ヨガ解剖学への誘い⑤~ヨガ解剖学とアサナテクニックの違いについて(後編)~

【ヨガ解剖学への誘い vol.5】ヨガ解剖学とアサナテクニックの違いについて(後編)

肘関節の動きにフォーカスしてみよう

肘の関節の一部は次のような動きを作っています。

  • パソコンのキーボードを打つような手の平を下にする動き(回内
  • ウエイターがトレイを持つような手の平が上になる動き(回外
回外と回内
回外と回内

これらの連続が手の平を返すような動きになります。橈骨という骨が尺骨という骨の周りを動く事で初めて成り立つ動きになるのです。

「手の平を返す」という動きは肘を動かしている!?

腕の骨模型
腕の骨模型

もしも、日本語にある、手の平を返すという言葉を、そのまま受け取るならば、手首から上の骨を押さえ固定していても、手のひらは返せるはずですが、

骨模型を上から手で押さえている
骨模型を上から手で押さえている

実際には、この場所(橈骨・尺骨)を固定してしまうと、手のひらは全く返せなくなるのです。

いつも言っているのですが、手の平を返すという日本語は、解剖学的には正しくはなく、正確には肘関節、橈尺関節の回内・回外によって成り立っているので、肘関節を返すという言葉こそが正確な表現になってきます。

肘関節の骨模型
肘関節の骨模型

ダウンドッグの手の使い方を考察する

話をダウンドッグの土台に戻してみましょう。ダウンドッグをしているときに、

手のひらの骨模型と手
手のひらの骨模型と手
  1. 人差し指の付け根
  2. 母指球
  3. 小指の付け根
  4. 小指球

という4点をしっかりと、マットにつけて…

というリードの中で、さらに、

とくに

  1. 人差し指の付け根
  2. 母指球

への意識をしっかりとして、マットから離れないようにしましょう~

という言葉の意味は、もうおわかりですね!!!

肘の回内という動きや意識が薄くなると、回外(トレーを持つような動き)になりがちです。人差し指の付け根、母指球はマットから離れ浮いてしまい、ミスアライメントを起してしまうのです。

結論です。

ダウンドッグにおいての手の平のアライメントについてですが、

  1. 人差し指の付け根
  2. 母指球

への意識をしっかりとして、マットから離れないようにしましょう~

という、リード、ナビゲヘーションは、アーサナテクニックの一つであり、勿論正しいのです。そして、何故、それをしなくてはならないの?その意味は?

肘関節の回内という動きをきちんと行なわないと、アーサナの土台は不安定なものになってしまいます。

という言葉こそがヨガ解剖学の話であり、裏付けとしての意味なのです。

クラスでは噛み砕いた分かりやすい表現にする

しかし、クラスで「トウコツ、シャッコツ、肘関節の回内…」云々というナビゲーションは通じないですよね~

そのために、端的な言葉としての「人差し指の付け根、母指球への意識」というものが一般的になっているのです。

また、この回内・回外は、肩関節の内旋・外旋というものと良く勘違いされているようです。実際に、ダウンドッグでも、この肩と肘の連動が曖昧になりやすく、混乱を招き、そこからミスアライメントを呼んでしまうのが現実です。

内田かつのり先生

執筆:内田かつのり

鍼灸師。”薬だけでは治らない病気も沢山ある”という現実を身を持って体験した事をきっかけに、アメリカの栄養学である分子矯正医学という栄養療法を深めながら、ファスティング、酵素栄養学、ゲルソン療法(コーヒーエネマ)、漢方や整体術などを実践。更に、本当の健康とは何かを探している中で、ヨガに出会い、運動療法、精神療法というような代替医療としてヨガの可能性に魅せられて以来、ヨガそのものが暮らしの中に在るようになる。アヌサラヨガのマスターイマージョン、アヌサラ・インテンシヴコースⅠ・Ⅱ修了、UTLでのAMC/AMIC修了。現在、都内ヨガスタジオにて、解剖学短期集中講座やティーチャートレーニングに携わり、インストラクター養成にも力を注いでいる。