看護師が伝える!夏の疲れは腸に出る?ヨガで消化器ケア

看護師が伝える!夏の疲れは腸に出る?ヨガで消化器ケア

9月に入ろうとしていますが、まだまだ暑い日が続いています。
なかなか終わらない夏に、なんだか体がだるい、胃の調子がすっきりしない、そんな不調を感じたことはありませんか。
とくに女性は、ホルモンバランスや生活環境の影響を受けやすく、長い夏の疲れが消化器の不調として現れるケースが多くあります。
今回は夏の疲れに注目しながら、生理学的な背景とともに「消化器にやさしいヨガ」について考えていきます。

胃腸は、夏のダメージが現れる場所

夏のダメージが現れる胃腸
夏のダメージが現れる胃腸

冷たい食べ物や飲み物、クーラーの効いた室内での生活、そして夜のイベントなどによる睡眠不足…… これらの夏の間の積み重ねが、実は消化器にとって大きなストレスになります。

内臓の中でも、胃腸は自律神経の影響を大きく受けています。
暑さや生活リズムの乱れによって交感神経が優位になりやすい夏の時期は、リラックスや消化の神経を司る副交感神経の働きが低下し、食欲不振、胃もたれ、便秘や下痢などの不調が出やすくなります。
季節の変わり目に感じる不調は、自律神経の乱れだけでなく、夏の過ごし方によって消化器がすでに疲れているサインとも言えるのです。

ヨガは消化器にどんな影響を与えるのか?

ヨガをする女性
ヨガをする女性

一見関係がなさそうなヨガのポーズと内臓は、実はとても深い関わりがあります。
「ヨガで胃腸の調子が整いました」と言われることがありますが、これは気のせいではなく、ヨガが持つ呼吸・運動・内観の要素が、消化器の生理的な働きを助けてくれているからです。

たとえば、呼吸によって動く横隔膜。
吸うときに下がり、吐くときに上がる横隔膜の動きは、まるで内臓への“リズミカルなマッサージ”のように働きます。また、腹部を支える腹横筋や骨盤底筋の協調運動によって、お腹の中の圧(腹圧)が適切に保たれることで、胃腸の働きが助けられます。
ほかにも、前屈やねじりのポーズは、内臓周囲の血流を促し、組織への酸素供給や老廃物の排出をサポートします。
このように、ヨガの動きは、見た目には穏やかでも内側では確かな生理的刺激が起きているのです。

消化器へアプローチするおすすめのアーサナと意識の向け方

消化器を整えるためには、激しい動きよりも深い呼吸をしながら内臓を「感じる」ことができるポーズが効果的です。
ここでは、私がよく取り入れているアーサナとその目的を紹介します。

  • ガス抜きのポーズ(パヴァナムクターサナ):腸にやさしい圧迫を加え、ガスの排出や蠕動運動(腸の動き)を促す効果が期待できます。
  • チャイルドポーズ:あえて膝をしっかりと閉じてお腹を優しく圧迫することで、ガス抜きのポーズと同じ効果が期待できます。
  • ねじりのポーズ(アルダ・マッチェーンドラーサナなど):内臓に交差的な刺激を与え、内臓の位置の調整や血流の促進に役立ちます。

ポーズをキープしながら、お腹への感覚に意識を向けやさしく呼吸を続けることで、呼吸がマッサージの効果をもたらします。

  • 前屈(パスチモッターナーサナ):横隔膜をゆるめて深い呼吸を導くとともに、心を静める作用も期待できます。
  • 立位の前屈(ウッターナアーサナ):上半身を脱力することでより横隔膜の緩まりを感じることができます。
  • 仰向けで骨盤を持ち上げるブリッジ(セツバンダーサナ):重力で下がりがちな内臓の位置を正しい位置へと戻し、内臓が正しく動ける環境をつくります。

こうした動きを行うとき、「今日はお腹の調子、どうかな?」「呼吸はどこまで届いているかな?」と自分の内側に意識を向ける声かけをすることで、ヨガの効果はぐっと深まります。

ヨガレッスンで伝えるときのポイント

胃腸の不調は見た目には分かりづらいからこそ、生徒自身も「なんとなく不調だけど、理由がわからない」と感じていることが多いものです。

そういった状態に気付く手助けとして、「お腹の感覚を意識する」時間をレッスン中に取り入れることをおすすめします。
「最近、お腹の調子はいかがですか?」
「呼吸でお腹がふくらんで、やわらかくなる感覚はありますか?」
「この動きで、お腹の中にあたたかさを感じますか?」
そんな問いかけが、体の奥の“声”に耳を傾けるきっかけになるかもしれません。

毎日休まず働き続けてくれている内臓が疲れていたとしても、その感覚に気付かず過ごしてしまいがちです。ふと立ち止まって、お腹の調子に意識を向けることは、毎日の生活の質を底上げしてくれる大切なケアです。
呼吸を意識したアーサナを通して、まずは自分自身のお腹の調子に意識を向けるきっかけをつくることは、これから来る実りの秋を健康に楽しむ準備にも繋がります。

長く続く暑さで、疲れが出やすく心もからだも少し不安定になりやすい時期。
そんなとき、ヨガで消化器にやさしいアプローチを意識してみてはいかがでしょうか。
「今日の自分、どんなふうに呼吸している?」
「お腹、冷えてないかな?」「ちゃんと休めてるかな?」
そんな小さな問いかけから、きっと“ごきげんなわたし”に戻っていける。
ヨガのレッスンが、そんな場でありますように。

参考文献

お知らせ