【前編】古代インドのヴェーダの神々〜自然を神聖なものとして考える〜

ヨガを練習していると様々な神様の名前を聞くことがあります。

インドは多神教の国ですが、古代インドでは自然の様々な現象を神格化していました。それは、日本の浸透に似た感覚なのかもしれません。

特に、『ヴェーダ』と呼ばれる最も古い聖典の中では、自然そのものを神と捉える傾向が強いです。

今回は、自分が生きている世界を深く感じられる、ヴェーダの神様をご紹介します。

古代聖典ヴェーダに登場する神様たち

インドの神様というと、象の頭部をもつガネーシャ、愛の神様クリシュナ、修行の神様シヴァ神、破壊の女神カーリーを思い浮かべる人が多いと思いますが、インドで最も古い聖典『リグ・ヴェーダ』の中にそれらの神様は登場しません。

特に肌の色が青い神様は、アーリア人がインドに侵略する前の土着の神様だと考えられています。

インダス文明で栄えたような土着のインド人たちは、ヨーロッパ系のアーリア人よりも色が黒かったのですが、黒という色は良くない色なので青色で描かれるようになったと言われています。

アーリア人は今のカースト制度の元になる職業別身分制度を作り、自分たちはバラモン(司祭)という1番上の立場に就きました。

このバラモンが宗教的儀式の中で神々と交信し、受け取った言葉を受け継いできたのがヴェーダと呼ばれるものです。

ヴェーダは神々から直接受け取ったものなので、現在のインドでも最も重要視されています。

自然界を神格化したヴェーダの神々

ヴェーダの中で最も古いものは、リグ・ヴェーダと呼ばれます。神々への参加を集めた聖典であり、沢山の神様が登場します。

ヴェーダに登場する神様の中で最も有名なのが、インドラ(雷神)・ヴァルナ(司法神・水神)・アグニ(火神)です。

しかし、近年ではあまり重要視されなくなってしまいました。

また、ヨガやアーユルヴェーダで良く耳にするスーリヤ(太陽神)、ヴァーユ(風神)、ナディー(河神)、サラスワティ(河神)、ヤマ(死神)なども登場します。

デーヴァとアスラ

ヴェーダに登場する神々は、デーヴァとアスラの2種類に分けることができます。

デーヴァは、人々に現世利益を与えてくれるような神様で、代表的な神は雷神インドラです。

それに対してアスラは仏教の阿修羅の元となっており、世界の司法を司る存在です。

司法神ヴァルナが最も重要な神様です。

デーヴァとアスラは、リグ・ヴェーダの時代には同等に尊敬されていました。

しかし、次第に恐怖の対象であるアスラは神々(デーヴァ)と敵対する悪い神、悪魔のようなイメージに変わり、現在では全く人気がなくなってしまいました。

3界(天界・空界・地上界)を守る神々

またヴェーダでは、世界を3つに分けます。それは、天・空・地上です。

そして、それぞれの界を守る役割が神々に与えられます。

スーリヤ(太陽)は我々を天から守れ。ヴァータ(風)は中空から。アグニ(火)は我々を諸々の大地から。(リグ・ヴェーダ10.158.1)

天界を守る神は、スーリヤやアーディティヤといった太陽神です。

天と地の間にある中空を守るのはインドラ(雷神)、ヴァータ(風)。

人間が住む地上を守るのは、アグニ(火神)、サラスワティ(河神)があげられています

神様によって様々な役割があるのがヴェーダの世界観で、また、当時の人々にとって神々はとても身近な存在でした。

そのため、バラモン(司祭)が儀式を行うことで、お願いを聞いてもらうなど、交流が活発にもたれています。

自然の中の様々な神様とその役割

それでは、代表的なヴェーダの神様を見ていきましょう。

リグ・ヴェーダの中心的存在、雷神インドラ

リグ・ヴェーダで最も推されていた神様はインドラです。

インドラは雷の王、軍神であり、英雄神です。日本には帝釈天として伝わっています。

戦いの神であるインドラは水を閉じ込める魔神ブリトラを対峙し、地上に雨として水をもたらすと考えられています。そのため「水をもたらす神」と考えられています。

古代の人たちは、雷が雲を破壊することによって、恵みの雨が与えられると考えていたので、それを神格化したのですね。

インドラは最も好まれていた神様で、リグ・ヴェーダの1/4はインドラを称えた歌です。

現在でもインドでは雨が降ると人々はとても無邪気に喜びます。

乾燥という自然界の厳しさを知っているからこそ、恵みの雨への感謝が強かったのですね。

司法を司るヴァルナ神

リグ・ヴェーダの中では最も重要で、インドラ神と同等だと考えられていたのがヴァルナ神です。

また、太陽を司るミトラに対して、夜と月を司るヴァルナは、同等の存在であることが書かれています。

ヴェーダでは、多くの神様に対してとても親しみと愛情を込めた歌が多いのですが、ヴァルナに向けた讃歌は、その威厳を讃えた仰々しさがあります。人々は、法を定め時に罰を与えるヴァルナを恐れていました。

ヴァルナは天界を支配していた司法の神様です。そのため、神々でさえもヴァルナに従い、恐れていたとされます。

しかし、ヴァルナ神の人気はどんどん薄れていき、後世では水の神と考えられるようになりました。また、水に関連が深い蛇(ナーガ)との繋がりもあると考えられています。

インドでは、神様も人気がなくなると地位が下がってしまうのが、とても面白いですね。

人々と天界を繋ぐ火の神様アグニ

バラモンたちは、古代から拝火信仰を行っており、神々との交信には火を燃やす儀式が不可欠でした。

そのため、人々にとって最も身近な神様であり、リグ・ヴェーダではインドラの次に多くの讃歌が歌われています。

現在でも行われているインドの宗教儀式では、必ず火を燃やし、その中に様々なお供物を入れます。

神々のために備えられた捧げ物は、火が飲み込み、煙となって天界に登っていくことで神に届けられると考えられています。

アグニは闇を破壊し、清浄さをもたらします。

そんなアグニは世界の全てに行き渡っていると考えられています。

天界では太陽の燃える力、空界では雷、地上では炎となって燃えます。

また、人間の内側では消化の力をアグニと呼ぶように、様々な生命や自然現象の中に粟国が存在しています。

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後のシヴァ神に繋がる暴風雨神ルドラ

インドの激しいモンスーンを神格化したのが暴風雨ルドラです。

ルドラは豊穣をもたらす神であるのと同時に、水害によってあらゆるものを破壊する神でもあり、創造と破壊の両方を司っています。

このルドラ神が後のウパニシャッドの時代には現代の3大神の1人であるシヴァ神と同一視されるようになります。

リグ・ヴェーダの中には、ルドラを示す形容詞として「吉祥な」という意味のシヴァという言葉が使われています。

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ヴェーダで学ぶ:身の回りのものに感謝する心

古代ヴェーダの時代には、あらゆるものを神格化します。

自然界の働き、時間、生死、河、恋愛感情、喜びの感覚など、何1つとして当たり前のものではなく、私たちに与えられた恵みだと考えます。

インドでは、人間は自分だけの力では思うようにできないことが多いと理解しています。それは、自分の外の世界だけではなく、自分の内側の心や体の働きも同じです。

だから、すでに与えられたものに対しては感謝をして祈りを捧げます。

何も気にせずに生きていると「当たり前」だと思ってしまうこと、「自分の努力で勝ち取った」と思ったものも、自分だけの力では手に入らない有難いものであると再認識したいですね。

そんな豊かな心を学ぶのに、ヴェーダの世界観はしっかりとヨガにも受け継がれています。