“いま”を生きる達人 ― 犬から学ぶマインドフルネス ―

“いま”を生きる達人 ― 犬から学ぶマインドフルネス ―

気づけば、心はいつも“ここ”にいない。

まだ起きてもいない未来を心配し、もう終わったはずの過去を何度も思い返しては、「もしあの時こうしていれば」と頭の中で物語の続きをつくる。
身体は今にあっても、心だけがどこか遠くをさまよっている―。
そんな瞬間を、あなたも覚えているのではないでしょうか?

けれど、私たちのそばには、“いま”を生きることを全身で教えてくれる存在がいます。それは、あなたの隣にいる小さな師匠 ― 犬です。

“いま”を生きる天才

散歩を楽しむ犬
散歩を楽しむ犬

朝、ドアを開けて吸い込む外の空気。昨日のことも、明日の予定も考えません。
ただ、その瞬間の風の匂いを感じ、地面の感触を確かめ、鳥の声に耳を澄ませています。
犬にとって散歩は、毎日が初めての冒険。
昨日と同じ道でも、今日の風は違います。通りすぎる人の足音も、太陽の光も、全てが新鮮な“いま”の体験なのです。
私たちが「また同じ日々だ」と感じているその瞬間も、犬にとっては一秒たりとも同じ時間はないのです。
その“いま”に生きる姿勢こそが、マインドフルネスそのものなのです。

考えるより、感じる

散歩中に立ち止まる犬
散歩中に立ち止まる犬

人はつい、何かを「考える」ことで安心しようとします。けれど、考えすぎると、心は現実から離れていきます。頭の中に“まだ起きていない未来”や“もう終わった過去”を描き、本当の“いま”を感じ取る余白がなくなってしまうのです。
犬といると、そんな思考の渦がふっと止まる瞬間があります。散歩の途中で犬が立ち止まったとき、私たちはつい「早くして」と言いたくなります。けれど、犬は、ただそこに在る空気を感じているだけなのです。

その姿を見つめながら、自分も足を止めて深呼吸してみましょう。風が頬をなで、胸の奥に呼吸が入ってくるのを感じてみてください。
たったそれだけで、心が静かに“いま”へ戻っていくのです。

あなたの日常がマインドフルに

マインドフルネスの本質は、“この瞬間”に意識を向けることです。すると、そこに全てがあることに気づくのです。
マットの上でポーズをとるときだけでなく、犬と歩く一歩一歩の中にも、その実践があります。犬の歩幅に合わせてペースを緩めてみる。犬の呼吸に合わせて、自分の息を感じてみる。言葉ではなく、心で通じ合う。それはまるで、動く瞑想のよう……
犬は“ヨガの先生”のように、何も言わず、ただ、“いま”ここにいることの大切さを思い出させてくれます。

止まる、感じる…生きる

忙しいときほど、人は止まることを怖がります。立ち止まると、何かを失うような気がするかもしれません。でも、本当はその「止まる時間」にこそ、心が再び整う余白があるのです。

犬はよく、立ち止まり、耳を立て、世界の音に耳を澄ませます。その静けさの中で、私たちもまた、自分の呼吸と生命の鼓動を感じ取ることができます。それは、ヨガのシャヴァーサナにも似ています。
「何かをする」のではなく、「何もしない」勇気。その瞬間、心がゆるみ、私たちは“生きている”という確かな実感を取り戻すのです。

おわりに

未来を案じることも、過去を悔やむことも、人として自然なことです。でも、心が遠くへ行きすぎたときには、犬のように、ただ立ち止まってみてください。深く息を吸い、目の前の光に気づく。それだけで、世界は少し違って見えてくるはずです。

犬は、私たちのそばでいつもこう教えてくれています。
「焦らなくていい。“いま”を感じて、生きる。」
その静かなまなざしの中に、私たちが忘れていた“いのちのリズム”が息づいています。

さて、あなたは今、何にきづきましたか?

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