サンタクロースともみの木と雪のオブジェ

『あのね、サンタの国ではね……』~サンタクロースを信じる楽しい心~

メリークリスマス! 丘紫真璃です。
今回はクリスマスということで、小さい頃に私が大好きだったクリスマスの絵本『あのね、サンタの国ではね……』を紹介したいと思います。
幼い頃に大好きだった絵本はいろいろありましたが、この絵本はクリスマスシーズンになると必ず取り出して眺めていた特にお気に入りの1冊でした。サンタクロースの12カ月の様子が出てきて、サンタさんたちはこんな風に1年を過ごしているんだ~ とよくわかって、すごく楽しかったのです。挿絵のサンタさんも、これ以上ないくらい暖かくてかわいく、優しい雰囲気で素敵なんですよ。
というわけで今回は、『あのね、サンタの国ではね……』とヨガの関係をみなさんと考えていきたいと思います。

名イラストレーターによるサンタクロースの絵本

窓辺の机に置かれたスケッチブックや色鉛筆や絵筆

この絵本の挿絵を担当したのは、数多くの絵本の挿絵を手掛ける絵本画家の黒井健。『ごんぎつね』や『手ぶくろを買いに』の挿絵を手掛けた人だといったら、覚えがある方も多いのではないでしょうか。

色鉛筆で描かれる優しいタッチの絵柄で、第9回サンリオ美術賞や第20回赤い鳥さし絵賞などを受賞されています。
また『あのね、サンタの国ではね……』も、1990年に日本図書館協会選定図書や、全国学校図書館協議会・選定図書に選ばれている名作です。

サンタクロースの1年間が描かれる

3人のサンタクロースのイラスト

サンタクロースって、北の国でどうやって暮らしているのかなと考えたことはありませんか? 私はよくいろんな想像をしていたものですが、この絵本はそんな幼い疑問に答えてくれる絵本なんです。
絵本は、こんな風にはじまります。

きたの はての うつくしい もりの なかに、おおぜいの サンタが
なかよく くらしています。
のっぽの サンタ、やせっぽちのサンタに、いろぐろサンタ……。
なかでも いちばん おおきくて、りっぱな おひげを はやした
サンタは、グランサンタとよばれ、みんなから とっても あいされて
います。

絵 黒井健. 原案 松本智年、一色恭子. 文 嘉納純子.『あのね、サンタの国ではね……』. 株式会社偕成社.1990年. p,1

絵本には、一番大きくて立派なおヒゲのグランサンタを中心に、たくさんのサンタクロースが登場します。そして、このたくさんのサンタクロースたちが、1年間をどうやって過ごしているのかが、くわしく描かれていくわけです。
例えば、1月はこんな具合です。

グランサンタの いえに、サンタたちが しんねんの ごあいさつに
きています。だんろでは ぱちぱち まきが もえていて、おおきな
テーブルの うえには、おいしそうな おりょうりが いっぱい。
まどの そとでは、しんしんと ゆきが ふっているのに、みんなが
にこにこ おしゃべりをしている へやの なかは、それは それは
あたたかいのです。

絵 黒井健. 原案 松本智年、一色恭子. 文 嘉納純子. 『あのね、サンタの国ではね……』. 株式会社偕成社.1990年. p,3

2月には子どもたちのお礼の手紙が届き、3月にはプレゼント作りが始まり、4月にはトナカイの入学式が行われる…… といった具合に、12月までサンタクロースたちがどんな風に暮らしているかが楽しく描かれていくわけです。
そのサンタクロースたちの挿絵がとにかく優しくて温かいので、みなさんにもぜひ見ていただきたいのですが、この辺りでそろそろ、この絵本とヨガに何の関係があるのか、考えてみたいと思います。

サンタクロースを信じる心

食卓で目を閉じて祈る少女

みなさんは、子どもの頃にサンタクロースを信じていましたか? 私はものすごく長い間信じていましたが、この絵本は間違いなく、私がサンタクロースを信じる助けになってくれていたと思います。サンタクロースたちが北の国でどんな風に暮らしているのか、とてもイキイキと描かれているので、本当に北の国にはサンタクロースたちが住んでいると信じやすかったのですよね。

たくさんのサンタクロースがいるという点も、納得しやすい理由の1つでした。1人で世界中の子どもたちのプレゼントを用意して、ひと晩で配り切るのは大変ですが、たくさんのサンタクロースで手分けして配るなら、ムリなくできそうだと子ども心に考えたりしたものです。
この絵本は間違いなく、サンタクロースを信じる楽しい心を育ててくれるものだと私は思っていますが、サンタクロースを信じる心こそとても大切なものではないでしょうか。

児童文学作家で、数々の児童文学の名訳者でもある松岡享子さんは、『サンタクロースの部屋』という本の中で、次のように語っています。

心の中に、ひとたびサンタクロースを住まわせた子は、心の中に、サンタクロースを収容する空間をつくりあげている。サンタクロースその人は、いつかその子の心の外に出ていってしまうだろう。だが、サンタクロースが占めていた心の空間は、その子の中に残る。この空間がある限り、人は成長に従って、サンタクロースに代わる新しい住人を、ここに迎え入れることができる。
この空間、この収容能力、つまり目に見えないものを信じるという心の働きが、人間の精神生活のあらゆる面で、どんなに重要かはいうまでもない。のちに、いちばん崇高なものを宿すかもしれぬ心の場所が、実は幼い日にサンタクロースを住まわせることによってつくられるのだ。

松岡享子. 『サンタクロースの部屋』. 株式会社こぐま社.1980年. pp,4-5

サンタクロースを信じる心…… つまり目に見えないものを信じる心は、子どもたちが誰でも持っているものだと思います。ヨガでは、子どものように純粋で無垢な心をサットヴァと呼びますが、サットヴァの心を持つ人は、目に見えないものを信じる力を持っているのではないでしょうか。そしてそれは子どもたちだけではなく、古代の人々も強く持っていた力ではないかと私は思います。
日本では八百万の神といって、森羅万象全てのものに神が宿っていると考えられていました。神を信じていた古代の人々は、目に見えないものを信じる力が、とても強かっただろうと思うのです。雷が鳴ったら神が怒ったと思い、雨乞いをして祈り、神の恵みに感謝して祈りを捧げて舞っていた人々の心は、間違いなく、サットヴァそのものだったでしょう。

人間は誰でも、サットヴァな心を持っているのです。子どもたちはみんな、サットヴァの心を持って生まれて来ます。そのサットヴァな心をいかに育てていくかということは、私たち大人の大事な役割ではないでしょうか。できるだけ長く、サンタクロースを信じる楽しい心を育てていくことは、生きていく上でとても大切なことだと思います。

幼い日にサンタクロースが住んでいた部屋には、(絵本や、小説や、マンガでもアニメでも、何でもいいのですが……)そういった物語の中で出会った友達を住まわせることができます。
そういった友達は、死んでしまったり、けんか別れをしてしまったり、引っ越しして疎遠になったりしません。私たちが死ぬその瞬間まで一緒です。それは辛い時になぐさめとなり、人生を楽しく豊かにしてくれるものではないでしょうか。

大人のみなさん、どうか、できるだけ長く子どもたちの心に、サンタクロースを住まわせてあげて下さい。そして、お子さんと『あのね、サンタの国ではね……』を読んでみて下さい。大人のみなさんも、子どもの時のサンタさんを待っていたワクワクする心を思い出して、明るい気持ちになると思います!
それでは、みなさん、良いクリスマスを! メリークリスマス!

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