記事の項目
みなさんは、猿の姿をした神様ハヌマーンをご存知ですか。
多くのヨガスタジオでは、象の頭部を持つガネーシャ神が飾られているように、インド神話には様々な動物が登場します。中でも、力強さと献身さの両方を持つハヌマーンは、人生の模範になる存在として尊敬を集めています。
今回は、ヨガとも関係の深いインド神話のハヌマーン神にまつわる教えについてみていきましょう。
猿の神様ハヌマーンはどんな神?

インド神話の中でもとりわけ人気の高い神様の一人であるハヌマーンは、『ラーマーヤナ』とよばれる叙事詩に登場する神様です。父親は風神ヴァーユ、母親は天女アンジャナーです。
風の子供であるハヌマーンは空を飛ぶことができ、猿であるハヌマーンの体は変幻自在です。力強さ、しなやかさ、勇敢さ、忠誠心、優しさを備えているハヌマーンは、インドの人々にとって、恐れや不安を取り除き、力強さと人生を切り開く力を与えてくれる存在です。
ヨガのアーサナで、アンジャネーヤ・アーサナというものがありますが、アンジャネーヤはアンジャナーの息子という意味があります。
また、日本でも人気の高い最遊記の孫悟空は、ハヌマーンがモデルだと言われています。
『ラーマーヤナ』でのハヌマーン
ハヌマーンは、インド2大叙事詩のひとつである『ラーマーヤナ』に登場します。
ハヌマーンは、ヴィシュヌ神の化身であるラーマ王子の家臣として仕えます。ハヌマーンは、ラーマ王子と妻シータ姫への献身を示すために、自分の心臓を開きます。そこには、2人の姿が刻まれていました。ハヌマーンの純粋な忠誠心と愛を表す有名なエピソードです。
また、シータ姫が敵であるラーヴァナ王に拐われた時、シータ姫を救出するためにラーマ王子と共に戦います。シータ姫が海を超えたランカー島にいると分かった時には巨大化して空を飛び、ランカー島にいるシーマ姫を見つけた後は、ラーマ王子とハヌマーン率いる猿軍は共同してラーヴァナ王と戦います。
この戦いは、ダルマ(正義)がアダルマ(不正)に勝利した話として語り継がれています。
ハヌマーンから学ぶヨガ的教え

ハヌマーンは、ヨガの教えにも深く関わっていると言われています。
ハヌマーンの示すヨガの教え
アヒムサー(非暴力):ハヌマーンは猿の戦士ですが、自分のエゴのための戦いは行いません。愛する人のためにのみ戦う、優しさがあります。また、人の苦しみを示すラーヴァナ王に勝利する戦いは、自分の内側の弱さに打ち勝つことを示しています。
非暴力的な生き方は、自分の内側に生まれる弱さや恐れとの戦いです。強い心を持った人こそ、本当の優しさを知ることができるのですね。
サティヤ(真実):ハヌマーンのラーマ夫婦への忠誠心は嘘偽りのない純粋なものであり、それを示すために心臓を開きます。
サントーシャ(知足):ハヌマーンは猿族の王でありながら、自分自身の身分に自惚れることもなければ、さらなる富や名声を強欲に求めることもありません。自分自身に与えられたものに感謝して満足することは、ヨガのサントーシャに繋がります。
タパス(苦行)&ブラフマチャリヤ(禁欲): ハヌマーンは禁欲の誓いを立て、生涯独身であったことで知られています。ヨガのブラフマチャリヤ(禁欲)では、性的な欲望を制御し、オージャス(生命力)を修業によって最大限に磨くことで、自分の内側の大きな能力を引き出します。
ハヌマーンが自身の潜在能力に気がつき、体を自在に変化させ、空を飛ぶことができたのは、厳格なタパスとブラフマチャリヤの功績です。
ハヌマーンから学ぶバクティ・ヨガとカルマ・ヨガ

ハヌマーンは、とにかくラーマ王子への忠誠心が強いことで知られています。自分自身の全てを「ラーマのしもべである」と差し出します。
ラーマが王に即位した時に、ハヌマーンに褒美を与えようとします。しかし、ハヌマーンは何も受け取らず言いました。「私はただ、あなたの側に使えることだけを望みます」と。
自分にとっての一番の幸せは、最も尊敬する人のために尽くすことであり、自分はすでに幸せだと知っているハヌマーンは最高の奉仕者(バクタ)として知られています。
奉仕者(バクタ)という言葉は、クリシュナの教えを解いた『バガヴァッド・ギーター』の中でも繰り返し出てきます。神であるクリシュナは、自分自身へのバクティ(信愛)が人々を幸福に導くと知り、「私に心を捧げる者は救われる」と説きます。
私たちは、大きな愛に包まれている時に、最も純粋な幸福に気がつくことができます。
自分自身へのエゴに溺れることなく、バクティ(信愛)のみを内側に抱いて生きることができれば、どんな迷いも消えていきます。
また、自分のためではない行動、カルマ・ヨガ(行為のヨガ)も、私たちの人生を豊かにしてくれる教えです。カルマ・ヨガは結果を求めない純粋な行為です。
シータ姫を探すために一人でランカー島に飛んだ時、ハヌマーンにはどのような計算も恐れもありませんでした。純粋に「これをすべき」と信じた正しい行動に打ち込むことが、私たちを成長させてくれます。
私たちが日常で行う多くの行動には目的があり、打算に満ちています。ヨガの練習をしている時でさえ、「このアーサナはヒップラインに効くかな」「どれくらい練習したらハンドスタンドができるかな」と、結果に執着していることもあるでしょう。
結果への執着は、強欲さを生み、人々を束縛して苦しみの原因となります。
ひたむきに正しいことを遂行するハヌマーンの姿は、生き方をヨガにするカルマ・ヨガそのものです。
ハヌマーンのアーサナで力強さとしなやかさを養う

力強さとしなやかさの両方を備えるハヌマーンの名前が付けられたアーサナを紹介します。
ハヌマーン・アーサナ
足を前後に開脚するハヌマーン・アーサナ(猿神のポーズ)は、とても有名なポーズですね。
股関節の柔軟性と血流の改善により、身体能力が高まると言われています。猿のような身軽さが手に入るといいですね。
ダイナミックな開脚は、練習の段階で、強張る筋肉と、早く開脚を深めたいエゴとの間で葛藤が起きます。身体が感じる不安や恐怖、緊張に打ち勝つ勇敢さが必要です。どんな状況でも呼吸を深くし、しなやかさを保たなくてはいけません。しかし、ポーズの完成を焦って、自分の許容量を超えた挑戦をすると、痛みや怪我の原因となります。
静かに心と体の声に耳を傾けながら練習を深めることが、内側の強さに繋がります。
また、上半身は前傾することなく、上方にまっすぐ伸びていきます。そして、両手を頭上で合唱します。まっすぐと天に向かって合唱する姿は、バクティそのものです。
アンジャネーヤ・アーサナ
ハヌマーン・アーサナとよく似ていますが、前に出した脚の膝を曲げ、ランジの姿勢で行うのがアンジャネーヤ・アーサナです。
このアーサナは、ハヌマーンの子供時代の神話に関係します。幼いハヌマーンは、太陽を果物と勘違いして大きくジャンプして太陽を掴んでしまったので、大地は真っ暗になってしまいました。それに怒ったインドラ神は、ハヌマーンを撃退してしまいました。しかし、今度はハヌマーンの父ヴァーユ(風神)が怒り、世界中の風を止めてしまいます。
大地の生物が苦しむ姿を見たブラフマー神とシヴァ神がヴァーユをなだめ、ハヌマーンを不死身にすることで赦しを得ました。
アンジャネーヤ・アーサナは、幼少期のハヌマーンが太陽に向かって高くジャンプする時の姿勢を表しています。全体のしなやかさと、下半身の力強さの両方が必要です。
小猿が無邪気に飛び回っただけで、大地から光が奪われたり風が奪われたりと、インド神話はとてもスケールが大きいですね。
神話でもっと面白くなるヨガ
今回は、インドの神様ハヌマーンとヨガについて紹介しました。
ヨガのポーズの名前の由来にもなっているので、小話を知っているだけでも練習がさらに面白くなりますね。
ヨガを練習している方は、インドの神様について勉強してみるのもおすすめです。








![Dr.マヘシュ直接指導![症状別]ヨガセラピー体験クラス](https://shop.yoga-gene.com/wp-content/uploads/2024/11/mahesh90-top-800x515_new-520x335.jpg)


![[新感覚!]瞑想状態を体験する。ケンハラクマ 瞑想集中講座](https://shop.yoga-gene.com/wp-content/uploads/2023/04/kenharakuma-meditationWS-1-520x335.jpg)


