性質の異なる2つの食品グループを手に考える女性

ヨガをするなら心がけたい!サトヴィックな食事

ヨガをしていると身体への意識が高くなり、食事への意識も高くなる方が多いです。

伝統的なインドのヨガでも、アーサナの練習以前に食生活についての知識を学びます。

私たちの身体と心の状態は、食べたものの性質によって作られています。

どのような食事がヨガに適しているのかを『バガヴァッド・ギーター』の教えをもとにみてみましょう。

ヨガを志すならサトヴィックな食事

サットヴァ(純質)・ラジャス(激質)・タマス(鈍質)の3つの性質の食物
ヨガでは世界をサットヴァ(純質)・ラジャス(激質)・タマス(鈍質)の3つの性質に分けます。

この3つの中で、ヨガを行う人はサットヴァが優勢の状態を目指します。

サットヴァが優勢になっている純粋な状態は、心にも身体にも曇りがない状態、つまり光を通しやすくて真実を見極めることができる状態です。

また、光にあふれるサットヴァ性の状態は穏やかな幸福感に包まれています。

自身の内側から不純性を取り除いて純粋さを高める方法はいくつもあります。アーサナやプラーナーヤーマもその方法の1つです。

しかし、どれだけアーサナで体内の不純性を一生懸命燃やしても、不純性なエネルギーを直接食べ物から食べ続けていては意味がありません。

それでは、どのような食事がヨガに適しているのでしょうか?

ヨガの教典バガヴァッド・ギーター(以下ギーター)に書かれた食事についてみていきましょう。

ヨガに適したサトヴィックな食事

生命力、勇気、力、健康、幸福、喜びを増大させ、美味、油質で、持続性があり、心地よい食物は、純質的な人に好まれる。(バガヴァッド・ギーター17章8節)

ギーターには具体的な食材の名前は書かれていません。

しかし、ヨガを実践する人は生命力を高めてくれる健康的で美味しい食事を食べることを勧めています。

ハタヨガの教典では、もう少し具体的な食品名が記されています。

例えば『ハタヨガ・プラディーピカ』では小麦、米、大麦などの優れた穀物、ミルク、バター、砂糖、はちみつなどがヨガに適していると書かれています。

ハタヨガ教典に書かれているような食事は、実際にインドのヨガ・アシュラム(修行道場)で食べられている食事と通じています。しかし、これらの食事が誰にとっても必ず適しているとは言い切れません。

同じインドの中でも、北インドでは小麦粉を主食にする人が多いのに対して、南インドでは米食が中心です。南インドの人にとって小麦粉は消化がしにくいため、身体のなかにアーマ(毒素)をため込む原因となってしまうそうです。

インドに限らず、世界的にもグルテンフリーの食事を好む人が増えていますよね。

またインドでは、ギーと呼ばれる精製バターが良いとされ、食事だけでなく宗教的な儀式でも使われています。しかし、中には乳製品が全く身体に合わない人もいますよね。

もちろん近年はビーガンという食事のスタイルを選択する人も増えているため、伝統的なヨガで良しとされていた食事が必ずすべての人に良いとも限りません。

逆に、インドでは良くないと言われるものが日本では健康に良いと考えられる場合もあります。

例えば、納豆などの発酵食品は日本人にとってはとても健康的な食べ物です。

それぞれの住んでいる土地や、身体の状態、年齢や食べる時間によって適切な食べ物が違います。

ギーターに書かれた食事の条件は、特定の食材を特定しないことで、誰にでも適切な食事があることを教えてくれます。

「自分にとってのサトヴィックな食事が何か」を知るためには、食事を食べた後の身体と心の状態を観察することで初めて分かります。

しっかりと炭水化物を食べないと力不足になってしまう人もいれば、ランチに炭水化物を食べると眠たくなって午後の仕事に差し支える人もいます。

何を食べた時に自分の身体の調子が良いのか、経験の中から見つけてみましょう。

心を不安定にするラジャシック

過度に苦く、酸っぱく、塩辛く、口などを焼く、刺激性で、油気がなく、ひりひりし、苦痛と憂いと病気をもたらす食物は、激質的な者に好まれる。(バガヴァッド・ギーター17章9節)

ラジャシックとは、活発さが上がっている状態です。

アクティブになることは必ず間違っているわけではありません。

例えば、ヨガをもっと学びたいと思う願望も、ラジャシックな感情です。

しかし、ラジャスが上がり過ぎることによって、怒り、悲しみ、不安、欲などのネガティブな感情のコントロールができなくなってしまうことが問題です。また、身体の痛みなどもラジャスです。

ラジャシックな食べ物の代表は、唐辛子、ニンニク、玉ねぎなどです。そのため、インドのヨガの学校ではこれらの食材を避けます。

また、肉類、たばこ、コーヒーなどの苦いもの、塩辛い食べ物などもラジャスを上げます。

ラジャシックな食事を続けると、不安感や恐怖感も強まります。いつも切迫感にかられている人は、試しにコーヒーなどのカフェインを1週間ほど経ってみると精神的な不安が急に収まることもあります。

怠さを招くタマシックな食事


新鮮でなく、味を失い、悪臭があり、前日調理された、また食べ残しの、不浄の食べ物は、暗質的な者に好まれる。(バガヴァッド・ギーター17章10節)

怠慢さや無知を生むタマシックな食べ物は、新鮮でない食べ物です。

これは、消化に大量のエネルギーを使うので食事の後に眠くなったり怠慢さを生んだりします。

また、体内に未消化の毒素(アーマ)として残りやすく、あらゆる不調の原因となります。

加工食品はタマシックな食物として認識されます。特に添加物を多く含んでいる加工肉や缶詰、冷凍食品などは食品本来の栄養素がほとんど奪われてしまっています。

暴力が介入して生まれた食品(肉類)もタマシックな食物として考えられます。

また、インドでは調理しすぎた料理や、何度も火を通した料理も良くないとされます。火を通すたびに、食材の中の栄養素が壊れてしまいます。

日本ではカレーは2日目が美味しいと言いますが、インドではその日に食べるものはその日に調理するのが良いと考えられています。

何を食べるかだけでなく食べ方も注意しよう

食べ物の量と消化の度合いを表すイラスト
健康的な食材を選んでいても、不純なアーマ(未消化物)となってしまうことがあります。

例えば、食べる量です。米は小麦に比べて消化しやすいからと食べ過ぎてしまっては、やはりタマシックな状態になってしまいます。逆に、極度の断食も良くありません。

食べ過ぎる者にも、全く食べないものにも、睡眠をとりすぎる者にも、不眠の物にも、ヨガは不可能である。(バガヴァッド・ギーター6章16節)

インドでは、年に何度か断食をする習慣があります。

例えば、ナブラートリと呼ばれる9日間のお祭りでは、炭水化物を食べず、決められた軽い食事だけを食べます。

このように、日常の食生活で疲労している胃腸を定期的に休めることもとても有効です。

良い食品も食べ合わせで毒素の原因となる

食事の食べ合わせにも気を使います。

例えば、ヨーグルトと果物の食べ合わせは良くないとされています。牛乳もフレッシュな果物とは一緒に飲みませんが、ドライフルーツとは大丈夫です。

熱いものと冷たいものを一緒に摂取することも良くありません。食事中に氷の入った冷たい飲み物を飲むことは消化の炎を妨げてしまいます。

このような食べ合わせの知恵は、アーユルヴェーダとしても学びますが、おばあさんの知恵袋的に一般家庭で実践されています。

食事はダイレクトに身体の内側に入ってくるので、ヨガをするときには気を付けたいですね!

食事習慣が変わると性格も変わってくるのが不思議です。
ぜひ自分の生活の中で実験してみてください。