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自分自身のぶれない信念があって、アイデンティティを確立した人ってかっこいいですよね。
また多くの人は「何ものかになりたい」と望み、「自分には何もない」と悩みます。しかし、「私は○○だ」という信念は本当に必要なのでしょうか。
一生懸命自分の個性を探して、それを貫こうと思うことが時に苦しみの原因となってしまいます。今回はヨガとアイデンティティについて考えてみましょう。
アイデンティティとは

アイデンティティは日本語で自己同一性と呼ばれます。
「私はこのような独自性を持っている」「私は他ならぬ私なんだ」という確信のことを意味します。
社会の中でのアイデンティティを定義したエリク・エリクソン※1によると、人は社会の中で様々な自分を演じることができますが、そうした様々な自分を統合する変わらない自分自身がアイデンティティです。
アイデンティティの発達には幼少期から年齢ごとに段階がありますが、特に12~18歳の思春期に大きく動きます。この時期には、見える世界が広がり社会について理解する過程で、客観的に自身について考えるようになります。
この時期に上手く自分のアイデンティティを形成することができないと、自分への自信を失ったり、自己嫌悪に陥りやすくなったり、自分自身の主体性で判断する能力が欠如してしまったりします。
社会の中で生きていくためには、「自分らしさ」や「自分の生きがい」といったアイデンティティを形成することで、「どのように生きるのか」「社会や周りの人とどう関わるのか」といった判断をしやすくなります。
- ※1 エリク・エリクソン:アメリカの発達心理学者、精神分析家。
アイデンティティは無理に探さなくていい

通常アイデンティティは成長の過程で自然に築かれ、歳を重ねたり、職場などの環境が変わったりする中で自然と変化します。
しかし、うまくアイデンティティが形成されないと、自分を見失って常に不安を抱きやすくなります。すると、他人をを見て自分を羨ましいと思ったり、自己肯定感が低くなってしまいがちです。
自分が何者か分からない⇒自分の個性を物質的に作り出したい⇒所有物などで個性を主張するというように、自分が身に着けているもので自分のイメージを作りだそうとしたり、職業や所属する団体のイメージに頼ったり、資格を沢山取ったり、様々な方法で確固たる自分を作ろうとします。
それは全て、自分が分からなくて不安だから、自信の持てる自分を作ろうとする努力ですね。
足りないものを一生懸命手に入れようと頑張ることは素晴らしいことです。しかし、そこには落とし穴もあります。
例えば、会社のために長年頑張ってきた人が不況などで急に職を失うと、一気に自分自身を見失ってしまうことがあります。「私はこういう人間」だという自信を形成しているものが職業に依存していると、それを失った時のリスクが大きいです。
また、自身のルックスに依存して「お洒落な自分」に執着していると、沢山の洋服を常に購入し続けないと不安になってしまうかもしれませんし、好きなブランドのイメージに自分を合わせていたら、そのブランドの商品を買い続けるだけの財力を維持するのも大変です。
だれでも「自分は立派な人間だ」と思いたいです。だけど、「自分は何ものかでないといけない」という強迫観念があれば、それは手放した方が楽に生きられるようになります。
アイデンティティは探さなくてもあるもの
インドにいると、世界各国から集まった「自分探しの旅人」の多さに驚きます。アイデンティティがうまく形成できずに自分を見つけたい人は、日本だけでなく世界どこでも共通なのですね。
それに対して、インドの人は自分のことを本当に良く知っています。ちょっと時間をかけて彼らの話に耳を傾けてみると、「私は何ものか」を説明するのが本当に上手。
- 私は独立した強い女性でありたいと思っている
- 私はこの企業で働いて、こんなポジションで、社会と会社に対してこんな風に役に立っている
- 私はチャイに必ず生姜を入れるタイプ
- 私の家族は夜ご飯にはお米を食べる
- 私はお酒を友達といる時だけ飲む主義
- 私の人生の生きがいは良い友達と時間を過ごすこと 私は車を選ぶ時に、高級車よりも身軽で小回りの利く車が好き
と、社会的な立場から、日常の些細な習慣まで、自分について非常に堂々と自信をもって話します。そして、驚くくらい自分や家族に対してポジティブな人が多い。謙遜の文化の日本人には驚かされます。
宗教が多様で、地域ごとの文化も多様なインドだからこそ、自分自身を認識しやすい環境にあるのかもしれません。
そんなインド人の会話から気が付くことができるのは、私たちにとって何でもないことが、立派なアイデンティティだということです。特に外国に行くと気が付きやすいです。
- 毎日シャンプーをする
- 年上の人に強い口調で言い返さない
- 他人に迷惑をかけないように最大限の努力をする
- 自分の仕事が終わるまで、会社の定時が過ぎても仕事する
こんなもの個性じゃないよ!と思っている当たり前のことさえ、外の人から見たら強い個性かもしれません。シャンプーを毎日するだけで異様な潔癖だと思われるなんて、日本にいると考えられないですね。
自己主張を上手くできないということさえ、あなたの個性です。それを「弱いから良くないこと」と考えるのか、「謙虚で優しくて素敵」と思うのかは、相手の考え方次第です。全ての人に当てはまる正解は無いので、気にしすぎなくて大丈夫。
強すぎる自己意識(アハンカーラ)は苦悩の原因
自分を自分だと認識することをヨガ哲学ではアハンカーラと呼びます。
また、『ヨガ・スートラ』の中で自我意識(アスミター)は苦痛を生み出す煩悩(クレーシャ)であると説きます。
物質的な自分はプラクリティ(物質原理)によって生み出されたものです。そのプラクリティは3つの性質(トリグナ)の状態によってあらゆる個性を生み出します。
そのため物質的な観念で考えると、全ての人はすでに個性的です。しかし、プラクリティの作り出すものは全て無常。一時的な姿でしかありません。
今の現実は、この先の未来で必ず変化し、いつか消えます。同じように過去の現実も、変化します。過去の自分にも執着しないようにしましょう。
例えば甲子園に出たなど、若い時の功績を自分のアイデンティティとして縛りついていると、今が全く見えなくなってしまいますね。
また、自分のキャラに依存するのも危険。「太った芸人」「毒舌ご意見番」など、芸能人で自分のアイデンティティを商品として売り出してしまうと、食欲が年齢で落ちてきても無理して肥満を維持しようとしたり、子供ができて考え方が変わってきても毒舌を継続しなくてはいけなかったり、自分のアイデンティティが変えられないことが苦痛になってしまっています。
ヨガのインストラクターであっても同じような落とし穴があります。
ヨガの先生だから太れない、生活費の不安があってもお金に依存していると思われたくないから不安を表に出せない、ヨガっぽい健康的な食事をSNSにあげたいからそれに合わせたレストラン選び。
もちろん、楽しい、ワクワクするようなことならどんどん実行するべきです。今まで知らなかった食文化や考え方に触れて、喜びを感じられることは素晴らしです。
しかし、1度築いた自分のアイデンティティを手放したくないと必死でしがみつくようになったら逆効果ですね。人は誰でも必ず変わります。その時々の自分を楽しめばいいのであって、それが社会的に立派であるかは関係ありません。
「私はこうだ」という強い思いは常に苦悩の原因になります。他者と比較して優越を付けたり、競争をしたり。また、「自分のものにしたい」という所有欲もアハンカーラ(自我意識)から生まれます。
自分の個性に囚われない自由な生き方
「あなたはそのままで大丈夫」といわれても、なかなかピンとこないかもしれません。それは、普段外面的な自分、社会との比較で知った自分しか認識できていないからです。
だからヨガでは、身体や呼吸など、自分の内側に内側にと意識を向けます。
自身の内側に意識が向いて、条件がなくても深い呼吸が楽しめると、本質的な意味で自分に満足できるようになります。
そうすれば、アイデンティティはあっても無くても関係なくなります。
アイデンティティを手放すというのは、自分の個性をなくすという意味ではありません。人は誰でも個性的です。だけど、個性はあってもなくてもいい。ただ、この瞬間だけを楽しめれば、アイデンティティ迷子で苦しむことはありません。









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