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ヨガの八支則のニヤマにイシュワラ・プラニダーナ(自在神への祈念)というものがあります。
ヨガを学ぶ人の中には、「自己探求のヨガの中で、どうして神様に祈るのだろうか?」と腑に落ちない人も沢山いるようです。
『ヨガ・スートラ』の中にどうしてイシュワラ・プラニダーナが説かれているのか、様々な説が存在する中で、イシュワラ・プラニダーナは自身がヨガを実践することへの誓いなのだという解釈を今回はご紹介します。
イシュワラ・プラニダーナはヨガの師を前にした祈り

教典ヨガ・スートラの日本語訳をした佐保田鶴治先生によりと、プラニダーナとは仏教用語で「誓願」と漢訳されています。
誓願とは、神や仏を前にして誓いを立てて、成功を祈ることを意味し、「仏教の修行者は修行の道に入っていく時に自身の志願を表明して誓いをたて、それがプラニダーナだろう」と説いています。
ここから読み取れるイシュワラ・プラニダーナは、自分自身のヨガの修業を行うことへの誓いであり、神頼み的なものではないという印象を受けることができます。
宗教的なバクティとの違い
現在インドで伝えられているヨガでは、『バガヴァッド・ギーター』に見られるようなバクティ・ヨガの流れを取り入れている先生が多いです。
そのためヨガ・スートラのイシュワラ・プラニダーナをバクティ(神への信愛)と混合して考える場合もあります。
バクティとはブラフマンと呼ばれる宇宙意識やクリシュナ神と一体になることを目指し、絶対的な存在に対して深く崇拝して自分自身を捧げます。
そのようなバクティ・ヨガの流派と、瞑想を中心としたラージャ・ヨガ(ヨガ・スートラ)の流派は全く違う系統の教えであり、ヨガ・スートラの中でバクティ的な要素が急に現れるのはとても不自然なことに思われます。
イシュワラ・プラニダーナの祈りの対象
プラニダーナ(祈念)を行う対象であるイシュワラ(自在神)はバクティ・ヨガのブラフマンとどのような違いがあるのでしょうか?
そもそもヨガ・スートラの中で説かれているイシュワラは、絶対的な創造主である神的な存在とは違うものです。
イシュワラは時間による制約を受けない存在であるため、古代のグルにとってもグルである。(ヨガ・スートラ1章26節)
ヨガを志す人にとって、イシュワラ(自在神)とはグル(師)です。
グルとは、知識を与えてくれる先生という以上に重要だとインドでは考えられています。
ヨガにおいてはグルなしでは成功はあり得ないと考えられ、いくつもの教典の中でグルの大切さについて説かれています。
ヨガ・スートラの中でイシュワラと修行者の関係はグルと生徒だと読み取ることができます。
イシュワラとは目に見える存在ではないため、直接手取り足取り教えてくれるわけではないかもしれませんが、イシュワラは代々と受け継がれてきたヨガの伝承の1番最初のグルです。
イシュワラ・プラニダーナ(自在神への祈念)では、修業に入る生徒が、イシュワラという太古からのグル(師)を前にして自身の誓いをたて、ひたむきにヨガを実践することを約束し、ヨガの成功を祈る姿を意味しているのではないでしょうか。
グル(師)の重要性は、ハタヨガでさらに強調されています。
アーサナやプラーナーヤーマなど、自身の身体をコントロールしながら精神を向上させるハタヨガでは、体験に基づいたグルの指導が不可欠です。
グルは疑いもなく弟子にとって父であり、母であり、神である。それ故にグルはすべての人に行為と心意と口とを以て奉仕をされるのである。(シヴァサンヒター3章13節)
グルの存在は私たちが思う以上にヨガでは必要不可欠です。
祈りの対象イシュワラとは?

さて、イシュワラは全てのヨガ実践者にとってグル(師)であると書きましたが、そもそもイシュワラとはどのような存在なのでしょうか?
「神」と訳されていますが、私たちのイメージする神様とはかなり違います。
ヨガ・スートラでは、イシュワラを特別で純粋なプルシャ(真我)であると定義しています。
イシュワラは苦しみ、カルマ(行為)、カルマの結果、カルマへの依存に1度も触れていない特別に純粋なプルシャである。(ヨガ・スートラ1章24節)
プルシャとは、私たちの全ての人の中に宿る霊魂のようなものです。
ヨガ・スートラが採用しているサーンキャ哲学では、世界を物質(プラクリティ)と霊魂(プルシャ)に分けました。
そのうちプルシャのことを「見る人」と呼びます。「見る人」には何か行為をする能力は全く備わっていません。
思考でさえもプラクリティ(物質の根本原理)の働きであると考え、プラクリティが生み出した物質的な自分を傍観しているのが「見るもの」であるプルシャです。
生命活動を行っている私たちの中に宿るプルシャは、プラクリティの作り出す物質世界を傍観して、それが自分自身だと勘違いをしてしまっています。
それはまるで、映画を見ながら、登場人物に感情移入しすぎて自分を忘れてしまったような状態です。
イシュワラ(自在神)という特別なプルシャは、自身がプルシャであるという認識をしています。どれだけプラクリティが映像を作り出しても、そこに染まることがありません。
物質世界に惑わされている私たちは、自分の本質がプルシャであることを知覚できません。そんな私たちに、本来の姿プルシャを教えてくれるのがイシュワラです。
ヨガでは神は私たちに直接的に救いを与えてくれません。しかし、自分たちで自身を導くための知恵を授けてくれます。
マハーバーラタに出てくるイシュワラ
余談ですが、『マハーバーラタ』というインドの巨大叙事詩の中にもイシュワラが出てきます。ヨガの教典としても知られるバガヴァッド・ギーターはマハーバーラタの一場面を切り取ったものです。
このマハーバーラタの中では、イシュワラを「人間を支配する主宰神」として描いています。
人々は無知であり、自分自身の幸や不幸をコントロールすることができません。イシュワラが人々に苦楽を振り分けて、人間はイシュワラに左右されるままに行動し結果を得るのだと説かれています。
ここでのイシュワラは、ヨガ・スートラに出てくるイシュワラとは全く違う存在として書かれています。
マハーバーラタ以外にもイシュワラという神様の名前はインドの古代聖典に沢山登場するので、聖典ごとに個別のものとして考えた方が良さそうです。
ヨガの練習の前にイシュワラ・プラニダーナを行う

イシュワラ・プラニダーナ(神への祈念)の代表的な実践方法はマントラを唱えることです。
インドではヨガに限らず、勉強を行う前に先生と自分に向けてのマントラを唱えることが一般的です。
ヨガのクラスでも、練習を行う前にマントラを唱えることで、自分自身の意識をヨガの練習に集中させます。
日常生活が忙しいと、突然アーサナの練習を始めても心が外に向いたままになってしまうこともあります。
短い時間でも、ヨガを行う前にマントラを唱えることによって、この時間は自分自身を練習に捧げるという決意を自覚することができます。
ヨガの練習の前後のマントラを、イシュワラ・プラニダーナの実践として丁寧に唱えてみてはいかがでしょうか。
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