丘の上で話す弟子と師匠

ヨガの師弟関係を築くには?良い先生を探す前に良い生徒になる

情報社会の現代では、インターネットを覗けばヨガの先生についていつでも調べることができます。多くの人は、複数のヨガの先生のクラスを体験しながら、自然と自分に合うヨガを見つけて、その先生の教えを深めていきます。

一方で、「良い先生に巡り合えない」と悩み続ける人がいるのも事実。ヨガ発祥の地インドでも、毎年多くの人が海外から教えを求めてやってきますが、何十人もの先生に会っても「インドには良いヨガの先生がいない」と迷い続ける人がたくさんいます。

「良い先生に出会えない」という生徒に向けた格言をリシケシのシャラ(ヨガ道場)で見たことがあります。今回は、自身のヨガに出会うためのコツを説いてみます。

自分自身が良い生徒であるか向き合ってみる

私たちは生徒の立場で、良い先生に出会いたいと一生懸命に探します。しかし、先生の立場にたつと、先生も良い生徒を探し続けていることが分かります。

伝統的にヨガはグル(師)から弟子に直接伝承するものでしたが、現代では書籍やインターネットで、かつては秘密にされていたヨガの技法について簡単に知ることができます。

座っているインド人のヨガの先生とPC画面

しかし、文章や動画だけで知った情報だけでは正しく実践することが難しく、時には間違った練習方法を行い怪我をしてしまう人もいます。

古代から多くの師によって伝承され続けてきたヨガの知恵を次の世代に伝えるためには、それを正しく理解して習得できる優秀な弟子に教える必要があります。そのため、ヨガを習得した師は、必ず生徒を探します

ヨガの伝統で重要視されてきたグル・シーシャ(師弟関係)

生徒は必死になって先生を探す必要はありません。良い先生に出会うために必要なことは、自分自身が今実践しているいるヨガで自分を磨くことです。

自分の準備が整った時には、師は自然に目の前に現れると考えられています。多くの先生を比較してジャッジしようとしている人は、常に疑いの心をもって師に接してしまうため、まだ準備ができていないと評価されてしまいます。

まだ自分のヨガが定まらないと思っている人も焦る必要はありません。今行っているヨガの実践を続けることで、自然と自分に合った先生が現れます。もしかしたら、すでに出会っている先生なのか、これから新しく出会う先生なのかは分かりませんが、思考でジャッジしないようにすることが大切です。

人生を変えた!ヨガの出家僧による、心に響く5つの言葉

素晴らしい教えも、受け取る相手によって価値が変わる

イスラム教の神秘主義であるスーフィの学者ドゥン・ヌンと弟子の逸話にも同じような話があります。ドゥン・ヌンの弟子は、ありがたい教えが欲しいと師にしつこくねだります。

そこでドゥン・ヌンは一つの宝石を弟子に渡しました。

イスラム教男性イラスト
イスラム教男性イラスト
この宝石を野菜市場に持っていって、人々にいくらだったら買いたいか聞いて来なさい。しかし、絶対に売ってきてはいけないよ。

弟子は言われた通りに市場に行き、そこにいた人たちに値段を聞きました。

市場の人たちは、

イスラム教男性イラスト
イスラム教男性イラスト
置物や子供のおもちゃに良いね。

と、2パイサーから10パイサーの値段をつけました(二束三文の値段)。

次にドゥン・ヌンは、金の市場に行っていくらで買いたいか聞いてくるように指示しました。

すると、金の市場にいた人たちは、同じ宝石を500ルピーから1000ルピーで買うと言いました。10パイサーと1000ルピーを比べると1万倍の値段です。

次にドゥン・ヌンは、宝石商に行って、そこにいる人がいくらの値をつけるか聞いてくるように指示しました。

すると宝石商は

イスラム教男性イラスト
イスラム教男性イラスト
30万ルピー払ってもいい。いや、言い値で良いから、その宝石を売ってくれ。

と懇願しました。

単純に計算しても、野菜市場の人と比べて300万倍以上の値段です。弟子は、野菜市場の人たちが言った値段が妥当だと思っていたので、とても驚きました。

自身の心が濁っていると素晴らしい教えにも気が付けない

ここでドゥン・ヌンが伝えたかったことは、どれだけ高尚な教えを与えられても、弟子に受け取る準備ができていなければ全く価値はないということです。

逆に、自分の心の視野をクリアにすることができれば、与えられた教えの恩恵を充分に受け取ることができます。

外から与えられるものを求め続けても人は幸せを受け取ることができません。自分自身に意識が向いた時に、初めて幸せに気が付くことができます。ひたむきに、目の前のヨガに向き合うことが自身のヨガに出会う近道です。

自分を磨くためのクリヤ・ヨガ

それでは、どのように自分自身を磨けばいいのでしょうか?

ヨガ・スートラの中では、ヨガを志す人が必ず実践しないといけない3つのクリヤ・ヨガ(浄化法)について説いています。

「タパス(熱業)・スヴァーディヤーヤ(読誦)・イシュワラ・プラニダーナ(神への祈念)の3つがクリヤヨガである。(ヨガスートラ2章1節)」

1つ目のタパスは苦行、もしくは熱行と訳されます。自分自身の内側の不純性を燃やすための実践方法です。タパスには様々な実践方法がありますが、一例としてヨガのアーサナの実践を行うことも良いでしょう。

例えば、毎朝早起きをして決めた時間にアーサナの練習をすること。眠たい日も、怠けたい日も意思を強く続けることで、心が浄化されていきます。

スヴァーディヤーヤの実践として、マントラを唱えることはとても有効です。マントラの純粋な音にしっかりと心を繋ぐことによって自身を高めることができます。ヨガ・スートラなどの教典を読むことも大切です。真実を知った聖者の言葉は、正しい道筋を照らしてくれます

3つ目のイシュワラ・プラニダーナでは、疑いの心を弱めることができます。ヨガを信じて疑わずに、ひたむきな心で自身を預けることができれば、ヨガの成功は安易に訪れます。

クリヤ・ヨガでは特別な実践をする必要はありません。難しいアーサナや、長いマントラを必死に暗記しなくても大丈夫です。大切なことは、どれだけ意識を集中させることができるかです。

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自分にとっての適切なヨガに出会う

ヨガの先生と周りで語る人
人には個性があるように、適切なヨガはその人ごとで違うことを理解しましょう。ヨガの先生を探している時には、どうしても友達の感想や口コミを気にしてしまいます。

その結果、ヨガの先生を比較して、時に批判的な意見を言ってしまう場合もあります。

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あの先生のクラスはゆっくり過ぎて全く物足りない。
この先生は身体にばかり細かく意識を向けすぎて、思考がせわしなくなってしまう
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この先生は理屈っぽい。
この先生のガイドは表現が曖昧。
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ある人は物足りないと感じたクラスも、他の人が受ければリラックスして良いと感じるでしょう。理屈っぽい言葉に違和感を感じる人もいれば、はっきりと明確にしてくれて分かりやすいと思う人もいます。

万人にとって最高のヨガというものは無いのだと理解していると、必要以上にジャッジして心の壁を強めてしまうことがなくなります。

今の自分にはピンとこないと思ってることでも、1か月後には良いと思えるかもしれません。逆に、「素晴らしい教えに出会った」と興奮していても、1年後には飽きてしまうこともあります。

どのようなヨガであっても、必ず自分自身の純粋さを高めてくれるものです。ジャッジすることなく、ヨガを続けていること。

すると自身がヨガの恩恵を受け取る準備が整い、自然と自分の教えが現れます。自分が分かってきたときに、本当に出会うべき師が現れると古典ヨガでは考えられています。

参考資料

  • And the Grass Grows By Itself…. Talks on Zen」Osho著 出版社:Jaico Publishing House; First edition (5 December 2006)

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