プラーナヤーマ:ヨガの呼吸法が心身の機能にもたらす影響

プラーナヤーマ:ヨガの呼吸法が心身の機能にもたらす影響

健康の維持・向上、心の安定や美容など、さまざまな目的でヨガをしている方がいらっしゃるかと思いますが、ヨガは海外では医療の補助や代替ケアとしても注目されています。
文献検索サイトに「Yoga」と入力してみると、2025年10月の時点で9,700件を超える研究報告があり、科学的な視点からもヨガの効果が確認されつつあります。
今回は2018年にイタリアから発表された、プラーナヤーマ:ヨガの呼吸法が心身の機能にどのような影響をもたらすかについて検証した研究報告を紹介します。

1.研究の背景

呼吸法を実践する女性
呼吸法を実践する女性

呼吸は精神機能と密接に結びついており、古来より東洋の伝統において、瞑想の実践に不可欠な要素であり、サマーディに到達するためにも重要な役割を担うと考えられています。
呼吸はプラーナとも呼ばれ、単なる呼吸だけでなく、エネルギーの意味も併せ持っています。そのため、ヨガの呼吸法であるプラーナヤーマは、呼気と吸気の比率、頻度、深さを調整することで、呼吸やエネルギーの制御・上昇・拡張を意識的に行う実践法ともいえるでしょう。
長年の実践から、呼吸法は、東洋文化的には瞑想の認知的側面と深く絡み合っていることが広く認められています。西洋文化においても、呼吸のコントロールは、ウェルネス、リラクセーション、ストレスの軽減などの健康状態に有益な効果がもたらされると知られています。
現在の西洋文化において、主に治療的目的に用いられる方法が呼吸の頻度を遅くするペース呼吸法です。ペース呼吸法のようなゆっくりとした呼吸は、リラクセーションや幸福感と関連付けられています。一方で、速い速度の呼吸は、不安やストレスと関連付けられることが多いとされています。

プラーナヤーマに関連するこれまでの研究は、様々な疾病(喘息、高血圧、不眠症、不安症、うつ病など)に対する効果の検証が多く、健康な人を対象とした心理学的・生理学的側面から、心身の機能への効果に焦点を当てた研究は少ないようです。
そこで今回の研究では、健康な人を対象に、1分間に10回未満のゆっくりとした呼吸法が心理的・生理学的にどのような効果をもたらすか確認することを目的としました。

2.研究方法

ゆっくりとした呼吸でリラックスする女性
ゆっくりとした呼吸でリラックスする女性

今回の研究では、18~65歳の健康な人を対象に、1分間に10回未満のゆっくりとした呼吸法が実践された過去の研究報告を文献検索サイトで検索し、効果を確認しました。

呼吸法に関する主な検索キーワードは、以下のとおりです。

  • プラーナヤーマ
  • 呼吸法
  • 呼吸法の実践
  • 調整された、制御された呼吸
  • ゆっくりとした、深い呼吸

また、心肺機能や脳波、自律神経系の働きとの関連性も確認しました。

一次調査の結果、ヒットした2,461件の文献から、対象者の集団に病状がある場合やアーサナや瞑想を組み合わせて行われている場合などを除いて、研究デザインに合う15の報告に絞り込んで効果を確認しました。

3. ゆっくりとした呼吸法の効果

ゆっくりとした呼吸法の主な効果は、交感神経・副交感神経の活動、脳や脊髄を含む中枢神経系の活動、さらに心理状態にまで幅広く及ぶことがわかりました。
交感神経と副交感神経については、それらの働きの変化が促進されることで、心拍にも影響を及ぼし、心血管機能を改善します。また、脳波の測定では、集中した状態や記憶の整理と関係があり、リラックスした状態にみられるアルファ波の増加が認めらました。脳の構造自体にも変化を及ぼすとの研究報告もあり、ヒトの複雑な認知行動や人格形成・社会的なコントロールと関係する前頭葉、運動や感覚・記憶を司る皮下質の活動を増加させることも解明されています。

このように、自律神経系の活動・心血管機能・脳の機能といった体の内側の機能が促進されることによって、さらには行動や心理面にもポジティブな効果が見られる結果につながっています。快適である、リラックス状態にある、心地よい、活力が沸いてくる、注意力が向上するといった、精神的にポジティブな面はより向上し、不安、うつ、怒り、混乱などのネガティブな面は軽減することの報告が多数確認されました。

今回の研究結果から、1分間に10回未満のゆっくりとしたヨガの呼吸法によって、体の内面から機能が促進され、さらには心身の快適さにつながっていることが多数の文献報告からも裏付けられていることが分かりました。

今回参考とした文献のタイトル『How breath control can change your life』は、「呼吸法が人生にどのような効果をもたらすか」、「呼吸法が人生を変えてくれる方法」とも訳すことができるかもしれません。ヨガをしてから体の調子や心の調子が良くなった気がする、人生が明るく、前向きになったなどと感じられる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ヨガの研究報告を見てみると、何となくいいかもと感じられてきたことの理由が、具体的により詳細に解明されつつあり、ヨガの実践から得られる学びや納得感が一段と高まっていきそうです。

参考文献

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