みなさん、こんにちは。丘紫真璃です。
今回は、『セルフビルド 家をつくる自由』を取り上げたいと思います。
みなさんは、どんな家に住んでいらっしゃいますか?大抵の方は、建売住宅を購入したとか、あるいは建築会社に依頼して家を建ててもらったとか。賃貸のマンションやアパートに住んでいるという方もたくさんいらっしゃるかと思いますが、いずれにせよ、お金がかかりますよね。ローンを組んで、人生の大半をかけて返していくという方も多いのではないかと思います。
ですが、セルフビルドの家に住んでいるという方は少ないのではないでしょうか。
セルフビルドとは、専門業者に依頼せず、自分で家を建てるという意味だそうです。自分で家を建てようなんて、現代の私たちにそんな発想はなかなかありませんよね。そんなことは、プロでないととてもムリだと思ってしまいます。
ところが、この本には、セルフビルドの家が次々に登場するのです。様々なセルフビルドの家を見ていくと、家ってもっと自由な発想で考えてもいいんだなぁということがわかってきます。
というわけで、今回は、『セルフビルド 家をつくる自由』とヨガの関係について考えていきたいと思います。
セルフビルドの家を取材して記録した本

この本を手掛けた著者は、矢津田義則さんと渡邉義孝さんのお二人で、編集は蔵前仁一さんが担当されています。
矢津田さんの本職は陶芸家だそうですが、ご自身もセルフビルドで工房を建て、古民家を再生した家に住んでいらっしゃるそうです。そうしたご自身のセルフビルド体験は、本の最後の方に綴られています。
渡邉さんは1級建築士の資格を持ち、民家再生なども手掛けられています。この本は、矢津田さんと渡邉さんのお二人が、各地のセルフビルドの家を取材して綴った記録がまとめられているようです。
セルフビルドという言葉も知らなかった私が読んでも面白く、こんな家まであるんだ!と大発見の連続でした。その面白さを少しでもお伝えできればと思いますので、早速、本のくわしい紹介をしていきたいと思います。
草の生い茂る家

この本では、セルフビルドの家が約30邸紹介されていますが、全て紹介することはできませんので、特に印象に残った2つの家を紹介したいと思います。
何より一番印象に残ったのは、草の生い茂る瀬川邸でした。山深い緑の中にひそかにあるその家の写真を見た時に、ワッ!と衝撃を受けました。屋根には草が生い茂っています。西側の壁は岩が積み上げられ、その他の壁はオオイタビカズラで覆われています。
山の中に人の家が建っているというよりは、山の中に人が住むことのできる場所が、ごくひっそりと、とても何気なく用意されているといった感じといったらいいでしょうか。
本には、こう書いてあります。
『沢のある斜面であること、人の視線のないこと、眺望は欲しない』
これが瀬川さんの土地探しの条件だ。あえて悪い場所を選んだのではない。「庭に暮らす」という発想を実現するために「それなりに広さの土地を確保する必要があった」こと、さらに、「大地のエネルギーを感じ、読み取れる場所、土地を汚すことを抑え、住まいをつくれる場所」が必要だったからだ。
それは、従来の建築という意味を解体し、閉じられた空間としての室内をつくるのではなく、大地に手を加えるのを最小限にし、奥深い自然に襞をよせ、そこにひそかに住む場所をつくることを意味する。その空間は、「地の勢いを活かした造園的ではない空間」へと開かれ、森へと続く。それを瀬川さんは「住み処」と呼んだ。蔵前仁一編. 矢津田義則+渡邉義孝著 『セルフビルト 家をつくる自由』. 有限会社旅行人.2008年. p,10
私が住んでいる町も、もともとは山だったと言います。ですが、山を切り拓いて道路を敷き、信号機や電柱などを建てて町を作り、家を幾つも建てたのです。ここにはかつて山だった面影はありません。かつて山だった頃に生えていた木が、遊歩道に植わっていますがそれくらいでしょうか。
けれども、瀬川邸は山を壊すのではなく、山の中にひっそりと息づいているのです。動物の巣が自然の中に埋もれているように、瀬川邸も山の緑の中に完全に埋もれているという感じです。この家を建てた瀬川さんは造園家だそうですが、自由に枝を伸ばす雑木が茂る苔むした瀬川さんの庭は、周囲の緑と完全に溶け合っていました。この家は、ぜひ画像で見ていただきたいです!
というわけで、本を読んでみることをおすすめします。
資材の9割が古材や廃材の家

他にもいろいろと面白い家はありましたが、資材の9割を古材や廃材で作ったという加藤邸も、とても面白くて印象に残りました。
生い茂る雑草の中に、古民家の梁や皮が付いたままの丸太、色々な瓦など。とにかく雑多な中古建築資材、工具が置かれている。これでもずいぶん減った方で、数ヶ月前までは、この何倍もの廃材で、あたり一面埋め尽くされていたそうだ。
蔵前仁一編. 矢津田義則+渡邉義孝著 『セルフビルト 家をつくる自由』. 有限会社旅行人.2008年. p,94
これは持ち主の加藤さんが解体のバイトなどでもらい集めた資材だそうですが、彼はこうした廃材や古材を用いて、家を建ててしまったのです。
初めて建てた第一号の家も、もちろん、廃材や古材で建てたのですが、衝撃的なのはそれだけではありません。家の壁が、斜面を削った崖そのものなのです! 本物の崖が、家の壁代わりに使われているのです。冬に薪ストーブを焚くと、その崖の壁から冬眠したカエルがピョンピョンと跳ねだして来るというのですから、驚きますよね。
その家の階段は、斜面を削って作った土の階段なのだそうです。室内が自然の中そのものといった感じで、これはこれで、衝撃ですね。加藤さんは、この家の土間にベッドを置いて暮らしていたそうです。
けれども結婚をきっかけに、第二の家を建て始めたそうです。さすがに奥さんは、冬にカエルが跳び出して来る家には住めなかったそうで、陶芸家の加藤さんは、第一の家は工房にすることにし、第二の家は奥さんと二人で1ヶ月かけて建てたといいます。第二の家も、もちろん全て廃材と古材で出来ており、ダンボールを使った壁などもあるそうですよ。
しかし、第二の家は実をいうと仮の住まいで、今、加藤さんたちは第三の家を制作中なのだそうです。
室内には古民家でもなかなか使わないような太い黒柱が何本も立ち、黒々と磨かれた古材の梁が何本も渡され、それが巧みなホゾ組みで、釘を使わず合わされている。床下の大引きも普通では考えられないほど太く、浴室の梁は水に強い丸太のクリ材だ。しかもほとんどが、砥の粉で仕上げられている。
蔵前仁一編. 矢津田義則+渡邉義孝著 『セルフビルト 家をつくる自由』. 有限会社旅行人.2008年. p,99
廃材で建てられたようにはとても見えなかったという第三の立派な家も、9割が廃材だということですから、驚きますよね。知り合いの大工さんに頼んで建てたそうですが、それでも費用はびっくりするほど抑えられているのではないでしょうか。
お金をかけないと家を建てることができないという常識は、見事にひっくり返ります。
自分の暮らし方を見つめ直す

建売住宅を買ったり、あるいは建築会社に頼んで作ってもらったり。家はそのようにお金をかけるものだというイメージが強くありますが、それだけではないということを、この本は教えてくれます。今回、紹介した2つのセルフビルドの家だけでなく、他にも常識をくつがえしてくれるような驚くべきセルフビルドの家がたくさん紹介されています。
例えば、難しいことをせず、山の雑木を切って作ったバンブーハウスの家。結婚したり、子どもが生まれたりして家族が増えるごとに、バンブーハウスを増やしていくのです。今は4棟のバンブーハウスが建っているといいます。家は1つの屋根の下に収まっている必要はなく、小屋を建て増ししても良いわけですよね。このように、家という常識を覆してくれるのが、この本でした。
ヨガでは、思い込みや常識といった縛りから自由になることが大切だと教えられますが、まさしく、家というものは型が決まっているものではなく、自由自在に創造してよいのだということを教えてくれる本だと言えるでしょう。
この本の最後に、著者と編集者で行った「セルフビルド座談会」が掲載されていて、その中で著者の渡邉さんはこのように述べられていました。
発想の自由さが大切なのでしょう。玄関なんてなくてもいっこうにかまわない。住むことの原型、生活の中で何が必要で何が余計なのかにも気づく。CMを見ていても、「今ある商品よりこっちがいいぞ」ばっかりで、消費意欲をあおるけれど、次々と買い替えても充たされないし。
蔵前仁一編. 矢津田義則+渡邉義孝著 『セルフビルト 家をつくる自由』. 有限会社旅行人.2008年. p,285
家には玄関があり、廊下があるものだと思いこんでいますが、本当に玄関などは必要なのでしょうか?そんな問いからはじまり、自分が楽しく満足して暮らしていくには、どんな空間が必要なのか?ということを、とことん見つめ直して、自分だけの空間を作っていくことがセルフビルドなのかもしれません。
セルフビルドは自分の暮らしを見つめ直すことでもあり、それは自分の生き方を見つめ直すことでもある、ということができるでしょう。自分自身を見つめるといっても良いかと思いますが、これはまさしく、ヨガと大きくつながっていると思います。ヨガとは自分自身を見つめ直すことであるのですから。そういった意味で、セルフビルトをするということは、ヨガをするということと同じだと言うことができるでしょう。
著者の一人である矢津田さんは、最後のセルフビルド座談会でこのように言われています。
セルフビルドをしなくても、そういう人々がいるというのを知っただけでも気持ちが晴れるし、解き放たれるんです。
蔵前仁一編. 矢津田義則+渡邉義孝著 『セルフビルト 家をつくる自由』. 有限会社旅行人.2008年. p,285
それは、自分の家を持ちたかったら働いて大金を用意しなければならないという縛りから自由になるという意味でもあると思うし、暮らしとは様々なスタイルがあるということ、家とは自由に創造できるものだということを教えてくれるという意味でもあるのだと、私は思いました。
自分が実際にセルフビルドをできるかというと、私には全く自信がありませんが、とても楽しく読みました。この面白さは文章だけではとても伝えきれないので、ぜひ、実際に本を手に取って、セルフビルドの家々の写真を見ていただきたいと思います!
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