椎間板と呼吸

ヨガが有効な理由は「椎間板」と「呼吸」にあり

基本的な背骨の構造をおさらい

ヨガのポーズでは、代表的な太陽礼拝を始め、背骨を大きく動かす動作が多い。背骨を動かすことは、健康や美容とどのような関係があるのだろうか?

まずは背骨の構造からおさらいしていこう。

椎間板差し込み画像
背骨の構造

背骨は椎骨と呼ばれる小さな骨が、鎖のように連なって構成されている。その椎骨の間にあるのが椎間板。椎間板は、背骨の4分の1を占め、背骨のしなやかさにかかわる重要な役割を担う。弾性を失うと、背骨が不安定になり、姿勢が悪くなったり、背骨を支える筋肉に負担をかけたりする。

仰向けになった時に床に触って感じられる部分は、棘突起と言い、椎骨の後ろ側が隆起し、突き出したもの。

また、椎骨の隙間(着椎間孔)には、脊髄から枝分かれした末梢神経の脊髄神経がそれぞれ一対ずつ出ている。椎間板ヘルニアと呼ばれる状態は、水分の多いゼリー状の組織が椎間板の中から突出した状態で、脊髄神経を圧迫さえることで、手や足に痛みが生じることもある。

間違った体のクセや習慣、加齢により椎間板が弱りがちな人は、少しずつ伸展動作を行うと効果的。前屈+ねじりの動作は椎間板に負担がかかりやすいため注意が必要。

背骨を動かすことが体に“いい理由”

背骨を動かすことのメリットとして、まず脳脊髄液や血液、リンパなど、体液の流れを潤滑にするという効果がある。

脳脊髄液とは、背骨の内側にある私達の運動や感覚をつかさどる神経系に栄養を与え、代謝を促す重要な体液。ヨガ的には、生命の根源的エネルギーとの関連とも言われています。背骨の中を通る脊髄液がスムーズに流れるために大切なのが背骨の滑らかさです。

背骨の自由で安定した動きのキモは、「椎間板の弾力性」。背骨への外からの衝撃を吸収し、神経や血液などを守るクッション的な役割を担う椎間板は、本来水分を含んでいる。しかし、20代をすぎると血管による栄養補給が断たれ、30代には無血管となり、リンパの拡散による栄養補給だけに。

そのため椎間板は、放っておくと古びた輪ゴムのように硬くなり、亀裂が入りやすくなる。硬くなった椎間板にリンパを流す唯一の方法が、背骨を動かすことだ。動かすことで、水分を吸収させる。

背骨を動かすためには、一つのポーズだけではなく、背骨の屈曲、伸展などの動きが行われるシークエンスを行うことがオススメだ。

呼吸を制御して、背骨の安定性を高める

ヨガで姿勢がよくなると言われているが、背筋が伸びることで体にはどんな影響があるのだろうか。

背筋はただ伸びていればいいというわけではなく、本来背骨を支えるためにある筋肉(インナーマッスル)を無理なく最小限に使い、体に負担がない形で支えることが重要。しかし、人の体はインナーマッスルが使えていなくても背骨が支えられないというわけではない。

チャレンジポーズなどをする時にインナーマッスルがうまく使えない場合は、アウターマッスルで補い背骨を支え始める。ただ、余計な筋肉を使うため、疲れやすくなってしまう。

そこで注目したいのが呼吸。意識的なヨガの呼吸が背骨を支える上で、とても有効なのだ。焦りや不安があると、呼吸が乱れることがあるが、そこで意識的に呼吸を整えれば背骨を支える筋肉の協調性を乱すことなく、安定させることができる。

なぜなら、背骨を支える筋肉はと呼吸や排泄に使う筋肉は同じだからだ。お腹まわりの腹横筋と、骨盤下部の骨盤底筋、そして横隔膜は連動して動く。息を吐きながら意識してお腹に力を入れると、腹圧が上がり、背骨の生理的湾曲が整い強さが生まれる。

呼吸を意識することで、リラックスしてアーサナが取れるだけではなく、背骨まわりの筋肉や関節の予防にもつながる。

背骨環境を整えて、いつまでも元気で美しく

深い呼吸とともに、ダイナミックに背骨を動かしていくヨガの気持ちよさは言うまでもない。しかし、ただ気持ちいいだけではなく、背骨を動かすことは健康と美を保つ上で、さまざまな恩恵をもたらしてくれる。

長時間のデスクワーク、家事などでは、同じ姿勢が続き、意識して動かさないと背骨の動きが悪くなりがち。美と健康を保つためにも、意識して日常的に背骨を動かすヨガやストレッチの動きを取り入れたい。

さらに、ヨガやストレッチとともに深い呼吸を意識することで、背骨の安定性が上げ、安全に快適な背骨環境を作ろう。

教えてくれた人=石垣英俊
いしがきひでとし。鍼灸師、按摩マッサージ指圧師。オーストラリア政府公認カイロプラクティック理学士。国際中医師。RYT200修了ヨガインストラクター、日本ヨーガ療法学会認定ヨガ教師。神楽坂ホリスティック・クーラ代表。感情と体をヒモ解くAround Therapy主宰。

文=Yogini編集部