ヨガマットを抱え怒りの感情を浮かべる女性

ヨガで怒りの感情を手放そう~自分と対峙し受け入れる~

私たちは毎日、生活している中で様々な感情を感じて生きていますが、その中でも特にコントロールが難しいのが怒りの感情です。

怒りの感情が大きくなると理性が無くなってしまい、悪い結果を導きやすくなってしまいます。

アンガーマネジメントという言葉ができるくらい、湧き出てしまう怒りに困っている人も多いのでしょう。

怒りの感情を理解して、どのように手放していくべきなのか、ヨガ的なアプローチで考えてみたいと思います。

バガヴァッド・ギーターの説く怒りの正体

ヨガウェアを身につけて怒りの感情を浮かべる女性
ヨガの教典では怒りについて説かれている文章は少ないのですが、『バガヴァッド・ギーター』(以下ギーターと呼ぶ)では怒りの生まれる原因について説明しています。

人が感覚の対象に対して思うことで彼に執着が生まれる。執着は欲望を生む。欲望から怒りが生まれる。怒りによって迷想し、迷想によって記憶が混乱する。知性を失い、知性の喪失によって彼は破滅する。(バガヴァッド・ギーター2章62-63節)

ギーターによると、怒りの原因となるものは欲望です。

自分が怒りを覚えてしまった時の状況について考えてみましょう。

そのほとんどは、“何かを期待して、期待通りにならないから”苛々してしまうのです。

例えばパートナーとの喧嘩を考えると「今週末は付き合って1年記念なのに、友達と飲みに行くなんてあり得ない!」と一方が怒るとします。

それは勝手に「恋人なら記念日を一緒に過ごすべき」と期待していたから怒りが生まれるのであって、相手は全く悪いことをしているという意識がありませんし、世間一般的には正しくも間違ってもいない個人の意見です。

そのような怒りが積み重なると、「誕生日にもご飯だけでプレゼントが無かった、クリスマスも残業でドタキャンされそうになった。この人は恋人の私のことを全く大切にいてくれない。私はこんなに尽くしているのに。」と怒りが大きくなり、相手に怒りの感情をぶつけてします。

その結果、「常に不機嫌な恋人とは一緒にいたくない!」と関係を解消されてしまうかもしれません。

どのような怒りも同じように考えることができます。

例えば政治家に対して怒りを覚えるのも、「このような政策を進めるべき」「私のお金を税として奪われたくない」という私の欲望が原因で生まれてきます。

上司に怒られた時、自分に非があると分かっていても「上司なら部下の失敗をカバーして欲しい」という期待を裏切られてイライラしてしまいます。

怒りとは、私が望む「こうあるべき」に世界がしたがってくれなかったときに生まれる感情です。

世界を私の思う通りに変えることはとても難しいことです。それならば、自分自身の欲望について見直した方が早いのかもしれません。

俯瞰して考えると怒りが消えることがある

多くの人は自分が考えている「当たり前」や「常識」に従って物事を判断し、それに反する人がいると怒りを覚えます。

例えば、食事の後に食器をすぐに片付けることは当たり前だと考えていた人がいると、洗い物を全くしない人に「だらしない、自分で片付けて!」と怒りや嫌悪感を抱くことでしょう。

しかし、世界を見ると自分で使った食器は自分で片付けない文化の国も沢山あります。

ヨガの生まれた国インドでは、中流以上の家庭ではメイドを雇い、メイドが食器を洗うのが当たり前です。

もしインドの家で勝手に食器を洗ってしまうと、「メイドの職業を奪った!」と逆に怒られます。

外国ならば仕方ないと思った人も、身近な自分の環境で当てはめると同じようなことが多々起こっていると気が付けるでしょう。

友達に対して「非常識だ」と苛々した時にも、それは自分の両親から学んだ常識から逸脱しているだけで、世間的には非常識ではないかもしれません。企業のや業界によって独特な常識や慣習を貫いていることも多く、自分が社会で学んだ常識が世間では非常識なことも多々あります。

日本という島国で生活していると、人々が自分と共通認識を共有していると思ってしまうことがありますが、実は間違っていることがあると気が付いてみましょう。

自分の考えと相反する意見を言う人がいても受け入れられるようになってきます。

相手がどうしてこう考えたのか、表に見える言動の裏側まで考えられるといいですね。

ヨガを行ったら一時的に怒りの感情が現れることがある

室内でヨガウェアを身につけて瞑想を行う女性
ヨガを始めた人が、ネガティブな感情を感じやすくなることがあります。

今までよりも怒りっぽくなってしまった、未来への恐怖を感じやすくなってコントロールできない感情に翻弄されてしまう時があるかもしれません。

特に、今まで自分自身の感情を一生懸命制御していた人ほど顕著かもしれません。

職場の上長から嫌味な小言を言われ続けても笑顔で耐え、プライベートで悲しいことがあっても職場では顔に出さないなど、自分の感情を押し殺すことが上手な人ほど、今まで隠していた自分の感情に気が付いたときにコントロールができないと焦ってしまうかもしれません。

ヨガでは自分自身の感覚に意識を向ける練習を行います。すると今までフタをして隠していた欲望や怒り、悲しみや不安が姿を現します。

しかし、これは必要なプロセスだと知りましょう。

部屋の掃除をする時にも、いらないものをクローゼットに投げ入れ鍵をして隠したり、視力が悪くてチリが見えない状態だったりすると根本的な掃除を行うことができません。

今まで隠していたクローゼットのなかのゴミを広げて対面し、度のあった眼鏡で汚れに気が付くところからが掃除です。

自分が気付いていなかった感情に気が付けた時がチャンスです。そこからさらに俯瞰を続け、解消する方法を探しましょう。

身の回りのラジャスを取り除くと怒りが弱まる

差し出されたコーヒーを断る人の手
では、どのように怒りの感情をコントロールするのか?

ヨガのアーサナ、プラーナーヤーマ、瞑想といった実践を積み重ねると自然と怒りは解消されてきます。

さらに手っ取り早い方法は、自分の身の回りのラジャス(激質)を減らしていくことです。

ラジャスは動きや激しさを司る性質です。

怒りの感情はラジャスの性質に属しているため、生活の中からラジャスを取り除いていくことで自然と怒りが弱まります。

分かりやすいところだと、食事のコントロールでラジャスを避けることができます。

ラジャス性の食品とは、コーヒーなどのカフェインを含んだ飲み物、唐辛子などの辛いもの、玉ねぎやニンニクなどの刺激物です。

試しにこれらの食材を2週間くらい避けてみて下さい。びっくりするくらい心が穏やかになっているかもしれません。

色でいうと赤のような強い色や蛍光色、音楽では激しいロックやパンクもラジャスです。

扉を閉める時に「ドン!」と音を立ててもラジャス性が上がります。

瞑想をしようとしても雑念や感情がうるさくてできないという人は、食事や音など、影響の意大きいところから見直してみるといいかもしれません。

自分の怒りに向き合って手放していく

ヨガでは、必ず現状に対峙するところから生まれ変わっていきます。今の自分のリアルが分かっていないと、人は変わることができません。

怒りの感情に対しても受け入れて、観察することが大切です。

今の自分は怒りっぽいかもしれない。しかしそれは、今まで周囲から認めてもらえなかった、自分を理解してもらえなかった寂しさから生まれているものかもしれません。

原因が分かると少しずつ解消の道も見えてきます。ヨガで自分自身を知ることが変わるための1歩です。

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