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現代の社会は、どうしても頭でっかちになりがちで、地に足のついた生き方を見失いそうになりがちです。
人間として生きるために本当に必要なものは何なのか、自分の生命の尊さ、そういった部分を見直してもいいのかなと感じます。
ヨガでは、身体の底辺にあるムーラダーラ・チャクラが、生命の基盤となっています。
ムーラダーラ・チャクラの働きを深掘りしてみましょう。
ムーラダーラ・チャクラとは
ヨガの身体論では、人間には7つのチャクラが備わっていると考えられています。
7つのチャクラは背骨沿いにあり、1番下から一直線に並んでいます。
それぞれのチャクラには人間として生きるための役割が備わっており、その部分にエネルギーが流れることで身体的、精神的な活動を行っています。
しかし、体内に不純物が溜まってしまいエネルギーがスムーズに流れなくなると身体的にも精神的にも不調が現れます。
そのためヨガでは、体内の不純性を破壊し、活発にエネルギーを流すことで、心身の健康を取り戻すことができます。
ムーラダーラ・チャクラはスシュムナーと呼ばれる背骨沿いの最も大切な気道の入り口でもあり、このチャクラを整えることで他の6つのチャクラの活性化の基盤となります。
本来は、1番最初にアプローチするべきチャクラです。
ムーラダーラ・チャクラの位置
7つのチャクラの中でも、最も下方にあるのがムーラダーラ・チャクラです。
経典『シヴァ・サンヒター』によると、ムーラダーラの位置は肛門よりも指2本分上方で、生器より指2本分下です。（男性を基準としている）
ムーラダーラ・チャクラの属性
ムーラダーラ・チャクラのヤントラ（図形）は、４枚の花びらの中に四角系があり、さらにその中に下向きの三角形があります。
四角形は大地、地球を表す図形です。下向きの三角形は女性や月を表します。
生命を生み出す役割の象徴でもあります。
大地のエネルギーを持ったムーラダーラ・チャクラは、動物としての土台の部分になります。
人が生命活動を行うための軸の部分です。
ムーラダーラ・チャクラの性質
動物としての生命活動の源となるエネルギーを司ったムーラダーラ・チャクラは、とても野生的な性質を兼ね備えています。
例えば、生命欲、食欲、性欲、睡眠欲、金銭欲、といった、自分自身の生命そのものや、種の繁栄に必要な欲望を生み出します。
ムーラダーラ・チャクラが活性化している人は生命欲に満ちて、力強く、活力に満ちています。
ムーラダーラ・チャクラが乱れると
ムーラダーラ・チャクラのバランスが乱れてしまうと様々な不調が現れます。
食欲、性欲、金銭欲などの原始的な欲求が暴走してしまい、自分自身でもコントロールが効かずに苦しんでしまうことがあります。
また、自分自身の生命を守ることに固執しすぎた結果、とても自己中心的な人格になってしまうこともあります。
死への恐怖、生命欲が強まりすぎると、過度な恐怖心を抱いてしまうこともあります。
ムーラダーラ・チャクラが弱まりすぎると
このチャクラが暴走すると強欲になってしまうので、どうしても良いイメージを持ちにくいチャクラですが、土台となるムーラダーラ・チャクラが弱まってしまうと自分自身の存在価値を見失ってしまいがちです。
生きることへの興味が弱まり、食への関心も弱まると、無気力で生きる意味を見失ってしまいます。
生きている意義が分からなくなってしまうと、足元がぐらついてしまいます。
ヨガだけでなく、あらゆるスピリチュアルなアプローチでは上部の知性に関わるチャクラへのアプローチが多くなりがちです。しかし、人間として生まれて生きていくためには、土台の部分を蔑ろにしてはいけません。
健康上では、無気力感、パニック障害または不安感、消化器疾患、結腸、膀胱、腰の問題、下腹部や骨盤の原因不明の痛み、生殖問題、不眠症または過度の睡眠を導くことがあります。
足元がふわふわとしてしまっている人は、ムーラダーラ・チャクラの土台の部分を見直すと良いかもしれません。
ムーラダーラ・チャクラに宿るクンダリニー
ムーラダーラ・チャクラの位置には、クンダリニーと呼ばれる潜在能力が眠っています。
クンダリニーは「螺旋(らせん)」という意味があり、トグロを巻いて眠る蛇のような姿をしています。
ハタヨガでは、アーサナやプラーナーヤーマ、ムドラーの練習により眠るクンダリニーに刺激を与えて目を覚まさせます。
クンダリニーが目覚めると、蛇のように頭だけ上に上にと伸びていきます。
すると、背骨に沿って存在するスシュムナーという気道（ナディ）を詰まらせている不純物を破壊していきます。そして、スシュムナーの中に自由にエネルギーが流れ、スシュムナー沿いにある全てのチャクラが活性化していきます。
ムーラダーラ・チャクラの位置を整えて活性化させていくことは、クンダリニーの覚醒に繋がります。ヨガでは、一番下のチャクラから順番に情報を整えていくのが王道です。
ムーラダーラ・チャクラを整えるためには
チャクラを整えるためには、アーサナなどの身体的なアプローチと、精神的なアプローチがあります。
身体的にはグラウンディングを意識したアプローチが大切です。
ヨガのスタンディング系のポーズを行うときに、ムーラダーラ・チャクラが安定していることを意識して練習してみましょう。
具体的には、ヴィーラバトラ・アーサナ（戦士のポーズ）など、足腰や骨盤を力強く使うポーズが効果を感じやすいです。
また、バンダを使うことも重要です。ムーラダーラ・チャクラの位置を締め付けるテクニックをムーラ・バンダと呼びます。
この位置を締め付けることによって、あらゆるアーサナの安定感を感じることができます。
チャクラの安定を感じる言葉
ムーラダーラ・チャクラは不安感や恐怖心に関係してきます。
そのような感情を感じやすい方は、夜寝る前や、瞑想を行うときに下記のような言葉を心の中で呟くと良いでしょう。
- 安心感があります。
- 私は地に足がついています。
- 私は自分の平安を見つけました。
- 私自身を信頼し、恐れることはありません。
- 私は自己愛を持っており、自分の健康に気を配っています。
- 私はあらゆる可能性を受け入れます。
- 地球は私にとって安全な場所だと感じます。
- 私は自分の体を愛し信頼しています。
- 世界が私を守ってくれているのを感じます。
自分を安心させてあげられるような言葉を、深い意識に入りやすい睡眠の前後や、瞑想で唱えてあげると、ムーラダーラ・チャクラの乱れが弱まってきます。
地に足をつけて生きる
現代ではリモートで仕事や人とのコミュニケーションが取れるようになり、実際に体を動かさなくても収入を得られる人が増え、頭でっかちな社会だと言うこともできるかもしれません。
しかし、人間は本来、自然界の一部であり、綺麗な部分も汚い部分もある物質的な存在です。
人間として、良い部分も目を背けたい部分も、リアルに感じて生きることで、初めて本当の自分を愛することができます。
ムーラダーラ・チャクラは、人間の中でも最も泥臭い部分のチャクラなのかもしれません。
しかし、それが私たち生命の土台です。
人は年齢が上がるほど、上部のチャクラが優位となり、下方のチャクラが弱まります。
しかし、チャクラは全て大切です。
自分の全てを愛するためにも、いったん足元に意識を向けてみてはいかがでしょうか。
