みなさん、こんにちは。丘紫真璃です。
今回は、現在放送中のNHK連続テレビ小説『あんぱん』を取り上げたいと思います。
日本国民ならきっと誰もが知っているアニメが、『アンパンマン』ではないでしょうか。私も小さい頃に『アンパンマン』を夢中で見て、バイキンマンを本気で怖がっていたものです。今の小さい子たちもみんな、『アンパンマン』が本当に好きですよね。
『あんぱん』は、世代を超えて愛される『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと、その妻である小松暢(こまつのぶ)がモデルとなっているドラマで、私も毎朝興味津々で見ています。そんな『あんぱん』もいよいよ後半にさしかかってきました。この辺りで、『あんぱん』とヨガのつながりについてみなさんと一緒に考えてみたいと思います。
やなせたかしを支えた暢

やなせたかしの妻である暢は、女学校時代には「韋駄天おのぶ」と呼ばれるくらい足が速い短距離ランナーだったそうです。ドラマの中でも、のぶは男の人にも負けないくらい足が速いという設定でしたね。
ドラマでは、小松暢をモデルにしたのぶと、やなせたかしをモデルにしたたかしは、幼馴染という設定になっていましたが、史実では違ったようです。二人が出会ったのは戦後。高知新聞社の同僚だったそうです。やなせたかしは、同じ部署で前の席にいた暢のことが、すぐに好きになってしまったそうですよ。
暢が代議士秘書の仕事をするために上京すると、やなせたかしも後を追うようにして上京し、二人は結婚します。その後、暢は漫画家を目指すやなせたかしを応援し、自分が働いて家計を支えていたそうです。カッコイイ女性だったのですね。
愛国のかがみ

朝ドラでは、のぶとたかしは幼馴染という設定です。のぶは、「ハチキンおのぶ」と呼ばれており、足が速く、おてんばで、正義感は人一倍。東京から転校してきたばかりのたかしが、いじめっ子の男の子たちからお弁当を横取りされそうになっていた時にも、のぶはいじめっ子たちに勇敢に立ち向かい、たかしのことを救っています。数人の男の子に立ち向かっていくなんて、のぶは本当に勇敢そのものですね!
成長したのぶは、小学校の教師になりたいと思い女子師範学校に進みます。時は1936年。日中戦争が激化していく時代ですから、のぶは女子師範学校で徹底した愛国教育を受けます。
最初は愛国教育についていけないのぶですが、石屋である祖父の弟子であり、妹の想い人である豪ちゃんが徴兵されたことをきっかけに、お国のために働く兵隊さんというものを強く意識するようになります。そして、豪ちゃんのような兵隊さんを助けるためにと、慰問袋を作る活動を行うようになるのです。その活動をきっかけに、のぶは「愛国のかがみ」と呼ばれるようになり、新聞にまで取り上げられます。
それ以降、のぶはどんどん愛国少女へとなっていきました。教師となってからも子どもたちに愛国の精神を教えます。それが正しいことだと固く信じていたからです。
のぶのように、お国のために働くことが正義であると叩き込まれ、一途にそれを信じ切っていた若者は、当時、きっとたくさんいたのでしょう。
正義はひっくり返る

太平洋戦争が始まると、日本の状況は刻々と悪化していきました。男たちは次々に戦地へと送られました。たかしも、たかしの弟である千尋も兵隊となりました。のぶの夫である次郎さんの船も、軍隊のために働くことになります。
のぶが教える子どもたちも勤労奉仕のために動員され、毎日、畑で働くようになりました。子どもたちは慣れない畑仕事でクタクタになってしまい、勉強もままなりません。
のぶの実家のパン屋さんは、軍隊のために乾パンをおさめていましたが、材料が手に入らないので作ることができなくなってしまい、お店は閉めざるを得なくなりました。
のぶは、どんどん悪化していく戦況に不安を覚え、子どもたちに愛国教育を続けて良いのかどうか、次第に自信がなくなっていきます。
やがて、高知大空襲でのぶも焼け出され、日本は終戦を迎えます。のぶは、子どもたちに間違ったことを教えてしまっていたことを激しく後悔し、自分はもう教壇に立つ資格がないと思います。教師を辞めた心境を、のぶは、肺を病んで海軍病院に入院していた次郎さんに、次のように告白しています。
うちは…子どもらぁに間違ぉたことを教えてきました。日本は必ず勝ちますと、男の子には立派な兵隊さんになってお国の為にがんばりなさいと……。あの子らぁの澄んだ目を見たら、何ちゃ言えんなってしもうて……その時、うちはもう、教壇に立つ資格はないと思うたがです。
NHK連続テレビ小説『あんぱん』13週61回
次郎さんは、苦しむのぶに優しく寄り添ってくれますが、心の支えであった次郎さんも満足な治療が受けられないままに亡くなってしまいます。絶望に陥り、生きていてもいいのだろうかとさえ思いつめるのぶに声をかけたのは、戦地から戻って来た幼馴染のたかしでした。
子どもたちに間違ったことを教えてしまった罪深さを後悔し、涙するのぶに、たかしは次のように言います。
正義なんか信じちゃいけないんだ。そんなもの、簡単にひっくり返るんだから。でも、もし、逆転しない正義があるとしたら…全ての人を喜ばせる正義、僕はそれを見つけたい。
NHK連続テレビ小説『あんぱん』13週63回
お国のために兵隊になり、戦地で闘うことは正義であると日本中が無理やり信じ込まされてきたのです。正義感が人一倍強かったのぶが、愛国主義に傾いてしまったのも無理はないことだったのかもしれません。ですが、日本中の誰もがそれが正義だと唱えたからといって、それが確かな正義だとは限らないということを、たかしは、身をもって実感していたのですね。
さらに、のぶは、次郎さんの日記にこんなメッセージが遺されていたことに気がつきます。
のぶへ 自分の目で見極め、自分の足で立ち全力で走れ。絶望に追いつかれない速さで。それが僕の最後の夢や。
NHK連続テレビ小説『あんぱん』13週64回
たかしや次郎さんの言葉に背中を押され、のぶは前に進む決心をします。新しい仕事に就くため、高知新聞の入社試験を受けることにしたのです。入社試験の面接で、かつて「愛国のかがみ」として新聞に載ったことがある愛国少女が、今、どのような考えでいるかを問われたのぶは、次のように答えます。
アメリカの民主主義が、そんなに素晴らしいものかどうか、私にはまだわかりません。私が信じていた正義は間違っていました。やき、今度こそ間違えんように、周りに流されず、自分の目で見極め、自分の頭で考え、ひっくり返らん確かなものを掴みたいがです。
NHK連続テレビ小説『あんぱん』13週65回
ひっくり返らない正義を探す

『ヨガ・スートラ』の第1章7節には、まさしく、のぶが面接で言ったことと同じようなことが書かれています。
正知のよりどころは、直接的知覚、推理、および聖典の証言である。
スワミ・サッチダーナンダ. 訳 伊藤久子. 『インテグラル・ヨーガ パタンジャリのヨガ・スートラ』第1章7節. めるくまーる. 2008. p.38
真に正しい知識と信じていいものは、自分の目で見て、自分で考えたこと、それから聖典の言葉だけだと書いてあるのです。例えば、先生が言った言葉だって、それをそのまま鵜呑みにしてはいけないのですね。先生が言った言葉は本当に正しいのだろうか? と、自分で考えることがとても大切なわけです。
周りの大人や、先生や、偉い知識人のような人が口をそろえて、国のために働くことは正義であると唱えたら、そうなんだと思ってしまいがちですよね。でも、それではいけないのです。国のために働くって何だろう?とか、国のために死んでいくことが本当に正義なんだろうか?と、立ち止まって自分で考えてみることがとても大事なのです。
愛国のかがみとして突っ走ってきたのぶは、終戦後、周りに流されてしまったことを激しく後悔しました。だからこそ、今度こそは、自分の目で見極め、自分の頭で考え、確かな知識をつかみたいと心から願いました。
そんなのぶの姿勢こそ、ヨギーがしなければならない姿勢なのではないでしょうか。いや、ヨギーだけではないですね。何が正しい情報なのかを見極めることが難しい情報化社会で生きる私たち一人一人に、とても必要な姿勢と言えるのかもしれません。
今後のストーリーでは、のぶとたかしは、ひっくり返らない確かな正義を探していくことになるのでしょう。それが『アンパンマン』につながっていくのだとは思いますが、それは引き続きドラマで楽しみたいと思います。
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