言霊は書物理解のツール
私の名前は「トモコ」。これをネットで検索し、読み解くと、例えば「ト」はものごとを広く捉えて分析する、「モ」はマイペースで面倒見がいい、「コ」はまじめで積み上げ型、なんていう結果を拾うことができる。言葉には言霊(ことだま)というエネルギーが宿っているという視点からだ。
思わず納得してしまいそうだが、言霊と言えば古神道。『Yogini』では、古神道と関連する『古事記』についての連載をしているので、監修の小山一夫先生に言霊について聞いてみることに。
「先生、言霊って何ですか? 神様の名前にもいろいろな意味があるんですよね?」
小山先生の最初の言葉は「古神道において言霊は重要な位置づけです。でも、あまりに難しくて、ほとんど誰にも理解されていません」。
え、でも、言霊占いとかありますよね?
言霊は古神道の修行のために必要
「言霊は、神様の働きや宇宙の創成を理解するために必要な一つのツールなんです。古神道の修行は、まず学問――これは専門用語で皇法(こうほう)と言うんですが、その勉強から始まります。その時に言霊を学んで、学問的に正しい理解をしていきます」
「『古事記』は神話ではなく、宇宙の創成を書いている書物。古神道を学ぶ者の教科書なのですが、編纂者の太安万侶(おおのやすまろ)が書いているように、説神話(せつしんり)といって比喩的な表現が多く、解読するのはとても難しいんです」
「『古事記』を読んでいるだけではなかなか理解できなくて、『万葉集』や他の文献もひもといて照らし合わせて、瞑想してやっと少しずつ解読できます」
言霊にも五十音がある
「言霊はそのためのツールで、五十霊あります。でも言霊を勉強したからと言って、『古事記』の意味が解読できるわけではなくて、学問的にその手がかりが得られる程度です」
つまり言霊は、古神道を体系的に学ぶ時、真理を知るための一つの道具ではあるが、使いこなすのは難しいということだ。五十霊というのは、いわゆる五十音。区別するために音を当てるが、本来は、用いる時に口に出して発声したりしないのだとか。
神様の名前を言霊で解釈
「この五十音は神の働きやさまざまな事象を説明する時に利用されることがあります」
例えば、神様の名前も言霊に則ってつけられていることがある。ちなみに『古事記』の冒頭に出てくるアメノミナカヌシノオオカミ(天之御中主大神)は、現代の宇宙研究で言えば、最初に揺らいだ「無」そのもの。ここからビッグバンやインフレーションなどが起こっていく(それも『古事記』には書かれているのだが、神話のようになっているのでわかりにくい)。
この名前を言霊で見てみよう。
「アは万物の原質である五十霊(五十元)、マは真にしておおよそその物の増減なきを云う。即ちアマは霊真の意にして、五十元の至大無涯の大虚空に充満して増減なきを云うなり。又アマは霊円(アマ)なり。円体にして大虚空に充実した物なるが、その虚空の至大にして際涯なきが故に、アマリ、アマルと活用してその等測の及ばざるを云うなり」
名前で宇宙創成の役割がわかる
ということになる。つまり、ものごとの始まりの存在であり、測ることもできないほどの大きさの虚空。無でありながら満ちている、という意味を示しているのだとか。そして、その大神から、カミムスビノカミ(神御産巣日神)とタカミムスビノカミ(高御産巣日神)――すなわち、光と熱が生まれると『古事記』には書かれている。これも、現代科学が提唱している宇宙の創成と合致している。もちろん、これらの二つの名前にも意味があり、言霊というツールを用いると理解が近くなる、というわけだ。
気軽に考えていた言霊だったが、一文字に一つの意味が対応していることでもなく、その深い意味や、他の言葉との掛け合わせで生まれる意味も学ばないと先に進めず、利用できないということのようだ。
言葉のエネルギーの影響力は大きい
神様の名前には意味があり、言い方を変えれば、意味に従って神様の名前が生まれ、それは宇宙創成に従っている。『古事記』を教科書にする古神道では瞑想を修行の主に置き、その瞑想中に宇宙の創成を観察し、それを『古事記』という形に仕上げている(『日本書紀』とは似ているが、まったく意図も意味も異なる)。
言葉の一つひとつのエネルギーを理解していた古代の日本人。それはインドをはじめ、世界中の古民族達のマントラや呪文にも現れているだろう。私達は不用意に言葉を使うことが多いが、そのエネルギーが人に与えるエネルギーはとても大きい。言葉の意味をきちんと考え、責任を持って言葉を発したい。
テキスト=大嶋朋子
出典=『Yogini』Vol.53
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