インドの3大神

インドの3大神とは?世界は「創造・維持・破壊」でできている

今回はインドの神様についてご紹介して、世界のしくみについて考えてみます。ヨガ哲学とインドの宗教は密接に関わっているので、神様について知ることもヨガ的な考え方の土台をはぐくむのにとても役に立ちます。

インドではヨガだけでなく、あらゆる学びの場で最初と最後にマントラを唱えます。その中で最もポピュラーなグル(師)へのマントラは、ブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァという3大神の名前を唱えます。

教えを与えてくれるグル(師)こそが神様

Gurur Brahma, Gurur Vishnu,
Gurur Devo Maheshwara,
Gurur Saakshaat, Param Brahma,
Tasmai Shri Guravay Namah

【意味】
グルはブラフマーであり、グルはヴィシュヌであり、グルはシヴァである。
グル自身こそが至高の神である。尊敬するグルに敬意を示します。

このマントラはインドで最も有名なマントラの一つです。グル(師)に対する尊敬の意(ナマハ)を表していますが、その中でグルを3つの神だと説いています。

  • ブラフマー:創造の神
  • ヴィシュヌ:維持の神
  • シヴァ(マヘシュヴァラ):破壊の神

インドにおいてグルは単に知識を与えてくれる学校の先生ではありません。この世で最も尊いことは正しい知識を得ることだと考えられています。それを与えてくれるグルこそ、最も尊敬するべき対象だと考えられています。

本の周りで学ぶ人々

この考え方は古代のバラモン教から引き継がれるヒンドゥー教だけでなく、ヨガや、仏教でも共通した認識です。自由を求めるインドの数ある宗教では、自分を正しい道に導いてくれる知恵こそが一番の財産であると説きます。

私たちに新しい知識を与えてくれるグルは創造主であるブラフマー神です。自分が今まで見ることができなかった新しい世界に導いてくれます。

また、この世は正しく維持しなければいけません。自分や家族、世界全体の平和の維持を与えてくれる知恵はヴィシュヌ神です。

そして、世界には破壊の力も必要です。私たちの苦しみの原因を取り除いてくれる知恵はシヴァ神です。

自分の中に3つの力をバランス良く持つことで得られる幸せ

創造・維持・破壊の3つの力の均衡がとれることで、自分個人や社会、世界全体のバランスが整います。

創造の力が足りないと、自身の未来を切り開くことができません。幸せな生き方を得るためには、新しい自分を受け入れて築く力が必要です。

大きく人生を変えようとしなくても、普段より食材にこだわった食事を作ってみるなど、自分や家族の健康と喜びのための献立を考えるだけでも創造の力が働きます。ヨガを行っていれば、新しいアーサナを学ぶたびに新しい身体の感覚を味わうことができます。

維持の力も大切です。アーサナを行っていれば、そのアーサナを快適に安定してホールドできるように練習をしますね。アーサナをキープしながら感じる呼吸や身体の声はとても心地が良く、私たちの人生の中で感じることのできる大きな喜びです。

安定して維持することはとても大切なことです。世界全体で見た時、今の私たち人間の行っている消費生活は地球を維持するのには無理があるのかもしれません。世界全体が持続可能な社会であるために、不要な浪費を避けるという考え方も必要かもしれません。

シヴァ神の持つ破壊の力は怖いものだとイメージする方もいるようです。しかし、ヨガを実践する私たちにとって、破壊の力はとても大切です。ヨガや仏教などの教えは、世の中の苦しみからの解放を目指して生まれました。

ヨガでは、私たちの心の中に生まれた煩悩(クレーシャ)こそが苦悩の原因だと説いています。そして、煩悩の中の最も大きなものは無知。間違った認識こそが全ての苦しみの原因です。ヨガの修行によって自分を苦しめる原因を破壊していきます。

私たちを苦しめる5つのクレーシャ(煩悩)の弱め方

インドの3大神について知ろう

それでは、3大神についてもう少し深くご紹介します。神様に祈りを捧げる時にも、盲目に崇拝するのではなく、それぞれの神の持つ力の本質を知ることによって、自分自身の内側に教えを受け取りやすくなります。

インドの3大神

創造の神ブラフマー

インド思想において、万物の創造の根源はブラフマンだと説かれています。ヨガの教典として知られるバガヴァッド・ギーターの中でも、宇宙意識をブラフマン、個の根源のことをアートマンと呼んで解説しています。そのブラフマンを人格化したのがブラフマー神です。

ブラフマンとアートマン:ヨガを理解するためのインド思想の基本

ブラフマー神は、4つのヴェーダ教典を表した4つの顔を持ち、4本の手があります。ハンサと呼ばれる白鳥に乗っています。古代インドでは最も崇高な神として考えられていましたが、現在のヒンドゥー教では少々人気が落ちてしまっています。

ブラフマーの乗り物である白鳥をイメージした古典音楽はとても美しく、南北インドでとても愛されています。


(白鳥のラーガの演奏動画)

維持の神ヴィシュヌ

ヴィシュヌ神は現在のインドでもっとも人気のある神様の一人です。

ヴィシュヌ神は10の化身となって私たちの前に姿を現すと言われています。その中でも特に人気が高いのが、巨大叙事詩ラーマーヤナの主人公であるラーマという王子や、バガヴァッド・ギーターの中で教えを説くクリシュナ神です。

また、仏教の開祖であるゴーダマ・ブッダもヴィシュヌ神の9番目の化身であると考えられています。

ヴィシュヌ神はクリシュナとして人間界に生まれ、この世の中のダルマ(法)を説きました。この世界を秩序をもって維持するためには正しい知識が必要であり、それを教えてくれるのがクリシュナです。

ギーターの教えを説いたクリシュナって、どんな神様?

破壊の神シヴァ

破壊の神として知られるシヴァですが、ヨガを実践する人にとっては最も身近な神様です。現代のほとんどのヨガ実践者が行っているアーサナを中心としたヨガは、ハタヨガと呼ばれる古典ヨガを源流としています。このハタヨガの教えを1番最初に説いたのがシヴァ神です。

額に第3の目を持ち、コブラを首に巻き、トラの皮を腰に巻く姿はとても恐ろしく見えるかもしれませんが、ヨガを実践する人々を心から愛し、私たちの内側の不純なものを打ち壊す力を与えてくれます。また、ヨガのあらゆる障害を取り除いてくれます。

また、シヴァ神はインドで最も愛されている神様の一人であるガネーシャ神の父親でもあります。ガネーシャ神も、知恵の象徴として、私たちに教えと幸福を与えてくれる存在です。

ガネーシャ神の暗号〜深淵なる叡智の象徴〜

3神一体(トリムールティ)が世界の秩序

ここまで紹介したブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァという3神は同等の存在であり、一体であるという考え方をトリムールティと呼びます。トリムールティには様々な見解がありますが、宇宙の根源であるブラフマンの3つの力を創造・維持・破壊で分けたと考えられています。

現代のインド思想にも続く梵我一如(ぼんがいちにょ)という考え方に現れる通り、インドでは様々な姿をして、個性豊かな神々が存在するけれど、それら全てはブラフマンであると考えられています。

全てはヨガの学びから得られるもの

3神の司るそれぞれの能力と個性についてご紹介しましたが、それらは全てヨガの実践によって得られる力です。

最初にご紹介したマントラの通り、グル(師)から授かることができる知恵こそが創造・維持・破壊の力です。3つの力のバランスを整えることで、自分自身の人生を豊かに生きることができ、また自分自身が学ぶことで周りの人にも伝えることができます。

ヨガは、時代や場所によって様々に変容していくため、たくさんの流派があります。どのような形のヨガであっても、それを実践し、習得して、伝えてくれる先生がいます。先生や知恵に対しての尊敬の心を育てることで、さらにヨガの恩恵を受け取りやすくなるのではないでしょうか。