「太陽礼拝、 やってよかったなあ」再修正

この気持ちよさの正体は?「太陽礼拝やってよかったなあ」の効能

どうして「気持ちいい」のか

ヨガの基本とも言える“太陽礼拝”。

うまくできる、できないにかかわらず、太陽礼拝をやっていると「気持ちいいなあ」っていう感覚が全身にあふれてきますよね。でも、この「気持ちいい」の正体はいったい何なのでしょうか?今回は、王道だからこそきちんと知りたい“太陽礼拝”の効能を徹底分析!

Point1 セロトニン

セロトニンとは、三大神経伝達物質の一つ。心身の安定や、心の安らぎに大きな影響を与えることから、「幸せホルモン」とも呼ばれます。不足すると精神のバランスが崩れやすくなり、イライラや不眠、うつ病などの原因になることも。太陽礼拝は、実はこのセロトニンの分泌と深い関係があるのです。

1.姿勢と抗重力筋で前向きな心

「ヨガ=姿勢がいい」というのは誰もが認める事実。実は、この「いい姿勢」に、ヨガをすると心が落ち着き、至福感を味わえる大きな理由があります。姿勢を正している時は、抗重力筋がしっかりと働き、それによりセロトニンが分泌されます。

抗重力筋とは、大腿四頭筋、腹直筋、腓腹筋、大臀筋、脊柱起立筋など、重力に逆らって体を支えるために必要な筋肉のこと。太陽礼拝ではターダーサナをはじめ、ほとんどのポーズで使われている筋肉です。つまり、太陽礼拝の最中はずっとセロトニンが分泌されていることになります。

セロトニンが分泌されると、痛みや疲労感が和らぐだけでなく、自律神経のバランスが整い、心が安定し気持ちも前向きに。だから、太陽礼拝をやると心がスッキリするのです。

『義務感』ではなく、『気持ちいい』、『楽しい』と思いながらやるとより効果的です。

2.繰り返し行うリズムで記憶が豊かに

太陽礼拝も何度も繰り返すと、考えなくても体が動くようになったり、気分が高揚して「ずっと続けたい」と感じることありませんか? これは、「リズムに乗った」という状態。呼吸に合わせて一定のテンポでポーズを行った結果です。

単純な作業も、音楽を聞きながらやると無心になって、どんどんはかどるように、リズムに乗ると脳の働きもよくなります。集中しやすくなるので、雑念も入りにくく、勉強や仕事の効率も上がります。

さらに、記憶に関係する海馬がよく働くので、記憶力のアップも期待できるのです。

3.呼吸のリズムを取り戻し、生きる主導権を得る

普段、私達は無意識に呼吸をし、寝ている間も呼吸は粛々と行われています。その無意識の呼吸を意識的に行い、動作と連動させるのがヴィンヤサであり、太陽礼拝。この「呼吸と動作を合わせる」ということが、私達が生きる上でとても大きな意味を持っています。

自律神経をコントロールできないと、不眠やうつ症状が起こるように、自分の体に対して自分自身が主導権を握り、自分で自律神経をコントロールできることが大切。

「呼吸と動作を合わせる」ことはまさに自分で主導権を握り、『生きる』という選択をしているということなのです。

Point2 空間認知脳

空間認知脳とは、空間の中で位置や形などを認識する知能のこと。時間の長さをイメージする、ものを見て絵として再現できる(描く)、バランスを取って自転車に乗るなど、考えたり体を動かしたりする時に重要な役割を担っています。

4.空間認知脳でストレス解消

体調を崩したり、心を病んだりする多くの原因はストレスにあると言われています。そのストレスの順応性を高めると言われているのが、空間認知脳。いつもスマホやパソコンばかりを見ている私達は、空間認知の範囲がとても狭くなっています。

ところが、うれしいことに、太陽礼拝にはこの空間認知脳を高める効果があると言われいます。姿勢を正すこと、言い換えれば、太陽礼拝の一つひとつのポーズを正しく取ろうとすることでバランスが保たれ、空間認知脳鍛えられます。

さらに、深い前屈をしたり、大きく反ったり、普段の生活にはない動きをすることで視線が動き、いろいろな角度からものを見たり、客観視できるようになります。それはものごとの受け止め方や、考えの幅の広さにもつながり、ストレスを軽減するのに役立ちます。

空間認知脳は脳の働きに大きくかかわり、判断力や思考力、記憶力までも左右します。また体のバランス力が高まればスポーツも上手になり、いいこと尽くし! 太陽礼拝を繰り返して、空間認知脳を高めましょう!

5.頭の中が整理されていく

誰かと話したり、料理をしたり、意識的な活動に脳が使うエネルギーは一日の消費量のわずか5%。一方、ボーッとしている時75%も使われています。これが脳のデフォルトモード。この状態では、前頭前野と後部帯状回が主に働き、過去の記憶にかかわる扁桃体や海馬ともやり取りしながら、脳内の情報を整理しています。

考えなくても太陽礼拝ができる状態になると、小脳が主に動き、繰り返すうちに過去の記憶やトラウマが出てくることがあります。これは脳が瞬間的にデフォルトモードに入り、扁桃体や海馬とやり取りをしている状態。頭の中で散らばった情報が整理されているのです。

6.“運脳神経”UPで自信がつく

単純な計算を繰り返す「百マス計算」で、数値能力が上がるのは有名な話。プロスポーツ選手も地味な基本練習をひたすら続けます。これは単純な動きの繰り返しによって、動きの指令を脳から筋肉に伝える神経回路に道筋ができ、繰り返すことによってそれが太くなるため。

道筋が増えれば増えるほど、自分の思い通りに体を動かせるようになり、応用が利くようになります。最近ではこれを『運脳神経』と呼びます。難しい動作も練習すればこの道筋が作られていくような気もしますが、実は複雑な動きでは脳が処理しきれないのです。

一方、太陽礼拝は、単純な動きの繰り返し。続ければ『運脳神経』の発達が期待でき、体が動きやすくなり自信や勇気のもとになります。

知って納得、気持ちのいい太陽礼拝を習慣に

「太陽礼拝、やってよかったなあ」差込み

ヨガをすると、日常のパフォーマンスが上がる、とはよく言う話ですが、実はこんな裏づけがあるのですね。なんとなく知っているだけで、太陽礼拝のモチベーションや、質がまた一段上がりそうです。

シンプルな動きで続けやすい太陽礼拝。気軽に日常に取り入れて、自分をメンテナンスし、日々の生活をより快適なものにしたいですね。

教えてくれた人:下條茂
しもじょうしげる。ナチュラルメディカルカレッジ学長。メンタル、マインド、フィジカルをトータルでコンディショニングするトレーナー。クライアントには芸能人、プロスポーツ選手が多く、ハリウッドスターも。歯科、医科とのチーム医療なども定評があり、全国で講演会をしている。

イラスト=マー関口
文=Yogini編集部