ドゥルガー女神が変化した9人の女神へのお祭りナヴラートリー

インドは女神様が強い。シヴァ神の神妃に学ぶ芯の通った女性像

沢山の神様がいるインドですが、実は古代から女性への信仰もとても強い国です。

インドの女神様たちは美しいだけでなく、とても多彩で力強いです。

シヴァ神の妻パールヴァティ女神

今回は、ヨガの神様であるシヴァ神の妻パールヴァティ女神を中心に紹介します。

パールヴァティにはいくつもの側面があり、さまざまな姿で現れます。

時にはヨガの力として、時には戦いの女神として現れ、インドではとても強い信仰の対象となっています。

シヴァ神とパールヴァティ女神の馴れ初め

まずは、パールヴァティ女神とシヴァ神の出会いのストーリーから紹介します。

パールヴァティ女神は、シヴァ神の最初の妻であるサティーの生まれ変わりです。

サティーは聖者ダクシャの娘でしたが、父であるダクシャはシヴァ神のことを嫌っていました。

そのため、重要な祭り事にも、シヴァ神だけを呼びませんでした。

夫への不名誉な待遇に憤りを感じたサティーは、自ら儀式の炎の中に身を投げて抗議をしました。

慌ててシヴァ神が駆けつけたものも間に合わず、そのままサティーは息絶えてしまいました。

その後、シヴァ神は修行三昧となりました。

そしてさらにその後、美しいサティーはヒマラヤの娘パールヴァティとして生まれ変わります。

パールヴァティ女神は絶世の美女でした。

サティーの生まれ変わりであるパールヴァティ女神はシヴァ神の元に向かいましたが、シヴァ神は修行に没頭して全く相手にしてくれません。

そのため、パールヴァティ女神も、自ら修行を行うことにしました。

パールヴァティ女神が苦しい辛い修行を行ったのち、シヴァ神は彼女の前に老人の姿で現れました。

老人に化けたシヴァ神は、シヴァ神自身の悪口を言い連ねて女神を試しました。

パールヴァティ女神は老人の言葉に惑わされず、シヴァ神への熱い愛情を語りました。

そしてシヴァ神は自身の姿を表し、2人は夫婦になりました。

パールヴァティ女神は絶世の美女でありながら、ひたむきにシヴァ神のことを愛し貫いた、とても理想的な女性像です。

戦いの女神ドゥルガー

ドゥルガー女神はとても重要な女神です。パールヴァティ女神の変身した姿だと言われています。

ドゥルガー女神はライオンに乗り、シヴァ神のトリシューラ(三又の槍)を持った戦士です。

赤色の美しいサーリーを身に纏いながら、阿修羅と戦います。

そして、誰にも倒せなかった悪魔を退治しました。

美しさと強さを兼ね備えたドゥルガー女神は、特に東インドのベンガル地方で人気があります。

インドでは毎年2回ナヴラートリーという9日間のお祭りがあり、インド全土で断食が行われますが、そのナヴラートリーはドゥルガー女神が変化した9人の女神へのお祭りです。

コルカタなどのベンガル地方の都市では、伝統的にドゥルガー女神に酒や肉、魚を捧げます。ベジタリアンが多いインドですが、地域によって様々な伝統がありますね。

殺戮を好む女神カーリー

真っ黒な肌に、首には人の頭部で作った首輪をぶら下げ、血に塗れたとてもショッキングな姿をした女神カーリーも、パールヴァティ女神と同一視されています。

カーリー女神は基本裸で描かれ、腰巻は人の腕で作られています。

カーリー女神にはシヴァ神と同様に第3の目があり、手には鎌とトリシューラ(三又の槍)、悪魔の生首を持っています。

カーリーの名前はカーラからきています。カーラは時間・黒・死を意味する言葉です。

カーリー女神はシヴァ神の破壊的な側面そのものだと言われています。

カーリー女神は見事悪魔を退治しましたが、その後も狂乱の踊りを舞います。

それにより大地全てを破壊しそうになりました。

踊りくるったカーリーを止めるために、シヴァ神は自分が下敷きになってカーリー女神に踏まれます。そして、カーリー女神は正気を取り戻し破壊が止みました。

一般的にカーリー女神の絵画は、シヴァ神を踏んでいる場面で描かれることが多いです。

妻が夫を踏んでいる宗教美術に人気があるのは、とても面白いですね。

ヨガの女神シャクティ

ヨガにとても関わりが強いシャクティもパールヴァティ神と同一視されています。

パールヴァティ女神自身が長い修行を経てシヴァ神と結ばれたストーリーもあるように、シヴァ神と神妃はヨガと強い関わりがあります。

伝承によると、最も太初のヨガ修行者はシヴァ神であり、シヴァ神が初めてヨガを説いた弟子がシャクティ女神です。

そして、シャクティ女神が人間のリシ(聖者)たちにヨガを伝承し、現在までヨガが続いていると言われています。

シャクティ女神信仰はとても古く、インダス文明の遺跡からもシャクティのモチーフが発見されています。

古代からインドには女性を崇拝する風習があったのですね。

シャクティ女神は、人間の体の中ではクンダリニーとして、ムーラ・チャクラの位置に宿ります。

体内の潜在能力であるクンダリニーが目覚めると、背骨上に上に登っていきます。

そして、頭頂、サハスラーラ・チャクラにあるシヴァ神の座に到達する時、個人としての私たちの意識は、宇宙と繋がることができると考えられています。

ハタヨガにおける悟りの境地は、シヴァ神とシャクティ女神の融合であるというのは興味深いです。

パールヴァティ女神の姉ガンガー女神

ヒマラヤ神を父親にもつパールヴァティ女神には、ガンガーという姉がいます。インドの聖なる河ガンジス河を神格化した女神です。

このガンガー女神とシヴァ神の神話も残っています。

もともとガンガーは天界にいました。

ある時、賢者バギーラタが供養の儀式のためにガンジス川の水が必要となり、厳しい修行の後にブラフマー神に頼み、ガンジス川の水を地上に流してもらう願いをかなえてもらいました。

昔からインドの人たちは、願いがあると修行を行って神様にお願いしていたのですね。

ところが、ガンジス川の水の流れはとても激しく、そのまま地上に落ちてくると大地を破壊してしまいます。

そしてバギーラタはもう1年修行を積んだ後にシヴァ神に助けを求めました。

シヴァ神は自分の豊かな髪の毛でガンジス川の水を受け止め、そこから大地にガンジス河がながれるようにしました。

自分自身の様々な側面を磨いていく

誰にとっても、自分の中に様々な側面を宿しています。

そんな違う顔に気が付かせてくれるのが、パールヴァティ女神と、同一視されている女神たちです。

パールヴァティ女神は、どこまでも献身で愛情深く、優しい女神です。

また、パールヴァティ女神はガネーシャ神の母親でもあります。

美しく優しい女性の象徴であるパールヴァティ女神に対して、内側に秘めた力強さはドゥルガー女神に現れています。

女性でありながら戦士であり、凛とした強さがとても人気です。

そして、破壊的な側面、怖さを集約したのがカーリー女神です。

この黒い衝動的なカーリーは、悪魔を破壊する力にもなれば、世界を破壊する可能性も秘めています。力も使い方がとても難しいですね。

パールヴァティ女神とシヴァ神はとても仲睦まじい夫婦です。

時には、修行ばかりしているシヴァ神にパールヴァティ女神が悪戯をしたり、カーリー女神が暴走したりすることもありますが、シヴァ神はどのような顔のパールヴァティ女神も愛しています。

私たちも、自分の内側にある様々な性格や感情に翻弄されることがありますが、どんな自分が出てきても認めて、愛せるようになると、自分自身の魅力に気が付けるのではないかと思います。

そして、どんな自分も受け入れられる強さが芯となり、本当に強い人となれると思います。

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