乳腺科医が語る”乳がんとヨガ” Vol.2 -Q&A-

前回の記事でご質問をいただいたので、今現在、乳がんとヨガについて科学的にわかっていることを今回はQ&Aの方式で書いていきたいと思います。

Q1:ヨガで乳がんを予防できるか?

A:ヨガをすることで乳がんを予防できるという科学的根拠はありません。この質問に答えられる研究が行われていないため、わからないというのが現状です。しかし、最近乳がんが日本で増えてきたのは欧米型の食生活が原因とも言われておりますし、肥満もリスクファクターになります。なのでヨガをしている人はどちらかというと、野菜中心の食生活で肥満の方は少ないと考えられるので、乳がんにかかるリスクは一般の方に比べて少ないかもしれません

Q2:ヨガで乳がんの再発を減らせるか?

A:この質問もQ1と同様に科学的根拠はなく分からないというのが答えです。よくヨガをすることで免疫力を高め再発を予防するという記事を見かけますが、ヨガが免疫力を上げるという科学的根拠は今のところ確立されていません。しかし報告例はあります。大切なポイントは、医学的には免疫力を上げても再発は予防できないという点です。これは多くの研究で証明されています。

最近はヨガをすることで、がんに対する術後の化学療法やホルモン治療の副作用をどのように軽減できるかという研究が行われております。副作用を軽減することで、治療へ前向きになり、治療を中止する患者さんが少なくなれば、再発率を減らすことができるかもしれません。しかしこれを科学的に立証するのは困難です。

Q3:ヨガで再発乳がんの生存期間を延長できるか?

A:この質問もQ2と同様に科学的根拠はなく分からないというのが答えです。再発患者さんが免疫力をあげても、生存期間を延長させることはできません。これも多くの研究で証明されています。Q2と同様にヨガをすることで乳がんの治療に対して前向きになり、治療を中止する患者さんが少なくなれば、生存期間が延長するかもしれません。

Q4:ヨガで乳がんの治療後に生活の質(QOL)を改善できるか?

A:ヨガをすることで術後の不眠、生活の質(QOL)が改善するという研究報告があります。しかし今まで行われた研究は患者数が少なく、確実に科学的根拠があるとは言えません。現在進行している臨床試験の結果が待たれます。しかし現在進行している研究は海外での研究であり、日本でも臨床試験をする必要があります。

Q5:ヨガでホットフラッシュ(更年期障害によるのぼせ、ほてり)を改善できるか?

A:ホットフラッシュは更年期障害だけでなく、乳がんの術後のホルモン療法の副作用としても起こります。時にはホットフラッシュが原因で治療を中止することもあります。ヨガでホットフラッシュが改善できるか、という探索的な研究があり、効果が認められています。しかしまだまだ研究段階であり、科学的に立証されたとはいえません。

治療によるストレスの緩和に、ヨガ

以上よりヨガが乳がんの腫瘍に直接作用する(予防、再発予防、生存期間の延長)という効果は現在、科学的根拠は認められておりません。乳がんによって引き起こされる、生活の質の低下、不眠、ストレスなどを和らげる効果が認められるとの研究がある、と言及するに留まります。

乳がんの治療の第一選択は西洋医療です。しかし西洋医学は乳がんを根治させるために、検査、手術、副作用の強い化学療法を用います。20年前に比べ使う薬の種類も量も増え、患者さんは強いストレスにさらされています。それをヨガによって緩和し、精神安定剤、睡眠薬の使用を減らせるかもしれません。治療に前向きになることで、化学療法やホルモン治療の中断を少なくし。もしかしたらそれによって生存期間の延長という結果が出る可能性もあるかもしれません。

私のブログ「乳腺科医のHouston留学日記」では乳がんとヨガに関する論文の解説などをしたページがありますので興味のある方はご覧ください。また疑問、質問等があればメールをしていただければお答えできる範囲内でお答えします。

文・新倉直樹

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