胸の前で合掌する女性のシルエットと宇宙のダブルイメージ

人工知能の時代に、ヨガ哲学で知性について考える

AI でできることが急激にできることが増えて、自分の仕事が無意味になるのではと感じる人がとても多いようです。

ヨガ発祥の地であるインドは IT 大国でもあり、AI の急激な発達で危機感を感じている人もとても多いです。

そんなインドで最も有名な聖者の1人であるサットグルが、人工知能とヨガ哲学について意見を発信しているので、ご紹介させていただきます。

人間の思考が行うことは人工知能でも可能

脳とAIの領域を表すイラスト
サットグルが幼いとき、店頭で初めてパナソニックの電卓を手にしたそうです。

誰かに電卓の使い方を見せてもらった時、「今まで自分が算数の授業でやってきたことは無駄なのだ」と思ったそうです。

10年間数学を一生懸命勉強しても、当時110ルピー(今の価値で約170円)の電卓の方が計算能力が高く、それを買えば自分の努力が全く意味なくなってしまう。

その時に気が付いたそうです。

科学も物理学も、私たちが学校で学ぶことは全てコンピューターがカバーしてしまい、無駄なものになると。私たちが想像できるあらゆる職業が不要になるだろうと。

例えば家が欲しいと思った時に、AI がデザインを作り、壁紙や絵画も作り、きっとこの先の未来では3D プリンターが家を自動で建ててくれるようになる。

音楽や美術でさえ、人より上手に作られるようになる。

では、AI が何をしているのかというと、データを蓄積すること、同化すること、解析すること、必要な時に必要な方法で投影することです。

これは人の思考と同じです。

子供の時から蓄えた知識を使って、様々な記憶を組み合わせ、解析して、物事を考え答えを導きます。

そのような能力で AI と人間で競い合うことは不毛なことではないでしょうか。

AI ができない人間の知性に意識を向ける

脳のイラストに触れようとする人の手
サットグルは、思考力の高さで AI と人間を比較するようなことは必要ないと言います。

なぜならば、AI ができるような単純な作業は AI に任せておいて、人はもっと人にしかできない素晴らしいことに意識を向けるべきだからです。

人工知能が行っていることが単純なことだとは思い難いですが、どういうことなのでしょうか?

人ができる素晴らしいことは本当に沢山あるけれど、例えば食事について考えてみましょう。

私たちは食べ物を食べたり、飲み物を飲んだりすると、ほんの30分後にはそれを自分の一部として取り込むことができます。そして、取り込まれた食べ物によって私たちは身体を動かし、思考や感情も生み出します。

実際、ランチを食べたら30分後には血糖値が上がって眠くなってしまい、コーヒーが欲しくなる人も多いでしょう。アルコールだって飲んだ後30分もすれば脳に到達し、私たちの思考に影響を与えます。

つまり、口にしたものは30分後にはすでに「私」となって、私に影響を与えています。

このような高度な人の身体について感じて知ることは、私たちにしかできません。医学の進歩で科学的に人の身体について知られることが多くなりましたが、それでも全てを解析することは不可能です。

また、身体は1人1人違い、同じものを口にしても全く違う反応を示します。どれだけコンピューターのデータを見ても自分を正確に知ることができません。

食事を行う時に、食べたものの自分をマインドフルに観察することで、大きな学びを得ることをできます。

このような素晴らしい自分自身を楽しむのは、とても有意義なことと言えるのではないでしょうか。

誰が作っても同じようなエクセルの資料を作ったり、システムのコードを書いたりするような作業を人工知能に任せれば、もっと豊かに人生を味わう時間が生まれます。

それは、素晴らしい未来ではないでしょうか。

人だけがもつ直観力を育む

アイディアを考え何かを閃いた女性の横顔
ここで言う直観力とは、あるものをあるがままの状態で感じることです。過去の経験から理論的に生み出すものではありません。

私たちは日常生活で様々なものを見たり聞いたりしています。

そして感覚器官で感じた情報を「これは何か」と判断するときには、過去の記憶や理論を使って理論的に判断しようとします。あるがままではなく、知識によって物事を判断しがちです。

例えば、晴れている日に外に出て、その光景を絵に描いてみましょう。空には大きな太陽があります。

この時、太陽をどのように書きますか?

ただの円ではなく、今まで見てきた太陽のイラストの形に描く人も多いでしょう。太陽の色を塗る時に、日の丸のような赤色に塗る人もいれば、オレンジ、黄色に塗る人もいるでしょう。

何気なく見たものを絵にしようとしても、私たちは思考を使ってしまっています。

ヨガでは、マインドフルな直観力を大切にします。

例えば、実際に晴れた日に太陽を見ようとするとどうでしょうか。

もっと白っぽいかもしれません。まぶしくて直視できないので、綺麗な丸には見えずに、その辺りがボヤっと明るいだけかもしれません。

実際に見たまま、感じたままだと、世界は全く違って見えることに気が付きます。

人に会った時にも、外見や身に着けているものから「この人は自意識が高そうで苦手」と判断したり、相手の趣味や職業で「こんな人だろう」と評価したりしてしまうことがあります。

過去の経験から導き出された評価は、当たっていることも多いですが、全く見当違いなこともあります。

だから、もっと純粋な感性で人と接することが大切です。

外の世界を見る時と同様に、自分の内側も観察していきます。

例えば、自分の思考について観察してみるといいでしょう。

マスメディアで発言しているコメンテーターの意見に対して「なるほど納得」と思う時もあれば「これは間違っている」と評価することがあります。

それは本当にあなたの意見なのでしょうか。もしかしたら、仲のいい友人と話している中で聞いた価値観かもしれないし、以前に本で学んだ考え方かもしれません。

私がいつも考えていることを客観的に観察すると、今までと全く違う自分が見えてくるかもしれません。

第六感?マインドフルネスで身に付く真実を見る力

室内で瞑想するヨガウェアを着た女性
例えば私たちが何かを決断するとき、人工知能なら、同じような状況の過去のデータから成功率を計算してロジカルに答えを導こうとするでしょう。

しかし、どれだけデータを増やして、性能を上げたとしても、必ず正しい答えが見つかるわけではありません。

なぜならば時代は常に変化しているので、過去のデータから未来を読むことはできませんし、同じタイミングであっても、実行する人や、たまたまその時の環境などで結果が変わってしまうからです。

不思議なのですが、人には直感的に「これをやるべきだ」と感じることがあります。

それは理論的に導かれた答えではなく、周囲から見たら破天荒だと思われることもありますが、何か大きな力に導かれるように未来が開かれることがあります。

そのように降ってきた役割をヨガ哲学ではダルマと呼びます。

自分の仕事に全く迷いがない人、天職が与えられた人は輝いて見えますね。どうして迷いがないのでしょうか。

それは、直感的にこれが自分の進む道なのだと理解しているからです。

自分だけの『スワダルマ』(職務)を見つける。自分らしい生き方

自分にとって本当に必要なことを知るためにも、直感直が大切です。

直観力とは先ほど説明した通り、見たものを正しく理解できる力です。知識や思考といった色眼鏡が強くなっている時には、濁って感じられなくなってしまいます。

マインドフルに、あるがままの真実を観察する力は、ヨガの練習で磨くことができます。

日常世界での価値観を手放して、今この瞬間に集中するヨガでは、感覚がどんどんクリアになります。

視界がクリアになった時、わざわざ思考で考えなくても、私たちに本来備わった深い知性で正しいことが見えてきます。それを第六感や霊感と呼ぶ人もいるかもしれません。

ヨガでは、真実の答えは外側になく、常に自分の内側に存在していると考えます。自分に備わった素晴らしい知性を信じましょう。

自分が見えていれば不安は手放せる

時代や環境が変化する時には多くの人は不安を感じやすいです。それは、外からの情報に左右されてしまうからです。

漠然とした不安で自信を失ってしまう人もいるかもしれません。
そのような時、どれだけ頭で考えても答えは見つかりませんね。

曖昧に聞こえるかもしれませんが、今だからリアルな経験を大切にして、感覚を味わい楽しむことが大切なのではないでしょうか。

思考ばかりが働いていると、現実を見ることができません。

お布団の暖かさ、肌触り、鳥の鳴き声の美しさ、そよ風の心地よさ、呼吸をしたときに体内で流れるエネルギー、それを自分自身の感覚で味わうことは、人間にしかできない贅沢です。

自分を正しく知ることができれば、不安は消えていきます。本当の答えはいつも、自分の内側にあると気が付けるといいですね。

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