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ヨガも「選択肢のひとつ」になればいい

検索ワードを入り口に、ヨガ界の「常識」について、産婦人科医の高尾美穂先生を直撃するインタビュー企画。前編の「骨盤」「生理」に続いて、後編では「女性ホルモン」「便秘」にまつわるアレコレや、ヨガと西洋医学の関係についてうかがいます!

 

女性ホルモン――ヨガで「増やせる」ってホント?

――ヨガでよく言われる「ホルモンバランスを整えます」とか「女性ホルモンを活性化」というのはどうでしょうか? 検索でもトップにくるのは「増やそう!」「アップ術」といった内容ですが……。

まずね、女性ホルモンというのは増えません(きっぱり)。これねぇ、本っ当に間違った情報が多いんだけれど、女性ホルモンは「減らすことをしない」という対策しかできないの。増やせないの!

――えっ! でも本当にさまざまな媒体で「アップ術」とか書いてありますよ?

増えないの(きっぱり)。でも女性ホルモンを減らしてしまう、言い換えれば「閉経を早める」原因はあります。代表的なのは喫煙の影響ね。卵巣から分泌されるエストロゲンというホルモンが女性にとって大切なのは確か。エストロゲンがちゃんと分泌されるために卵巣への血流をよく保っておくことは大事です。

そのためには、大動脈の血流をよくしておく、自律神経を乱さない、コレステロール値を下げすぎないといったことが大切になってくるの。だから血行や自律神経の面ではヨガが有効と言えます。でも、積極的に「増やす」ということはそもそも不可能なの。

女性ホルモンの「ベストなバランス」

takao

――女性ホルモンのバランスが崩れるとイライラや生理不順、生理痛につながる。ヨガでそのバランスを整えるといいという説もあるようですが?

そもそもホルモンの値の「ベストなバランス」なんて説明できないもの。生理前のイライラはむしろ、女性ホルモンがちゃんと分泌されている状態だから起こるもの。更年期のイライラはエストロゲンの減少によって起こるんだけど、その年代でエストロゲンが減少するのはむしろ正常なので、バランスが崩れているとは言えないわけ。

「バランスが崩れる」という言葉であいまいな知識をごまかすから、「絶対に正しいバランスがある」という誤解が起こってしまうんでしょうね。ただ、ヨガを生活習慣として取り入れることで、規則正しい生活になったり自律神経が乱れにくくなったりして、長い目で見れば女性ホルモンを減らしにくくなる、とは言えると思います。

 

便秘――腸は外側からアプローチしやすい。でも……?

――「便秘」の解消もヨガの効果としてよく挙げられます。つい最近も「腸ヨガ」という便秘対策のヨガがTVで紹介された影響か、「便秘 ヨガ」で検索すると次のような内容が上位に挙がっています。
・腹式呼吸で腸を温め活性化し、便秘解消
・「ガス抜きのポーズ」などでお腹を刺激するといい
・腸のはたらきをよくすれば代謝アップ、リンパの流れもよくなる

腸は骨に囲まれていない場所に位置しているので、肝臓や胃など他の臓器とくらべて確かに外側からアプローチしやすい臓器です。それは事実。でも、腸の構造を理解してピンポイントで圧をかけないと、正直それほど効果はないと思います。たとえばガス抜きのポーズ。確かに排便をうながす効果はあるけど、それはよくヨガで説明されるように「お腹に圧がかかる」のが大きな理由じゃないの。直腸の肛門に近いところの角度がいちばん便を出しやすい、ストレートな角度になるポーズだからポーズ中にガスが出たりするわけ。

「腸」は西洋医学でも実証途上

そもそも人間の身体って、道具を使わず屈曲しただけではそんなに圧をかけられない。アシュタンガで自分のかかとを下腹にぐっと入れて前屈するポーズがあるじゃない? ああいうふうに何かをぐっと差し込むような刺激は、確かに腸への圧になるから便秘にも効果はあるでしょうね。ひねりのポーズも同様で、確かに多少の圧はかかる。でも何かを差し込むほどの圧にはならないです。

――効果はあるにしても、理由がまちがっているんですね。

そして腸は腹式呼吸では温まらないでしょう。温まる=はたらきがよくなるというわけでもないし。リンパの流れも……遠い因果関係はないとはいえない、というレベルかな。そもそも腸に関しては、西洋医学の研究でも「腸内環境にいくつかのパターンがある」ということがようやく研究レベルでわかってきた程度なんです。それぞれのパターンにどんな薬や食品が有効かはまだまだ実証の途上

「誰にでも効果がある」といえるなら、医療の世界で保険診療が適用される治療方法として採用されるはずなのよ。だからそうじゃない「効果」については、「効く人もいれば効かない人もいるよ」というふうに伝えないといけない、と私は思います。

 

「補完医療」としてのヨガの可能性

takao

――今の流れから、ヨガと医療の関係について先生のご意見をうかがえますか?

広い視点で考えてみると、アメリカではこの10年くらい、栄養補助食品やヨガなど伝統療法を含めた「補完代替医療」の可能性について、ものすごく多くの予算をかけて研究してきたんです。その結果、今は「代替」ではなく「補完医療」として考えようということになっています。
つまり、「代替」として西洋医学にとって替わるくらいの効果を実証することはできなかったの。そうではなくて、西洋医学を「補う」方向で考えようってことね。日本はまだ「代替」を模索している感じだけど、いずれアメリカのようになってくるんじゃないかな。

私はヨガも含めて、そういう「補完医療」に相当するものがもっと出てきたらいいなと思っています。実際、ヨガが身体に与える効果として有効なデータも出てきています。でもたぶんこれから、現在ある有効とするデータに対するネガティブな研究結果もデータがたくさん出てくるはず。

というのも、医療を含めた科学的な研究っていうのは、まず「有効かも?」というデータが出るのね。続いて研究する人たちは、そのデータが「疑わしい」という前提で研究します。それでたくさんの「疑わしい」というネガティブなデータも出るんだけど、それでもなお「確からしい」という結果が繰り返し出る、そこで初めて「有効」と実証されるわけです。

 

共通言語を身につければ、ヨガの可能性はもっと広がる!

――日本での医療的なヨガの研究は、今は3段階のうちステップ1ということですね。これからステップ2に入るとしたら、「効果のほどはあやしい」というデータもたくさん出てくるのが当然、と。

そのためにも、最初の「有効かも?」のデータが信頼できるものでないとダメよね。ヨガ界だけで通じる説明や、一部の団体の中だけでとったデータではなくて、医学的に再現性の高いものでないと。

――それには医療と共存する姿勢が必要そうですね。
takao

ヨガの良さを全て医学的に明確にする必要はないと思っています。たとえばチャクラやバンダなんて、医学的に証明することは難しい概念でしょう。それはそれでいいんですよ。ただ、身体を扱う分野ではすでに共通認識として前提になっている知識は、ヨガ界も持ったほうがいいと思う。共通認識というのは、要するに医科学や解剖学で解明されている身体のしくみ。共通認識、共通した言語がないと、他の世界のプロフェッショナルと話ができないですよね。

医学では解明しきれない部分でヨガが有効な面はたくさんあると思うの。だから、選択のひとつとしてヨガを選ぶ人が増えてくれたらいいですよね。たとえば生理痛が重い人なら、適切に薬を使って、ヨガもしてみて、というふうにね。ヨガだけすればいい、医者にさえかかればいいというように一元化しようとしないで、選択肢が増えればみんなもっと楽に生きられると思うんです。

 

まとめ

超ハードスケジュールの中、インタビューにお時間をとってくださった高尾先生。正直、「こういう素人くさい質問はうんざりするほど受けているだろうに……」と申し訳ない気持ちもあったのですが、「ここまでは正しいね」「うん、気持ちはわかる」など、1つ1つ親身に丁寧に答えてくださいました。

さらにすごいのは、お話し中に慌ただしさや疲れをまったく感じさせないところ。その優しさと温かさ、冴えた知性、軽やかなのに安心する存在感、それらを支えるぶれない身体……まさに先生の存在そのものがヨガ!と感動した本間なのでした。

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