クリヤヨガ(行動のヨガ)とは?ヨガ実践者が日常生活で行うべき実践

クリヤヨガ(行動のヨガ)とは?ヨガ実践者が日常生活で行うべき実践

“ヨガスートラ”と言えば、あまり内容を知らない方でも、実践方法として八支則が説明されていることをご存知の方は多いのでは?

ヨガスートラを読むと、八支則の前に日常で行うべきヨガ(クリヤヨガ)についても書かれていますが、そちらは見落とされがちです。今回は、日常のヨガであるクリヤヨガとは何か?また、その実践方法についてご紹介します。

日常で行うべきクリヤヨガとは?内容と目的

“クリヤヨガ”とは、ヨガ実践者が日常的に行うべき行為のことです。ヨガの実践と併せて、日常から自己鍛錬のクリヤヨガを行うことで、よりヨガの達成がスムーズになると考えられています。

通常私たちの意識には不純さが含まれているので、ヨガの達成はとても困難とされます。クリヤヨガで精神的な不純さを取り除くことで、サマディへの到達が安易なものとなります。

ヨガスートラで紹介されている3つのクリヤヨガ

タパス(熱業)・スヴァーディヤーヤ(読誦)・イシュワラ・プラニダーナ(神への祈念)の3つがクリヤヨガである。(ヨガスートラ2章1節)

ヨガスートラで書かれているクリヤヨガは3つです。

ヨガスートラで書かれているクリヤヨガは3つ
ヨガスートラで書かれているクリヤヨガは3つ

  • タパス(熱業):熱をもって自分を浄化するための行為
  • スヴァーディヤーヤ(読誦):聖典を読むこと、もしくはマントラを唱えること
  • イシュワラ・プラニダーナ(神への祈念):全ての行為を神に捧げること

3つのクリヤヨガの実践から得られる効果

3つは八支則の中のニヤマ(勧戒)にも属しています。それぞれの詳細は後ほどご説明しますが、このクリヤヨガの3つを行うとどうなるのでしょうか。

クリヤヨガの目的は、サマディ(三昧)を実現してクレーシャ(苦)を弱めることである。(ヨガスートラ2章2節)

クリヤヨガを実践することによって不純性が破壊され、”クレーシャ(苦)”が弱まります。この1文のもう一つの大事な意味は、サマディの実現によって私たちの苦は破壊されるということです。

”クレーシャ”とは?「苦」だと認識されにくい苦?

“クレーシャ”とは、無知、自我意識、貪愛、険悪、死への恐怖です。

これらは個人にとっての苦悩ですが、物質的な考えをする人間の思考では「苦」だと認識されていない場合も多いです。「苦」だと認識されにくいクレーシャに関して、ヨガスートラでは詳しく「クレーシャ(苦)とは何か」を説明しています。ここではそれぞれを簡単に書いておきますね。

無知

無知とは、”プルシャ(真我)”を正しく理解しないことです。他の4つのクレーシャは無知によって発生します。

自己の本性であるプルシャと、”プラクリティ(物質根本原理)”によって作り出された外的な自己、この2つが別物だと認識できないことは、個にとって最も大きなクレーシャであり、プルシャの解放こそがヨガの目的です。

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自我意識

本来別物であるプルシャと、プラクリティによって作り出された”ブッディ(覚)”が別物だと認識できないことが自我意識です。

純粋なプルシャは純粋な「見る者」なのですが、プラクリティの生み出す”マナス(心)”を「自分のもの」と勘違いした時に「私は怒っている」、「私は悲しんでいる」などの勘違いをします。

貪愛

執着と結びついた愛は、常に渇望感を生むクレーシャとなります。

嫌悪

嫌悪とは、不幸や不幸を生みだす対象への痛みや怒りの感情です。嫌悪と貪愛はとても低次の心理状態であり、戦争・分裂・不和・殺人などの原因となります。

死への恐怖

死への恐怖は、知識ある賢人にさえ存在すると言われます。死への恐怖は前世での死の恐怖が残っていることで存在していると考えられています。

サマディとは、本来別々の存在であるプルシャとプラクリティが切り離された状態です。そのため、サマディに到達することによって、上記のクレーシャ(苦)の起こる原因は全て消滅すると考えられています。

では、3つのクリヤヨガのそれぞれの実践方法と効果に関してご説明します。

3つのクリヤヨガの実践方法と効果

前述の通り、3つのクリヤヨガはニヤマの中にも含まれ、自分自身の内側を浄化するための鍛錬です。それぞれの実践方法と効果についてご説明します。

タパス:熱によって不純物を燃やす行為

タパスは長年「苦行」として訳されていました。実際にインドでは、断食などの厳しい修業方法をタパスと呼ぶことが一般的です。

しかし、本来のタパスは熱によって不純物を燃やす行為を表しています。火は汚れを燃やし尽くす最も優れた浄化具であり、私たちの霊性を純粋で清浄で輝くものにします。

タパスの実践方法

ヨガ実践者にとって、精神を浄化する火とは、実践者が自分自身に約束したことを成す強い意志です。例えば断食を例にとると、断食を行っている期間には五感のあらゆる感覚が食べ物に対して敏感になります。

  • 視覚:ネットなどで見る食べ物のコマーシャルに敏感になる
  • 聴覚:食べ物の話をしている人がいると、通常以上に気になる
  • 嗅覚:美味しそうな良い匂いに敏感になる
  • 味覚・触覚:視覚などの情報から、より鮮明に味や触感を想像する

タパスとは精神的な強さで五感をコントロールする技術です。上記のような情報から思い浮かべてしまう感覚さえも鎮めることが必要になります。

また、一定期間言葉を話さないタパスであれば、物理的に声を発しないだけではなく、心の中の声も鎮めるトレーニングをします。

自分自身の意志で、自分の感覚器官をコントロールするための鍛錬を行うこと。その結果、強い意志が強い浄化の火となり、自分自身の不浄さを取り除いてくれます。

スヴァーディヤーヤ(読誦):高次の魂と一体になる実践

スヴァーディヤーヤは聖典の読誦と、マントラなどを唱える行為も含みます。

聖典は、高い次元の霊性に到達した聖者によって書かれた書物です。物質的な事柄よりも高度な知識が書かれているとされます。

スヴァーディヤーヤは聖者たちとの消極的な接触方法です。実際に聖者に会うことが出来ない実践者であっても、聖典の著者である聖者たちと内面で繋がることが出来ます。

スヴァーディヤーヤの実践方法

最も一般的なものは、ヨガスートラやバガヴァッド・ギータなどの聖典を読むことです。古い経典ほど、言葉が難しくて読みにくいかもしれませんが、繰り返し読み、解説を読むことで、少しずつ各経典に書かれた著者の思いが伝わってくるようになります。

スヴァーディヤーヤによって瞑想も深まります。経典を読み、作者である聖者と内的に触れることで、より高次の精神状態に至ることが出来るからです。

スヴァーディヤーヤの簡単な実践方法で、マントラを繰り返し唱える実践(ジャパ)も有効です。オームの復唱は最も簡単なスヴァーディヤーヤの実践です。

イシュワラ・プラニダーナ(神への祈念):サマディへの到達

イシュワラ・プラニダーナによってサマディの実現が可能です。ヨガスートラの中で出てくる神とは、イシュワラと呼ばれる特別で最も純粋なプルシャです。

ヨガと宗教の違い:ヨガ・スートラが唱えるイシュワラ(自在神)とは?

イシュワラ・プラニダーナには様々な解釈があります。バガヴァッド・ギータにおけるカルマヨガと同様に、全ての行為を完全に神への授け物として行うという解釈もありますし、バクティヨガ(神への信愛のヨガ)と同様の意味で解釈する先生もいます。

ヨガ的な考え方では、神と意識を一体化させることは深い瞑想を助ける行為です。完全なる神への祈念の状態は、サマディにとって好ましい集中状態にあり、瞑想を安易なものにすると言われます。

また全ての行為を神に捧げ、その結果への執着を放棄することは、カルマから解放された解脱の状態へと繋がっています。

現代社会の中でクリヤヨガの実践方法

ヨガスートラでのクリヤヨガはとても精神的なアプローチです。(ハタヨガの場合は、これらの精神的なアプローチに加えて、肉体的な浄化方法も含めてクリヤヨガと呼びます。)

自分の精神を鍛錬するクリヤヨガは、生活に取り入れやすいヨガでもあります。

自分の精神を鍛錬するクリヤヨガは、生活に取り入れやすい
自分の精神を鍛錬するクリヤヨガは、生活に取り入れやすい

例えばタパスは自分自身への誓いなので、自身で自分自身のタパスを決めることが出来ます。「毎日瞑想をする」、「毎朝ヨガをする」などの習慣も、タパスの一環として行うことが出来ます。

大切なことは、決心したことをちゃんと行うことです。習慣化するプロセスの中では、出来ない様々な言い訳が浮かぶことがありますが、その言い訳に負けずに自分への約束を果たすことが自己の鍛錬となります。

ヨガはヨガマットの上に立っている時だけが実践ではありません。日々の生活の中にクリヤヨガを取り入れたら、さらに自身の成長を感じることが出来るようになります。

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