ムーラバンダの効果を、解剖学的に解説!

ムーラバンダの効果を、解剖学的に解説!

ヨガでは「バンダ」と呼ばれる身体の各部位を締める動作があります。のどを締める「ジャーランダラバンダ」、お腹を締める「ウディヤーナバンダ」、お尻を締める「ムーラバンダ」があり、目的としては身体の中のプラーナが抜けないようにするためです。

このバンダは、解剖学的に見ても、身体にとって有効な働きをすることがわかります。今回はお尻を締める「ムーラバンダ」に焦点を当て、身体にとってどのように作用するのか、解剖学的に見ていきたいと思います。

ムーラバンダの動作を理解

ムーラバンダの動作を理解
ムーラバンダの動作を理解

まずは、このムーラバンダを実践してみてください。最初は慣れていないと思いますので、次のステップを参考に、ラクに始めてみてください。

  1. ラクな姿勢で座ります。
  2. 左右の坐骨にしっかり体重が乗るように骨盤のポジションを整えます。
  3. 息を吐いて、深く息を吸います。左右の坐骨を中心に近づけるように骨盤底筋群を締め付けます。
  4. 骨盤底筋群とは骨盤の恥骨、尾骨、坐骨に付着している筋肉です。つまり骨盤の底の部分です。この時、骨盤底筋群を肋骨方向に引き上げるようにイメージしましょう。

  5. 骨盤底に意識を持っていき、そのまま保息(呼吸をとめること)をします。この時、苦しくならない程度の時間にしておきましょう。
  6. ゆっくり息を吐きながら骨盤底の締め付けを緩めます。これをまず5回繰り返します。

ラクな座位から始め、慣れてきたら前屈や身体を捻るなど脊柱を動かしたり、四つん這い、立位など姿勢を変えてやってみてください。

実践してみると、わかりますが、ムーラバンダは骨盤底筋群を使います。骨盤底筋群の主な役割は排泄のコントロール、骨盤内の内臓の支持、体幹の安定化です。この骨盤底筋群が機能不全を起こすと尿失禁を起こす可能性があります。

尿失禁を防げる!骨盤底筋群を鍛えるムーラバンダ

尿失禁というのは産後の女性や高齢者の女性に起こりやすい現象です。原因のひとつとして考えられるのは骨盤底筋群の機能不全による腹圧の低下。

女性の場合、妊娠中は胎児や胎盤、羊水がある為、妊婦の方は相当な重さを支えないといけません。なおかつ妊娠中の身体の変化で自身のアライメントも変化します。

そうした中で骨盤底筋群は胎児などを支えるために下からずっと支えています。そうなるとどうしても骨盤底筋群や骨盤内の靭帯は伸長され続けるため緩みが生じ、かつ難産の場合だと出産時に骨盤底筋群を痛めてしまうこともあるそうです。

緩んだ骨盤底筋群や靭帯は産後から徐々に治っていくのですが、中には上手く骨盤底筋群が機能せず、腹圧が弱くなっている人もいます。そうすると、例えば咳をした時に、腹圧をコントロールできず尿失禁が生じてしまいます。

また本来、骨盤内の内臓を下から支持する役割のある骨盤底筋群が弱くなると、内臓が下方へ押し下げられ、膀胱を刺激。尿失禁をさらに悪化させる原因になります。産後の女性の場合、骨盤底筋群で内臓が支持できてないことにより「臓器脱」になる可能性もあります。

このように骨盤底筋群は排泄をコントロールしたり内臓を支える機能があるのです。

以上のことから、特に産後の女性や高齢者の女性にとってムーラバンダで骨盤底筋群の機能を高めることが有効なことが、お分かりいただけるかと思います。

体幹の安定化も期待できる!

戦士のポーズ1をしている女性
体幹の安定化も期待できる!

さらに、体幹の安定化においても、ムーラバンダは非常に有効です。

骨盤底筋群は拮抗する横隔膜と協調して働きます。横隔膜と協調して働くタイミングは呼吸です。吸気時には横隔膜が下方に下がり、骨盤底筋群もそれに合わせて下方に下がります。この時、胸郭は膨らみます。呼気時には横隔膜が上方に上がり、骨盤底筋群もそれに合わせて上方に上がります。胸郭はしぼみます。

このように横隔膜と協調することで腹圧のコントロールを行います。腹横筋と同様に動作を行う際に先行して骨盤庭筋群が収縮することで動作を安定させるのです。

特に骨盤底筋群は遅筋繊維が約70%といわれています。遅筋繊維とは持久走など持続的に身体を活動させる筋肉のことです。なので持続的に良い姿勢を保つには普段から収縮する練習を行い、無意識化でも骨盤底筋群が収縮して体幹を安定させる必要があります。

臨床現場における骨盤底筋群のエクササイズ

臨床現場において機能不全を起こした骨盤底筋群のエクササイズのやり方があります。まず臥位になり両坐骨を中心に引き寄せ、骨盤底を吸い上げるように指示します。骨盤底筋群の収縮が行えるようになったら座位になります。

同じように坐骨を中心に引き寄せて骨盤から頭頂部までの軸を上下に伸ばすようにします。この時に骨盤底筋群の収縮が弱くならないように注意するのがポイントです。

この方法ってムーラバンダと似ていますよね?

座位で行う場合は、坐骨にしっかり体重を乗せて骨盤を前傾、後傾の中間位にして骨盤を立てます。実はこの骨盤が立った姿勢こそ、骨盤底筋群が働きやすいポジションなのです。骨盤底筋群を意識しながらバンダをすることで骨盤底筋群の機能は向上していくはずです。

今回はムーラバンダについて骨盤底筋群の話を交えて解説しました。

これまで3つのバンダについて解説しましたが、どれも解剖学の点から見ても非常に有効で効果的です。これを何千年も前から行っていたと思うとホントにヨガってすごいなと思えます。

監修理学療法士 奥悠輝

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