メタボ対策にも!?アーユルヴェーダハーブの効果

メタボ対策にも!?アーユルヴェーダハーブの効果

健康の維持・向上、心の安定や美容など、さまざまな目的でヨガをしている方がいらっしゃるかと思いますが、ヨガは海外では医療の補助や代替ケアとしても注目されています。
文献検索サイトに「Yoga」と入力してみると、2025年9月の時点で9,600件を超える研究報告があり、科学的な視点からもヨガの効果が確認されつつあります。
また、ヨガとも関係があるインドの伝統医療「Ayurveda(アーユルヴェーダ)」を検索してみると約8,700件の報告があり、ヨガと同じように研究が進められていることがわかります。
今回は、2023年にイギリスから報告された、アーユルヴェーダで用いるハーブが、メタボリック症候群に及ぼす効果について検討した研究報告を紹介します。

1.研究の背景

メタボリック症候群
お腹の脂肪をつかむ女性

メタボリック症候群とそれに伴う肥満、糖尿病、心血管疾患は、世界的に深刻な健康問題となっています。2000年から2019年の間に、世界の糖尿病罹患率は年間で1.5%以上増加し、また他の代謝性疾患の有病率も増加しています。
メタボリック症候群では、血糖調節異常、インスリン抵抗性、血中脂質の上昇、炎症の増加、高血圧の症状などが見られるため、このような指標を測定することで、発症リスクや病状の進行をモニタリングすることが可能です。また、不健康な食生活と運動不足は、メタボリック症候群のリスクを高めることが分かっており、生活習慣の改善が治療の鍵となります。

過去の研究結果によると、ハーブやスパイスを食事に取り入れることは長期的な健康増進につながり、さらには心血管疾患や肥満リスクの低下と関連づけられる可能性が示されてきました。例えば、スパイスミックスを食事に取り入れたところ、食後に血管機能、血糖値、インスリン値、血中脂質に良い影響があったと報告されています。
一方で、ハーブやスパイスの健康効果に対する一般的な研究方法は、研究対象となる成分を抽出して高用量で摂取する方法が多く、実際に普段の料理で使う量でも同様の効果が得られるかどうかについては疑問がもたれる場合もあります。

そこで今回の研究では、料理で一般的に使う量を取り入れた場合のハーブやスパイスの健康効果を確認することを目的としました。

2. 研究の方法

ハーブ(ニンニク、唐辛子など)
ハーブ(ニンニク、唐辛子など)

今回の研究は、ハーブやスパイスがメタボリック症候群とそれに関連する指標(血糖値、脂質、インスリン、炎症マーカー)に効果を示すかどうかをポイントに、文献検索サイトで過去の研究報告を確認しました。

検索の対象としたハーブやスパイスの例は、以下のとおりです。抽出または濃縮されたエキスの摂取による研究は外し、料理などに一般的に用いられる量での摂取による研究報告で検証しました。

  • 黒コショウ
  • カルダモン
  • 唐辛子
  • シナモン
  • クローブ
  • コリアンダー
  • クミン
  • フェンネル
  • フェヌグリーク
  • ニンニク
  • ショウガ
  • ローズマリー
  • セージ
  • ターメリック

3. 研究結果

文献検索サイトを用いて2023年1月までに報告された論文を確認したところ、1,738件がヒットしました。その中から本研究の目的に合致する142件に絞り込み、効果を確認しました。

  • カルダモンを用いた研究からは、炎症マーカー値を抑え、血糖値やインスリンに対する効果を示したとの報告がありました。
  • 唐辛子では、食欲増進や熱産生に効果が認められましたが、血糖値、インスリン、脂質などに対しては効果が認められた研究とそうでない研究が同数でした。
  • シナモンを用いた研究は数が多く、41件の報告がありました。血糖値を下げる効果、インスリンへの有益性が認められました。
  • コリアンダーはBMIを下げ、血中脂質(総コレステロール、LDL、HDL)および血圧を改善したことが報告されました。
  • クミンは、体重、BMI、ウエスト周囲、脂肪を減少させたとの報告がありました。
  • ショウガは、体温調節機能と食欲増進への期待が大きく着目されていました。糖尿病患者に対しては血糖値、インスリン、脂質に良好な結果も報告されています。
  • フェヌグリークは健常者だけでなく、糖尿病患者や冠動脈疾患患者、高脂血症または高コレステロール血症の患者に対する効果の研究がされています。ほとんどの研究において、1日あたりの摂取量は10~15gです。特にインスリン、血糖値、脂質への高い効果が認められました。
  • ターメリックについても、健常者だけでなく糖尿病患者に対する効果も確認されています。BMI、血糖値、インスリン、コレステロールなどの脂質、炎症マーカーなど、様々な効果を示す報告があがっています。

総合的に確認した結果、メタボリック症候群とその関連疾患の予防や治療に有益な効果があると特に認められたハーブやスパイスは、カルダモン、シナモン、唐辛子、フェヌグリーク、ニンニク、ショウガ、ターメリックです。

各指標の結果は、以下のとおりでした。

炎症に効果的:カルダモン、ショウガ、ターメリック
脂質に効果的:ニンニク、ショウガ、ターメリック
血糖に効果的:シナモン、ショウガ、フェヌグリーク

この研究結果から、ハーブやスパイスが、メタボリック症候群の予防や治療に効果を示すことが分かりました。それぞれが持つ有効成分や特徴によって、最も効果を発揮するところが少しずつ異なるようです。
身体に良い効果がたくさんあるとはいえ、過剰な摂取は禁物です。適切な量での摂取を心がけ、バランスのよい食事を含めた日々の生活習慣の中に、少しずつアーユルヴェーダのエッセンスを取り入てみてはいかがでしょうか。味や香りとともに、ハーブやスパイスの組み合わせを楽しんでみてください。

参考文献

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