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ヨガの世界でよく語られる「あるがままに」。
とはいうものの、私たちは困難の最中ほど、「何とかしなきゃ」「今の状況では駄目だ」「何か手を打たないと」…… こんな心境に掻き立てられるのではないでしょうか?
そんなとき、名曲『Let It Be(レット・イット・ビー)』が語りかけてくれる物語は、現代を生きる私たちに深い示唆を与えてくれます。
ある著名な音楽家を救ったひと言

1960年代に世界を熱狂させたひとりの音楽家も、困難な状況に陥っていたのです。仲間との関係は軋み、言葉を尽くしても届かず、未来の見取り図はにじんでいき、心も体もボロボロに疲れ果てていく。外から見た華々しい成功とは裏腹に、心の深いところで孤独になる……
その夜、彼は夢を見ます。亡き母が静かに現れ、そっと一言だけ残していきました。
「Let it be(あるがままに)」
肩の力が、ほんの少し抜ける。どうにもならないものに抗う手を、いったんほどいてみる。そのわずかな緩みの中で、呼吸が戻ってくる。
翌朝、彼はピアノの前に座り、あのメロディを紡ぎ始めました。その音楽家の名は、ポール・マッカートニー。
『Let it Be』は、彼自身のリアルな心の葛藤と、そこに光を届けたこの言葉から生まれ、1970年にシングルとして世に送り出されました。ビートルズの作品とされていますが、実際にはポール・マッカートニー自身の手によるものだと語り継がれています。
当時、仲間や世界の荒波に揺れながら彼が掴み直したのは「諦め」ではありません。それは、いま起きていることを一度受け止めるという静かな姿勢でした。
そしてそれは、ヨガや仏教が語り継いできた“マインドフルネス”の核心と驚くほど重なるのです。
あなたが思う“あるがまま”は正しい?

「あるがままに」という言葉を聞くと、「何もしないこと」や「諦め」といったイメージを抱きがちです。
けれども実際には、その真逆。現実から逃げるのではなく、いま目の前にある出来事を否定せず、正直に見つめること。それが「あるがまま」です。
ヨガ哲学でも、私たちの苦しみの多くは「思考の暴走」から生まれると説かれます。「こうあるべき」「何とかしなければ」という執着が、かえって心を狭め、体をこわばらせてしまうのです。だからこそ一度呼吸に戻り、肩の力を抜き、ただ「いま起きていること」を受け止める。それが、結果的に次の行動を生み出す土台になるのです。
「あるがままに」とは、投げやりではなく、未来を切り開くための最初の静かな一歩。
『Let it Be』 が半世紀を超えて歌い継がれるのは、きっとこの普遍的な真理が込められているからでしょう。
「あるがまま」って、自由?それとも自己中?
「あるがままに生きる」と聞くと、「それってわがままじゃないの?」「人に迷惑をかけるんじゃないの?」そんな質問をされます。
けれど本当の「あるがまま」は、むしろ他人への思いやりやリスペクトにつながるのです。
なぜなら、自分を大切にできる人ほど、相手のことも自然と大切にできるからです。自分との関係性は、そのまま他人との関係性に映し出されるのです。
だから、「あるがままに生きる」人は、否定や比較をせずに相手と向き合えるのです。
あなたがホンネを出せない本当の理由

職場や目上の人を前にすると言いたいことが言えなくなる。立場や状況によって言葉を選ぶ。そんな経験はありませんか?
実は、これは「あるがまま」でいることの難しさを示しています。誰の前でも“同じあなた”であり続けるには、覚悟がいるのです。
人によって態度を変えてしまうのは、「あるがまま」とは言えないのです。「外にどう見られるか」に意識が向いているから、ホンネをしまい込んでしまうのです。
けれども、内側に意識を戻すと気づきます。恐れは他人がつくっているのではなく、あなたの心の中に生まれているのだ、と。それにほんの少しでも気づくことなのです。そして、それを手放していくことなのです。
私が絶望の中で見つけた最高のギフト
私自身、学生の頃に神戸の震災で家を失いました。余震の続く中、「明日が来るかわからない」と怯えながら過ごした日々。その経験があったからこそ、私は「どう生きるか」という問いに真正面から向き合わざるをえなかったのです。
私たちはいつも、コントラストの中から学び取ります。成功と失敗、男性と女性、絶望と希望……
当時まだ未成年だった私は、まさに絶望の真っただ中にいました。だからこそ、必死に希望の光を探したのです。
そして気づいたのは、その光は外のどこかにあるのではなく自分の奥深いところに眠っているということ。そこへ続く道は、絶望からの贈り物。私が見つけた、〈いかに生きるか〉の答え。
変わらない世界が変わり始める時
「あるがままで生きる」とは、状況を放置することでも、わがままに振る舞うことでもありません。自分を許し、いまをそのまま受け止める勇気を持つこと。
そうすると不思議なことに、変わらないと思っていた世界のほうが、少しずつ動き始めるのです。
あなたは、“あるがまま”に生きていますか?
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