
医療従事者として働くかたわら、ヨガインストラクターとしての知識も活かし、ヨガスタジオへ行くことが困難な高齢者や障害者、さらにそのケアをする介護者に向けたヨガや健康教育を提供するほか、多様な人が集うオープンなコミュニティづくりの支援などにも尽力されている、おふたり。
「MEDCAYEYOGA」というプロジェクトを立ち上げ、これまで病院でも、ヨガスタジオでもできなかった、新しい試みに日々挑戦されています。本当の意味での健康の輪を広げたい——そのまっすぐな想いと高い志で、幅広く活躍されているのが、とても印象的です。
人と人とがつながる場所から、健康の連鎖がはじまる

中野輝基先生と、陽子先生は、「MEDCAREYOGA」をとおして、医療(MEDICINE)とケア(CARE)、ヨガ(YOGA)それぞれの適切な知識を融合させた、さまざまなプランを提供しています。このなかで、編集部が兼ねてから注目していたのが、「アクセシブルヨガ®」というものです。
アクセシブルヨガ®︎とは……
障害の有無、身体能力の違い、そして社会的背景にかかわらず、孤独や社会的孤立、または周囲に適切なサービスが存在しない、などといった様々な理由により、現在ヨガを体験することができない人々対して、ヨガを提供すること
多様性がうたわれるいっぽう、あらゆる“つながり”が希薄になっている現代において、ヨガを、多くの人の健康増進へとつなげていくための“本質的な”メッセージが込められています。
“つながりの希薄さ”は、一人ひとりの健康観にも現れているようです。健康とは “自己管理・自己責任”のうえに成立する、という見方で捉えられてしまいがちですが、アクセシブルヨガ®を広めるおふたりは、この認識こそ、じつは、つながりへの配慮や想像力を欠いた視点ではないか、と警鐘を鳴らします。

健康を自己管理していくには限度があります。
どのような環境に身を置いているのかというのは、必ずしも自分でコントロールできるとは限らないからです。
健康の本質は、格差のない“平等な社会”にある
みなさんは、健康格差という言葉を聞いたことはありますか?健康格差とは、社会経済的格差が健康に与える悪影響についての数々の疫学研究から導き出された概念です。
日本において所得の格差は年々悪化の一途を辿っています。
税や社会保障による所得の再分配によって格差改善に一定の効果が見られているのは事実ではありますが、家庭の等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)が122万前後以下で暮らす17歳未満の子どもたちが、人口の16〜17%も占めているといわれています。
つまり日本はいま、6〜7人にひとりの子どもが相対的貧困ということです。この相対的貧困率は、G7加盟国のなかでアメリカに次いで2位。OECDのなかでは7位と、かなり深刻であることが伺えます。(OECD経済審査報告書2017年データより)
健康格差は、この所得の格差とともに家族構成、雇用の形態、また地域との関わり方(ソーシャルキャピタル)など、各人の置かれた社会的、経済的状況によって健康状態に差が生じることを指します。
事実、非正規雇用者の増大など、労働環境の激変と、それにともなう収入格差の拡大が日々の生活レベルや子どもの教育環境などの格差にまで波及。さらには、健康まで脅かしつつあるというのが、数々の研究で明らかになっています。

シングルでの子育てで、かつ雇用形態が安定せず所得が不十分では、日々の生活を送るのもひと苦労です。最低限の衣食住さえままならない。病気になっても、きちんとケアを受けられないこともあるでしょう。
そこに、ソーシャルキャピタルの低下が加わると、社会からの孤立感に拍車がかかり、未来への不安が常につきまとうようになります。
そういう人に、健康のために『食生活を変えましょう』とか『ヨガをやったら?』なんていっても響かないですよね。
こうした人たちが増えるほど、健康格差、不平等はさらに開いていく。これを個人の問題として片付けてしまっていいのか、というところを僕らは常々考えています。
人間は、ひとりで生きているわけではありません。
たとえ生活にゆとりがあって、健康になる努力を自分ひとりがしていたとしても、あらゆるつながりが見えなければ、多くの人が健康を維持しにくい環境に社会全体が傾いていくことが考えられます。
そうした想像力を、一人ひとり働かせることが、とても大切なんじゃないかと感じています。
社会的処方としてのヨガを広めたい!

医療従事者として、またヨガインストラクターとしての知識を、どう社会に貢献できるのかを絶えず模索してきたおふたり。現在の活動スタイルに至るきっかけとなったのは、2番目のお子さまの誕生が大きい、と振り返ります。

出産後に重度の斜頭症であることがわかりました。生まれて間もない子どもが、すぐにヘルメット治療をすることになったんですね。
そんなとき、本当に多くの仲間が支えてくれました。通常の子育て以上に気を使うことが多かったのですが、人とのつながりに、ものすごく救われたんです。
いま、イギリスを中心に、社会的処方の研究が進んでいます。社会的処方とは、医者が患者に、薬を処方するようにボランティアやサークル活動を推奨することなんですが、これは真実だということを、まさに身をもって体感できたわけです。
これがきっかけとなり、わたしたちも人と人とがつながれる場をつくりたいと、思うようになりました。それが、MEDCAREYOGAのはじまりです。
やがて健康格差という問題が、いかに社会全体の健康を蝕むのか。そのことへも意識が向いていくようになり、より広い視点から健康をとらえ、活動するようになったといいます。

先ほどもお話しましたが、いまの社会システムの網の目からこぼれ落ちていく人たちが多くなるほど、社会全体が沈んでいきます。これを改善するうえでも、やはり人と人とのつながりを強化することが重要なんです。
最新の疫学の研究でも、地域間のつながりを強め、多くの人の孤独感を減らしていくことが、全体の健康寿命を底上げすることにつながることがわかっています。
孤独感が絶えず続くと、常に不安を感じやすくなり、さらには人を疑う気持ちが強くなったりと、まさに感情面は負のスパイラル状態に……。
負の感情は、交感神経を刺激し続け、高血圧からやがて脳血管障害や心疾患を起こす可能性があり、さらに抑うつなどを引き起こし、寿命を縮めてしまうことにもなりかねません。

孤独の解消だけでは、健康格差を100%解消することはできませんが、大きな鍵を握っているのは確かです。
わたしたちの目標は、まず、多様な人がつながれるコミュニティを形成すること。そして、そこに来られた方々が“主観的に”孤独ではないと思ってもらえるようにしていくことです。
人と人とのつながりを育むツールである、ヨガ
そうした活動をとおして、ヨガは人と人とのつながりを育むツールになることを日々実感している、と陽子先生は力を込めます。

実際に、さまざまな施設でヨガをさせていただくと、みなさん本当によろこんでくださいます。
特にご老人のかたなんかは、仲間と身体を動かす時間を少しもつだけでも、どこか張り合いがでてくるようで、回を重ねるたびに表情がイキイキしてくる印象を受けますね。
ヨガにはつながるという意味がありますが、人と人とが、和気藹々と和やかな時間をともにする。これも立派なヨガだと思うのです。
そもそもヨガは、本来だれもができるもの。車椅子で生活をしている人だって、ご病気を患われているかたも、子どもも、ご高齢のかたも……すべての人の健康増進に役立てられるはずなんですね。
ヨガの健康増進効果が数々のメディアで語られるようなり、ヨガが多くの人に浸透するようになったとはいえ、障害者でもご高齢でも、病気を患っていても安心して参加できるクラスというのは皆無に等しいのが現状です。

本当の意味での多様性に根ざした“ヨガの場”を広めるために、貢献していきたいですね。
ヨガは、イスの上でもできるし、それこそベッドの上でだってできることがあります。“誰もができる”、とは、年齢・性別・体型・障害や病気の有無、さらには社会的背景にかかわらず、日常に取り入れられるということです。
このことを敢えて言葉にしなくてもいいくらい当然の認識として広がる日が来て欲しい。そんな想いもMEDCAREYOGAの活動をとおして、伝えていきたいですね。
おふたりの目指す、ヨガのカタチは、ヨガの可能性を模索するすべての人の、光になるはずです。ヨガを広めていきたいと考えられているインストラクターのかたはもちろん、ヨガジェネレーションのようにヨガを伝える媒体にとっても、示唆に富んだお話を伺うことができました。
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以前、陽子先生が執筆された特集記事も併せてご覧ください。人と人とのつながりが健康に与える影響について、またヨガをつうじてできるソーシャルキャピタルの高めた方について、とてもわかりやすく書いてくださっています

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