヴェーダンタをSwami Cetanananda師より、学ぶ。

文=Yogini編集部