インドでヨガ修行 〜初めてのアシュラム体験 at シヴァナンダヨガアシュラム〜

インドでヨガ修行 〜初めてのアシュラム体験 at シヴァナンダヨガアシュラム〜

インドでのヨガ修行

インド ケララ州のキダンガンパランブ・スリー・ブベーンズワリ・テンプル
インド ケララ州のキダンガンパランブ・スリー・ブベーンズワリ・テンプル

「本場のヨガを学びたい!」

私の「世界一周ヨガ旅」において、インドは欠かせない目的地でした。

インドでは、日本のように時間制のスタジオでレッスンを受けるスタイルよりも、アシュラム(道場)に泊まり込みで修行をするスタイルが一般的です。そこで、今回の旅で私が選んだのは、南インド・ケララ州にあるシヴァナンダヨガアシュラム。ここで2週間滞在し、本格的なヨガの練習に取り組むことにしました。

このアシュラムを選んだ理由のひとつは、1日のスケジュールにカルマヨガの時間が組み込まれている点でした。カルマヨガとは、ゴミ拾いや配膳、掃除などの奉仕を通して自己を磨いていく、いわば“奉仕のヨガ”です。
私は、世界中から集まったヨガ愛好者たちと一緒にカルマヨガに取り組めることに強く惹かれました。また、ヨガプログラムも非常に充実していて、初めてのアシュラム生活にも適していると感じました。実際、現地でヨガに触れてみて、「インドにおけるヨガは“学ぶ”というより、“修行する”ものだ」と強く感じました。

今回は、私が体験したシヴァナンダヨガアシュラムでのリアルな生活を紹介します。

シヴァナンダヨガアシュラムの紹介

シヴァナンダヨガアシュラム
シヴァナンダヨガアシュラム

シヴァナンダヨガアシュラムは、ケララ州の州都であるトリヴァンドラム駅から車で約1時間半〜2時間。山あいの自然に囲まれた場所にあります。

私がこれまでに訪れた他のインドのアシュラムと比べても、ここは特に自然が豊かで静寂に満ちており、まるで森の中の修道院のような雰囲気が印象的でした。中へ足を踏み入れると、すぐに目に飛び込んでくるのは大きなヨガホールとその周囲を取り囲む緑豊かな木々。自然と心が落ち着く空間が広がっています。

チェックイン手続きを済ませると、自分用の食器類と蚊帳を受け取り、スタッフに案内されて宿泊部屋へ向かいました。私は、費用を抑えたかったことと友達を作りたかったことから、一番安価なドミトリーを予約していました。
室内はカーテンなどの仕切りはなく、プライベートはあまり守られていませんでした。しかし、共同生活ならではの面白さが上回り、プライベートの有無に関しては、それほど気になりませんでした。

トイレやシャワーは共用でしたが、カルマヨガの実践として掃除当番が毎日入るため、常に清潔に保たれていたのがとても印象的でした。さらに、水シャワーしかない場所も多いインドにおいて、温かいお湯を汲める蛇口があったのは本当にありがたかったです。

「インドのアシュラムは過酷な場所なのでは」と想像していた私は、予想外の快適さに少し拍子抜けしつつも、ほっとしたのを覚えています。そして何より、「ついに本場インドでヨガの修行ができる」という思いに胸が高鳴っていました。

アシュラムでのルール

滞在中の宿泊部屋
滞在中の宿泊部屋

シヴァナンダヨガアシュラムには、いくつかのルールがあります。その中でも印象に残ったものを5つ紹介します。

① カルマヨガへの参加は必須
到着の翌日には、各自のカルマヨガの役割が割り当てられます。内容は、掃除や食事の配膳、ティータイムの準備、イベント装飾など多岐にわたります。希望を出せるため、私はトイレ掃除を選びました。

② 原則、外出は禁止(毎週金曜を除く)
ヨガに集中するために、金曜日以外の外出は避けるように指導されます。そのかわり、金曜日になるとみんなが楽しそうに外出していく様子が微笑ましく、私も一緒に街に出ました。とはいえ、近くの湖にあるカフェでコーヒーを飲んで過ごす程度で、アシュラム内の時間とあまり変わらなかったのはご愛嬌です(笑)。

③ 酒・タバコ・ドラッグ・肉・魚・卵は禁止
アシュラムの食堂およびカフェでは完全なベジタリアン食が提供されているため、このルールを守ることは難しくありませんでした。

④ 握手や物の受け渡しは右手で行う
インドでは左手が不浄とされているため、握手や物の受け渡しは右手で行うのがマナーです。慣れないうちは、つい左手を出しそうになることもありました。

⑤ 露出の多い服装は不可
ヨガウェアにありがちな肩や脚を出すスタイルは禁止されており、参加者はみな、ルールをしっかり守った服装でヨガに臨んでいました。

参加者の顔ぶれ

一緒に参加した世界中の参加者たち
一緒に参加した世界中の参加者たち

私の体感による参加者の国籍構成は、インド人が3割、ヨーロッパからの参加者が5割、アジア圏から1割、その他が1割といった印象でした。
「インドにあるのに、インド人よりもヨーロッパ人が多いなんて」と驚きましたが、ドイツやフランス、イギリスといった国々からの参加者が多く、ヨーロッパのヨガ熱を感じました。

参加者の経験も様々で、ヨガ未経験の人もいれば、長年指導を続けてきたベテランインストラクターもいました。滞在期間も3日だけの人から、数ヶ月単位で滞在し、まるで“実家”のようにくつろいでいる人までいて、非常に幅広い層の人たちが集まっていました。

ヨガの先生たち

指導してくれる先生たちも、国際色豊かでした。インド人が4割、ヨーロッパ出身者が4割、その他が2割といったところでしょうか。
「インドなのに、外国人の先生が多いんだ」と最初は驚きましたが、どの先生も真摯にシヴァナンダヨガを学び、実践し、伝えようとしている姿勢がとても印象的でした。国籍に関係なく、誠実で温かい先生ばかりでした。

1日のスケジュール

1日のスケジュール
1日のスケジュール

アシュラムでの1日は、以下のようなスケジュールで進みます。

5:20 起床(ベルで起こされる)
6:00 サットサンガ(瞑想・チャンティング)
7:30 ティータイム(紅茶と軽食)
8:00 アーサナクラス(初級・上級から選択)
10:00 朝食
11:00 カルマヨガ
12:00 自由講座(瞑想・マントラなど)
12:30 アーサナ練習(自由参加)
13:30 ティータイム(紅茶とフルーツ)
14:00 講義(ヨガ哲学など)
15:30 アーサナクラス(午後)
18:00 夕食
20:00 サットサンガ(夜の瞑想とチャンティング)
22:30 消灯

自由度があるとはいえ、1日の予定がぎっしりで、のんびりする時間はほとんどありませんでした。朝の早起きが心配でしたが、スタッフが部屋までベルを持って起こしに来てくれるため、寝坊する人はいませんでした(笑)。

最初の数日間は、すべてのプログラムに出席しようと頑張っていたのですが、途中で体調を崩してしまい、仲間たちに「無理せず自分のペースで」とアドバイスをもらいました。
その言葉に救われて一度休養を取り、無事に回復。何事も“頑張りすぎないこと”の大切さを学びました。

食事について

ベジタリアンの食事
ベジタリアンの食事

アシュラムでは、1日2回(朝・夕)ベジタリアンの食事が提供されます。シンプルながらも味は美味しく、毎回おかわりもできるので満足感がありました。そんな食事の時間にも、印象的だったことが2つあります。

1つ目は、食事中の会話が禁止されていること。
これは、「食事に集中することで、瞑想状態を保ち、消化にエネルギーを集中させる」という目的があるそうです。

2つ目は、配膳がアシュラム参加者によって行われること。
これも、カルマヨガの一環です。仲間からご飯をよそってもらうことで、自然と感謝の気持ちが湧いてくる素敵な雰囲気がありました。

アーサナクラスの特徴

シヴァナンダヨガアシュラムでは、初級クラスと上級クラスの2種類のアーサナクラスが用意されており、参加者は自分のレベルや体調に合わせて選ぶことができます。クラスは1回あたり2時間(午後の初級クラスは1時間30分)と、しっかりと練習できるボリュームがありました。

初級クラスは、ヨガが初めての人でも安心して参加できるレベルに設計されており、きつくなったときには自分のペースで休むこともできる柔軟さがありました。私自身も最初は初級クラスからスタートし、少しずつ体と心を慣らしていきました。
一方、上級クラスでは、より難易度の高いポーズや筋力・柔軟性を要するアーサナも登場します。普段からヨガを実践していて、さらに深く練習を積みたい人にとっては、非常にやりがいのある内容です。

授業はすべて英語で行われますが、シヴァナンダヨガは一連の流れがある程度決まっているため、数日参加すると自然と身体が順応し、言語の壁を感じることなくクラスに集中できました。

サットサンガ(瞑想・チャンティング(マントラ)など)

サットサンガとは、サンスクリット語で「真理や純粋なものと共にある」という意味を持つ言葉です。アシュラムでは、毎朝毎晩、全員で瞑想をしたり、キールタン(インド版の讃美歌のようなもの)を歌ったり、アラティという火を使った浄化の儀式を行います。

私はこれまで、マントラやキールタンを本格的に学んだことがなかったため、最初は「これは一体何の意味があるんだろう?」と戸惑いました。しかし、その背景や効果を知るにつれ、「これはとてもパワフルなものなんだ」と、身体が反応し始めるのを感じるようになりました。最終的には、積極的にキールタンやマントラを唱えるようになっていた自分がいました。

サットサンガに参加する中で、「ヨガとはアーサナ(ポーズ)や呼吸法、瞑想だけでなく、もっと多くの要素を含んでいるのだ」と気づいたことが心に深く残っています。

また、週に2回ほど行われるサイレントウォーク(沈黙のウォーキングメディテーション)も印象的でした。これは、誰とも話すことなく自然の中を歩くという、“歩く瞑想”のような時間です。アシュラム生活では日常的に敷地の外に出ることができないため、この時間はとても楽しみなひとときでした。特に、アシュラムの周りにある湖や山の上でのサットサンガの時間は、とても神秘的な空気に囲まれていて感動的でした。

10:印象的な出来事や学び
ヨガアシュラムに2週間滞在して、特に印象に残っている出来事が3つあります。

1つ目は、インド人の身体が思ったより硬かったということです。
子どもの頃からのテレビやゲームの影響で「インド人=身体が柔らかい」というイメージを持っていましたが、実際に私が出会ったインド人の多くは、難しいポーズで苦戦しており、身体も硬い人が多い印象でした。逆に、ヨーロッパ出身の参加者たちは日常的にヨガを実践しているのか、とても身体が柔らかく、スムーズにアーサナをこなしていたことが印象的でした。

2つ目は、シャヴァーサナ(仰向けの休息のポーズ)がとても気持ち良かったことです。
シヴァナンダヨガでは、クラスの最後に十分な時間をとってシャヴァーサナを行います。普段の練習ではここまで丁寧にシャヴァーサナを行うことはなかったため、「これが本当に深いリラックスなんだ」と実感できた貴重な体験でした。

3つ目は、どんな時でもスマイルが大切という教えです。
これは、私がとてもお世話になったナンダララ先生から学んだ教えです。先生のクラスはときに厳しく、ポーズもきついことがありましたが、先生がいつも笑顔で穏やかにリードしてくださったおかげで、自然と前向きに取り組むことができました。そして、頑張ったあとのシャヴァーサナは特に心地よく、深くリラックスすることができました。

ナンダララ先生の「どんな時でもスマイルが大切」という言葉は、日常生活の中でも活かせる教えだと感じています。これからも、その言葉を胸に刻んで日々を過ごしていきたいと思います。

まとめ

初めてのインドでのヨガアシュラム生活には不安もありましたが、素晴らしい先生や仲間に囲まれ、毎日がとても幸せで充実した時間でした。ヨガを通して出会った世界中の仲間たちは、私にとってかけがえのない財産です。

2週間という短い期間ではありましたが、本当に多くのことを学び、感じ、体験することができました。
哲学や倫理観、日々の過ごし方から、神やグル(師)への純粋な敬意まで、アシュラムでの学びは目に見えない部分も大きく関わっています。そして、ヨガの教えは単なる技術ではなく、生き方そのものにまで深く根づいている。そんな気づきを得られたことは、とても大きな学びでした。

もちろん、この2週間でヨガをマスターできたわけではありませんが、“ヨガ漬け”の日々を体験し、「ヨガとは本当に奥が深いものなんだ」と身をもって知ることができました。この気づきは、日本にいてはなかなか得られなかったものであり、実際にインドという地で真剣にヨガと向き合ったからこそ得られたかけがえのない経験です。

ヨガは、単なる身体の練習ではなく、心と向き合い、内面を探求する旅そのものである。そう実感した2週間でした。

「ヨガとは何か?」その問いはおそらくこれからも変わり続け、成長していくことでしょう。そして、その問いを胸に、これからも旅を続けていきたいと思います。

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