学生期、家住期、林住期、遊行期の男性を表すフィギュア

人生の4住期(アーシュラマ)で自分の生き方を見直す

時代の変化によって世間の価値観も変わるので、「どのように生きるべきだろう」という自分の軸がぶれてしまう人も多いのではないかと思います。

自分の軸がないと、ついつい時代ごとの有名人の価値観に流されてしまいそうになりそうですよね。

家庭を犠牲にしても会社に貢献するべきだと考えた人が、定年して仕事を退職した後に生きがいが全くなくなってしまうことがあります。

逆に勉強だけが全てじゃないと教えられて育った若者が、社会に出たら想像以上に厳しくて絶望してしまうこともあるでしょう。

時代ごとで生き方の哲学にも流行があります。

しかし、それは誰にでも当てはまるものでないと理解していないと、自分自身を見失ってしまう原因になります。

インドでは人生を4つの期間に区切ります。

それに自分の人生を当てはめてみると、自分のやるべきことに迷いが減って来るかもしれません。

インド流の生き方4住期(アーシュラマ)とは


インドでは人生を4つの段階で区切ります。

  1. 学生期(ブラフマチャリヤ):学ぶことに専念
  2. 家住期(ガールハスティヤ):社会への感謝と奉仕の時間
  3. 林住期(ヴァーナプラスタ):自分と向き合う
  4. 遊行期(サンニヤーサ):死への準備期間

それぞれは25年ずつなので、昔のインドでは人生100年だと考えていたのですね。

この4つの順番はとても大切です。

例えば、家が貧しいからと最初の学生期を飛ばしてしまうと、人生を生き抜くための知恵を得ることができません。

もちろん実践のなかから学ぶことも大いにあります。貧しい国では大学まで通うことができない人が多いので、見習いとして働きながら技術を得る人も多いことでしょう。

学校で学ぶのか、実践の中で学ぶのかは人それぞれかもしれませんが、人生の基本的な知識を身に着ける期間はとても大切です。

この学生期に努力して知識を得ることで、その後の人生が変わります。だから、人生の最初の期間を学業で始めることはとても大切です。

何をすべきかは、自分が人生のどのポイントにいるかを考慮するのが大切です。

どのような情報を得ても、「今の自分に必要なものは何か?」と考える軸は失いたくないものです。

それでは、1つずつの住期について見ていきます。自分は今どこにいるのかも同時に考えてみましょう。

学生期(ブラフマチャリヤ)


伝統的にブラフマチャリヤは、若者がブラフマン(宇宙の真実)について学ぶ学業に専念するための25年間です。

この時期には、人生を生き抜くために必要なすべての知恵を学びます。

そのため、よそ見をせずに学業にひたむきに向き合うことを推奨されます。

ブラフマチャリヤは「禁欲」としても知られていますが、それは性欲などの大きな欲望に意識を奪われることで、大事な学びがおろそかになってしまうからです。

伝統的なヨガでは、学びを得た後に妻帯者になる人もいます。

しかし、重要な学業の時期には、学業に専念することを勧めています。

成功を収めるためには必ず学びが大切です。ヨガ人生でも、ヨガの先生として上手くいっていないのであれば、自分自身の学びが十分でない場合もあります。

知識は自分の人生を切り開くための最も大切な光です。

家住期(ガールハスティヤ)


最も忙しいのが家住期(ガールハスティヤ)です。

結婚をして家庭を持ち、仕事をして社会貢献もしなくてはいけません。

人生には、無理をしてでも頑張らなくてはいけないタイミングがあります。それは家住期に現れます。

たとえ社会の風潮で残業を減らした方が良いと言われていても、自ら仕事に没頭したい人もいます。

それが何十年も続くものだと体調を崩してしまうでしょうが、本当に頑張りたいタイミングでは自分を捧げて仕事を行うのも1一つの道です。

最近の研究だと、多くの職業で能力的なピークは30歳前に訪れます。

例えば、開発に関わっている人が斬新なアイディアで大成功を収められる可能性も、歳を取るにつれて可能性が低くなります。

自分の才能を発揮できる時に、そこに没頭することは充実して幸福を感じられます。

そのような自分の天職に出会った人は、社会の風潮を気にせずに出来る時に精一杯頑張れるといいですね。

林住期(ヴァーナプラスタ)


林住期(ヴァーナプラスタ)は、いわゆるご隠居生活です。

インドでは50歳で隠居するのでとても早く感じますね。(実際のインドでは、まだまだ現役の人が多いです)

林住期に入るタイミングは、自分の子供たちが育って、次の社会を担う役割のバトンを手放したときです。

インドでは実際に家の奥の部屋で1日のほとんどを過ごす高齢者も多いのですが、現代社会ではのん気に家の奥や林に移り住んで余生を楽しめる人は多くないかもしれません。

新しい時代の林住期のあり方として、プレイヤーから指導側に移行するという考え方もあります。

若い時には斬新なアイディアで新しい道を切り開く能力がありますが、歳を重ねた人には若い人にはない視野の深さがあります。

例えば学術で言うと、世界を驚かせるような新しい発見をするのは若い研究者が多いのですが、数多くの研究論文を読んで総説を書く能力は高齢者の方が高い傾向があります。

作曲家のバッハは、若い時からバロック音楽の奇才として地位を確立しましたが、後期にはバロック音楽は古いと思われ、名誉を失っていきます。

しかし、そこで嘆くことなく、自分の息子にバロック音楽の作曲の技法を伝えるための教本として「フーガの技法」を書きあげました。

現在、「フーガの技法」はバッハの代表作の1つとして多くの音楽ファンに愛されています。このように、自分の能力の変化を認めて、指導側に移行することで自分のやりがいを再発見できる可能性もあります。

若い時に大成すると、能力の衰えが耐えられなくなってしまう方もいますが、自分の役割の変化を受け入れられると新しい人生が切り開かれます。

遊行期(サンニヤーサ)


遊行期(サンニヤーサ)は家族と離れて出家して、自分の死に向き合う時期です。

信仰心が高まる人も多く、聖地巡礼の旅にでることも有意義です。

この時期は、自分のために時間を使えるとても幸せな時間です。地位や名誉、財産と言ったあらゆる執着も手放しやすく、日々の何気ない生活を贅沢に生きることができます。

本当の意味で、自分自身のために生きられるのは遊行期なのかもしれません。

多くの人は、芸術や音楽などの楽しみを見つけたり、今まで興味のなかった自分の先祖、宗教について考え直したりする方も多いです。

学生期の学びは、どうしても何かの役に立つためにという目的意識が働きますが、この時期には純粋に好きなことを味わうことができるので、新しい趣味を見つけることもいいですね。

自分らしい人生を見つけるために

どうしても社会の仕組み上、定年などの制度が決まっていると、自分の人生を好き勝手に組み立てることが難しいと感じてしまうかもしれません。

しかし、同じように仕事を続けていても、少しずつ自分の立ち位置を見直すことはできます。

また、家住期では、忙しすぎて悩み、もっとヨガを頑張りたいのに無理だと葛藤する方もいるでしょう。

仕事や育児に必死になれるのも人生の限られた期間です。

終わってみれば、必ず良い経験だったと感じられるはずです。

50歳を過ぎてもまだ忙しく仕事をしているという方でも、子育てがひと段落付いたことで、週末には自分の趣味や旅行を楽しめるかもしれません。

子供がいなくなって広くなった家の中では、自分の趣味の空間を持てるかもしれません。

ちょっとした変化に敏感になると、急にできることの幅が広がります。

今与えられた人生は、今しか味わうことができないものです。

自分が今行うことを感じながら、充実した生活を送りたいですね

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