看護師が伝える!感じる力を取り戻す「ヨガと神経」

看護師が伝える!感じる力を取り戻す「ヨガと神経」

ヨガのレッスンで、「肩の力を抜いて」と言われて苦戦したことはありませんか?
私たちの筋肉は、力を入れることも緩めることも全て神経によって制御されています。つまり、無意識に力んでいる部分の力を抜くには、神経系の情報伝達がスムーズでなければいけません。
ヨガは、この神経系の感覚を研ぎ澄ましていくために、とても有効なのです。
自分自身の身体の声に耳を傾ける練習、今日はそんなヨガと神経系についてお話していきます。

「力が抜けない」仕組み

インストラクターがアジャストする様子
インストラクターがアジャストする様子

私たちがポーズをとるとき、筋肉を動かす運動神経だけでなく、身体の中の微細な情報を感じ取る感覚神経も同時に働いています。

筋肉や関節、皮膚、内臓に分布する感覚受容器が、“今、身体がどうなっているか”という情報を脳へ送り続け、その情報を元に、常に身体のバランスを取れるよう調節してくれています。
この感覚が精度を失うと、私たちは正しい姿勢や無理のない力加減がわからなくなり、知らず知らずのうちに過緊張や疲労を溜め込みます。これが、「力を抜いて」に対して苦戦する原因でもあります。

ヨガの練習は、感じて動かすことを意識して繰り返していく「神経のリハビリ」 でもあるのです。

神経の受容感度と自己調整能力

インストラクターがアジャストする様子
インストラクターがアジャストする様子

ヨガでは、「今、ここに意識を向ける」とよく言います。
これは単なるマインドの訓練ではなく、感覚神経を通して神経系全体を“調律”している行為でもあります。ゆっくりとした呼吸や、アーサナの中での静止、微細な動きの観察。
それらはすべて、神経の受容感度を高め、“自分の中にある情報”を正確にキャッチする練習になります。この状態を生理学では 内受容感覚と呼びます。内受容感覚を正確に捉えることで、私たちが本来持つ自己調節能力が改善され、ストレスに対しても有効であると言われています。

しかし、日々の生活の中では、身体からの声はないがしろにされがちです。少し体調が悪くてもやらなければいけないことがある。ゆっくり眠った方が良いけれど、つい携帯の画面を見てしまう。ゆっくり味わう暇もなく、ただ口に入れるだけで食事が終わっていく……
このような生活を続けていると、全身の感覚受容器が脳に送っている様々な信号に気付く事ができず、体調や心が崩れるまで身体の声に対応しない状態を作ってしまう可能性があります。

神経の受容感度を高めるヨガ

そこで有効なのが、ヨガの練習です。
ヨガで繰り返しポーズをとり呼吸を整えることで、神経が“安全”を学ぶことができます。そして、身体の過剰な興奮を少しずつ静め、余計な力みを手放していくことができるようになります。
その結果、身体は柔軟さと安定を取り戻していきます。ポーズや呼吸を通して「快」や「安心」を学んだ神経は、日常の中でも自然とその反応を再現してくれるのです。

私たちは生まれながらに、健康で元気に生きていくために自分自身を調節する仕組みを持っています。ヨガは“筋肉を伸ばす練習”ではなく、 “神経をチューニングする練習” だと思います。
ポーズの完成度よりも、「今、何を感じているか」に意識を向けてみましょう。その感覚を丁寧に拾うことが、あなた自身の神経を、そして心身の調和を整えていくことにつながります。

参考文献