解剖学はインストラクターの「軸」になる。|内田かつのり先生インタビュー【後編】

解剖学はインストラクターの「軸」になる。内田かつのり先生インタビュー【後編】

前編ではヨガ界における「解剖学っぽさ」の危うさや、医療との線引きなどについてお話しいただきました。後編のテーマは、先生が考案した「ヨガ解剖学」です。一般的な解剖学とのちがいや、学ぶことで得られる可能性、今後の展望などについてうかがいました。

骨盤が「開く」「ゆがむ」「ねじれる」は全部ウソ!?

解剖学を学ぶきっかけとして入りやすいのが、『骨盤セラピー』や『アナトミック骨盤ヨガ®』といった講座ですよね。「骨盤」をテーマにしたプログラムが充実しているのには、理由があるのでしょうか?
ヨガジェネレーションのロゴ
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内田かつのりプロフィール写真
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普段から、骨盤に関する悩みをとにかくたくさん受けるんですよ。「骨盤のゆがみで悩んでいます」とか「ヨガの先生に坐骨が開いていると言われた」とか……。

それじゃあ、まず骨盤の解剖学的な知識をおさえてみようということで『骨盤セラピー』を企画して、さらにアーサナへの活かし方を『アナトミック骨盤ヨガ®』で提案しています。

ヨガに限らず、健康・美容関係で骨盤のブームが続いていますよね。
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内田かつのりプロフィール写真
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そのせいで間違った情報も氾濫していて、むしろそっちがスタンダードになってしまっています。骨盤が「開く、閉じる」といったWebの記事に10万「いいね!」がついていたりする。

最初に断っておきますが、骨盤が「開く、閉じる、ゆがむ、ねじれる」なんて解剖学的にはあり得ません! 女性のほうが男性より骨盤が開きやすいなどというのも根拠がありません。

少し前ですが、「1日、1年の間に骨盤が開いたり閉じたりするサイクルがある」という情報がWebで出回っていました。ヨガの先生でもそんなふうに教える人がいるようですが、エビデンス(証拠)はありません。何人もの骨盤を1時間おきにレントゲンで撮ってみなくては、証明できないことですからね。

ここまで骨盤がブームになるのは、お手軽な「魔法」の役割を担わせるのにうってつけだからでしょう。身体の不調や悩みは多くの人が抱えています。「ここさえ治せば全てOK!」なんて魔法は解剖学的にはないですが、商売的には「魔法」は儲かります。今はそれが骨盤というわけです。

「覚える解剖学」ではなく、「考える解剖学」を

ジェスチャーを交え語る内田かつのり先生
ジェスチャーを交え熱く語る内田かつのり先生
でも、左右の足の長さが違うとか、腰の高さがずれている方は居ますよね。こういう場合、解剖学的には骨盤はどうなっているのでしょうか?
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内田かつのりプロフィール写真
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僕から知識を詰め込むのではなく、自分で論理的にその答えを導き出せるようにするのが『骨盤セラピー』などの講座なんです。ここでは先に答えを言っちゃいますが、骨盤そのものは変形しないし動きません。骨盤が動いたら人間はそもそも立っていられませんし、ゆがんだりねじれたりしたらそれは骨融解(こつゆうかい)や脱臼(だっきゅう)。「不調」なんてレベルではなく、すぐに手術が必要ですよ(笑)。
 
僕は自分の講座に参加してくれた方には、「考える解剖学」を身に付けてもらいたい。そう思って内容を組み立てています。

「骨や筋肉の名前を知っている」=「解剖学を知っている」と思わないでほしい。名前を覚えるだけだと、忘れたらそれで終わりでしょう。でも、実際に人に触れて考えて納得した知識は、名前を忘れても取り戻すことができるはずです。

ヨガ解剖学はインストラクターの「軸」となる

先生が教えている「ヨガ解剖学」は、一般的な解剖学とどう違うのでしょうか?
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内田かつのりプロフィール写真
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一般的な解剖学は、基本的にひたすら「覚える」もの。国家試験も4択のマークシート方式なので、極端に言えば頭に単語を詰め込む感じです。だから試験に合格はしても、知識を自分で消化するところまで至っていないのが現状ですね。

僕の場合もそうで、いざ実際に鍼灸師として働き始めてようやく、知識不足や消化不足に気づいたんです。それで、仲間と一緒に実際のお客さんを想定していろいろなケースについて「実践できる」解剖学の知識を考え抜きました。

ヨガ解剖学は、そのヨガ版です。知識量は多くなくてもいいから、アーサナに直結できるような解剖学を学べるように考案しました。

具体的には、どんなふうにヨガに活かせるのでしょうか?
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内田かつのりプロフィール写真
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例えば、「屈曲(くっきょく)」という言葉でダウンドックを深める誘導ができますか? 屈曲の単語だけは知っているかもしれない。でもそれを実践で使えなければ、学ぶ意味がないですよね。僕のヨガ解剖学では、1つの方程式から応用問題をとけるようになってほしいんです。

詰め込みではなく「考えて」身に付けた解剖学の知識は、インストラクターとしての軸になるはず。自信にもなるでしょう。

それに仕事で身体を扱う以上、最低限の知識を身に付けておくのがマナーじゃないでしょうか。それが、来てくれるお客さんや生徒さんへの誠意だとも思うんですよ。

ヨガの需要はより増えるだろうからこそ、伝える側が正しい知識を!

ジェスチャーをつけ話す内田かつのり先生
間違った情報を鵜呑みにしてはいけない!
最後に、ヨガ界の方がこれから解剖学を学ぶ意義を教えてください。
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内田かつのりプロフィール写真
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厳しいことも言いましたけど、僕はヨガにはいい面がたくさんあると思っています。医療が扱いにくい領域をむしろ得意としているのがヨガです。予防医療や代替医療としての可能性は大いにある。

シニアに向けたヨガやキッズヨガも最近需要が増えてきていますが、解剖学を学べばすべてに応用が可能です。人間の身体の構造そのものは、年齢や性別でさほど変わらないわけですからね。

ヨガが今後より広まるだろうからこそ、僕は身体について正しい知識を伝えたい。「頑張りすぎない」「知識が全てじゃない」といったヨガのいい面は尊重します。でも、伝える側がそれに甘んじて半端な知識でいたら、本当の意味でのヨガの良さが広まらないと思うんですよ。だから、厳しい、キツいと言われても僕は構いません(笑)。

厳しい言葉は、ヨガの可能性を信じているからこそ。そんな内田先生のぶれない姿勢を支えているのもまたヨガなのかも……と感じました。まずは骨盤についての間違った「常識」が改められるよう、この記事が拡散されることを祈る筆者なのでした。

文・本間佳苗

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